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血の継承から1ヶ月ほど経った夜、シシルは近くの小屋からあの呻き声が聞こえなくなったことを確認した。



シシルでさえ、この期間中にあの洞窟の中で何が起きているのかはわからない。



他人が関わってはいけないのだ。



下手に覗いてしまった過去の儀式では、ドラゴンが継承者を食い殺したという事実も伝えられている。

ドラゴンの血は強い生命力を維持する効果があるために、薬として加工され、とても高く取り引きをされているという。

実際には薬にも毒にも活用されていた。



「サラはどうなったのかしら」



シシルは、ドラゴン避けに使われる薬草の汁を綿服に吹きかけたあと、ランプの導線に明かりをともし小屋をあとにする。

もちろんそれは、継承者の安否を確認するためだった。




シシルは洞窟の入り口に腰をおろすと、朝日が昇るのを待つ。

明るくなったころ、洞窟の中に入るために。



それは、小さい頃から知っている村の仲間の生死を確認する辛い役目でもあった。




























想像を絶する苦しみだった。



細胞が壊れては再生を繰り返し、痛みが波のように引いてはまたやってくる。

人間ではなくなる、何か新しい身体に作り変えられる本能的な恐怖と歓喜に、頭が割れそうになった。



時間の概念さえ意識の外に追いやられ、永久にこの時間にとらわれてしまったと絶望が広がってきたころから、微かに、誰かの声が聞こえ始めたのだ。


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