西の大国の第二王子ジンジャー
コメントありがとうございます
なかなか返事を返せていませんが、きちんと読んでいます
凄く励ましになりました
此処は新しく独立国となったペンネ国の首都ウィステリア。
表通りから少し離れたところにある食事処『金糸雀の涙』の中に、少し年の離れた兄弟がカウンターで食事をとっていた。
「お嬢、なんでこんな店知ってるんです?」
「ばかか、お前は。何のためにわざわざ兄弟設定なのか考えて口を開け。…知り合いの店だ」
兄弟……設定の一組の男女。
1人はこの国の王女となった少女、もう1人はその王女の護衛となった元勇者兼御者のタケルだった。
只今密かに城を抜け出して男装している王女はタケルの頭を叩く。
「此処は国一番の情報入手先だ。何しに来ているかは分かっているだろう?」
「国が落ち着いたから、他所の国から国賓として各国の王子やら権力者たちが集まるパーティーの情報収集ですねー」
これが終わったらサヤカさんにプロポーズするんだ、とタケルは言っているが早くしないと。
サヤカにはお見合いの話がきているのを知らないのか。
まあいい。
「その通りだか、私の正体が余り広くにバレると今後が動きにくくなるだろう。マスターは知っているが、それ以外には知られていないんだ。私の事はクリスとでも呼べ」
「はいよー、クリス」
んじゃあ、情報を集めますか、とタケルが伸びをした途端、店のドアが大きく開けられた。
「ここですか、情報を取り扱っている店というのは」
黒髪に青い目の、見る者に知的印象を与える男が入ってきた。
「……なあ、タケル。彼に見覚えがある気がするのは気のせいか?」
「いんやクリス。あれは間違えない、西の大国、エストリカルの第二王子だ」
店を見回すエストリカルの王子はカウンターの中にいたこの店の店長に歩み寄る。
「この店の店 代表者でしょうか。ちょっと知りたい情報が有るのですが……ああ、お金ならきちんと持っていますので心配ありません」
机にどさっと恐らく金貨が入っているであろう袋を置いて、述べた。
「この国の姫の人柄と容姿、そして……この店から城への行き方を教えて下さい」
それを聞いていた周りの者はポカンとしている。
「……要するに、迷子ってか?」
「部下の者には一人で歩くなと言われています。正直、この店にたどり着けたのは奇跡だと思っています」
それを聞いた店長は此方を指差して西の大国の第二王子に言った。
「あの人らがよく知ってるよ、姫の事も、道も」
「そうですか」
足早にこちらに歩いて、口を開く。
「聞いての通りです。わたしに城までの道と、この国の姫の事を教えて下さい」
「その前に何でそんな事知りたいのか、聞いてもいい?」
二人の会話をサクランボのジュースを飲みながら聞いてみる。
「パーティーに呼ばれて来たのですけど、部下とはぐれてしまって……城が見える方向に歩んでいたはずなんですけどねぇ?不思議なことに全然着く気配がなかったのですよ」
不思議ですよねー、とほのぼのしている様子はクールな見た目に反していると思う。
タケルはそれを聞いて紙に簡単な地図を描いて渡した。
「それで、そのパーティーには各国の未婚の王子や権力者が集って、新しく出来たこの国との同盟のための結婚を王は望んでいるみたいで……あ、ちなみにわたしはエストリカルの第二王子ジンジャーと申します。気軽にジンと呼んで下さい」
「なるほどー。この国の姫との1対多数のお見合いって訳か。逆シンデレラ的な」
しんでれらとは、王子の結婚相手を探すパーティーを開いたら、虐められていた女性が変身して王子をげっと、虐めていた継母義姉の目玉を鳥に食べさせたと言う恐ろしい異世界の童話だな。
私はそんな事をする男性との結婚は嫌だぞ。
「うちの姫の容姿は一言で例えると、悪役顔貧乳だな」
……は?
「栗色の髪を緩くウェーブさせていて、目つきが悪い。でも、それが似合う美人で、唇は薄め、胸はまな板…いや、絶壁だな。サラシを巻かずに男装をしても全く違和感が無いほどには」
此方をチラチラ見ながらの説明には悪意しか感じられない。
いいだろう、覚えておこう。
帰城したらサヤカにタケルのエロ本の場所を教えてやろうか。
「えーと、まあ、容姿は生まれ持った部分も有りますし、胸部は…………成長には個人差が有ると思うので大丈夫だと思います。
やっぱり大切なのは、性格ですよね」
この場に私(本人)がいると知らないのに必死にフォローしているジンジャー王子に涙が溢れそうだ。
「性格?男前かなー。彼方が100パーセント悪い婚約破棄があって直ぐに自分の庇護下にあったものを連れてこの国の建国に勤めていたし、困った者を放って置けないお人好しだよ。色々なことをスポンジの様に吸収して学んでいる努力家だし、恩を仇で返すようなことは絶対しない。そこらへんにいる男よりもずっと男前だと、俺は思っている」
今凄く褒められた気がする。
少しだけサヤカに教える情報を規制してやろう。
「偶に、お嬢抱いてー!!って思うぐらいに男らしい。心身ともに」
やはり、包み隠すのは良くないな、うん。
サヤカと付き合う前に通っていた娼館と、指名していた女性の容姿を教えておこう。サヤカに似ている。
「はぁ…。慕われている方なんですね。というか、あなた王女の事を本当によく知っていますね」
微笑んだまま和やかなジンジャー王子にタケルは胸を張った。
「まぁな!俺はそのお嬢、いや王女に助けられた1人だからな」
「それは良縁でしたね。あ、もうそろそろ時間ですので失礼します。これは情報料ですので」
カウンターの上にジャラジャラと積まれる金貨20枚を見て、思った事が一つ。
この王子、詐欺のカモにされたら国が滅びる。
見た目クール、中身ぽわぽわです
前回、前々回と暗い話でしたが、この小説はコメディなんですよ〜
ちなみに名前の由来は王子を懐妊中の西の大国の王妃が生姜湯を飲みまくったから、とゆう小話が有ります