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なろうに初投稿となります。
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今、この領土に拡がるのはいくつかの勢力。
人間と魔物と人外が、時には争い、時には手を取り合って暮らす世界があった。
ある地域にはドラゴンの種族と心を交わし共に暮らす部族がいると知ったのは、とある伝記からだっただろうか。
辺りには春の草花が爽やかに揺れ、畑には作物が青々と背を伸ばす、どこにでもあるようなのどかな風景に淡いピンクの髪を揺らして歩く一人の少女がいた。
「ねぇ、母さん。またあの場所に行っていいかな?」
少女の母親は、眉間に皺を寄せながら何とも言えない表情で娘に答える。
「駄目とはいわないわ。ドラゴンの生態を理解することは大切なことよ。貴方の父親は、ドラゴンテイマー。立派なドラゴン使いだったんですもの…」
「じゃあ!!」
「ドラゴンは、決して人にはなつかないわ。貴方、ドラゴンのエサになるかも知れないのよ。…二日前、青年団に助けられたのは誰?」
少女は壁に架けてあった厚手の白スカーフを頭に被ると、母親の言葉を遮るように家を飛び出す。
「遠くで観察するだけ!ちゃんと気をつける。お父さんはドラゴン使いになったんだもの!何か秘密があるはずだわっ!!」
そうして、村の外れにあるドラゴン達の住みかに足を向けた。
私は、小さい頃からドラゴンっていう種族に興味があった。
住みかが近くて、よく目にしていたからかも知れない。
家畜や人が襲われることもあるし、畑や家が壊されることもあった。
だけど、小さい時に一度だけ低空飛行していたドラゴンと眼があったことがある。
一瞬だったけれど、その時、何かに心が奪われたんだ。
「おい!ドラゴン女っ!またあの場所に行くのかよっ!!」
「うるさい。私が何処に行ってもラスには関係ないでしょ」
最近、妙に絡んでくる幼なじみのラスが私に声をかけてきた。
私は足も止めずに、その場を通り過ぎる。
「おい!サラっ!!」
私が村で、ドラゴン女って言われてることなんて知っているんだ。
もう、皆にもラスにも迷惑はかけたくなかったし、やっぱり、一刻も早く見に行きたかった。
「…なんなんだよ。そんなんじゃ嫁の貰い手がなくなるからなっ!」
なんだか嫌な事を言われたけれど、私は気にもせずに歩き続ける。
そうして断崖絶壁の裾が開けた場所、ドラゴン谷と呼ばれている場所に足を踏み入れた。