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「お父さんは、ドラゴンと一緒にいたって聞いた。私は半分嘘なんだろうと思っていた。だけどそんな父親に憧れて、私はドラゴンの生態に興味を持ったんだ」



「ドラゴンの谷で私は見たの。絶対になつかないドラゴンを、鞭や薬草で眠らせないでそばにおいていた女の人がいた」



「その人は、この村の出身だって…だからっ」



そこまで言うと、厳しい声でピシャリと言われた。



「まずは黙って出掛けて、皆に心配をかけた事をあやまりなさい」



っ!!



「サラ、貴方は傷を受けたのよ?」



そこを言われると、私の勢いは止まってしまう。



「ドラゴンは恐ろしいものよ?わかっているでしょう」



確かに殺されかけた。



「相手は、人間ではないの」



けれど、あの瞳の輝きが忘れられない。



母親は黙り混む私を見ながら、初めて、静かな声で、ゆっくりと声を落として私に語りかけた。



「サラも、もう大人の仲間入りをする年頃になったから、そろそろ話してもいいのかもしれないわね…」



「選び、選ばれる時がきたのかもしれないわ」



私は、母親の言葉の意味がわからなかった。



「今夜、村長の所に行きましょう。そこでなら、私もいろいろと話してあげられるから」



私はギュッと握りしめていたスカートの裾をゆるめる。



「はい。…心配かけて…ごめんなさい…」



泣きそうになる私をいたわるように声がかかる。



「今日は何もしなくていいから、夜までゆっくりと休みなさい」




私はコクンとうなずくと、自分の部屋に足を運んだ。



心配をかけてしまった罪悪感と、村長に会って何かが分かる期待に、ほんのわずかに胸を踊らせながら。




その夜の話は衝撃としか言い様がなかった。





この小さな村には何もないと思っていた。

けれど村には、密かに語り継がれてきた儀式があったのだ。



母親が一部始終を村長に話すと、村長はその村で秘密にしてきた儀式の内容を教えてくれた。



「サラ、お前はそのドラゴンに選ばれたのかもしれんのう…」



この村には、時々あることらしい。

ドラゴンに見いだされる人間が現れて、ドラゴンと共に生きていく人間がいることを。



血の継承によって…。



もちろん、ドラゴンに選ばれた人間が全てこの儀式をすることはない。

選ばれたことで初めて、人間にも選択肢が生まれるという。



私にも選ぶことができるのだと。



ドラゴンの血を受け入れて共に歩む人生があるということ、今まで通りの人生もあるということを。




「血の継承を行うのであれば、それは月が満ちた晩に行うしきたりじゃ。その血を受け入れるには、想像を越えた激痛が伴う。一月は苦しむだろうて」



「その覚悟を含めて、よくよく考えてから返事を聞こう」






村長の屋敷をあとにして、私は久しぶりに母親と同じベッドで眠った。




「ねぇ、サラ。私はあの人から聞いたの。ドラゴンは、受け入れた相手をとても大切にするけれど、だからこそ、とても嫉妬深い生き物なんですって」



母親のぬくもりを横で感じながら、私は真剣に話を聞いた。



「あの人との間に貴方が生まれてから、あの人は選ばれたの。血の継承は、別の呼ばれ方があってね。…それは、婚姻の儀式とも言うのよ」



「婚姻の儀式…?」



私は、驚きを隠せずに布団をバサリとめくってしまう。



「そう、人生の伴侶となるのよ」



「サラにはね、年頃になったら結婚をして子供を生んで、人として幸せになって欲しいとお母さんは思っているわ」



めくれた布団を元に戻しながら、ポンポンと軽く私を叩く。



「でも、サラの人生はサラのものだから…。そうそう、お母さんはあの人のドラゴンに、凄く嫌われていたのよ」



そして、少しだけ寂しそうに笑っていた。



「よくよく考えなさい」



私は、うんうん、とたくさんうなずきながら母親の身体に身を寄せてその日は眠りについたのだった。

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