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旋風と衝撃の狭間で  作者: みどー
悲しみの懐中時計編
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第4話「居場所」



 8月10日。月曜日。

俺は朝から街を探索していた。荒井恵についての手掛りがないことから、俺は地道に聞き込みをする事にしたのだ。

 そこで思いがけない情報がもたらされた。荒井恵に似ている人物を昨日起きた殺人事件現場近くで見かけたという人物がいたのだ。

 俺は急いで事件現場へと向かった。

 殺人事件が起きた通りにさしかかると、注意深く辺りを見渡しながら、その通りを歩く。

 昼近くになっているからだろうか、昨日、殺人事件あったばかりだというのに、人通りは多い。

 ふと道の際を見ると花が供えてあった。誰かが供えたのであろう。そこが丁度現場だった。

 立ち止まることなく、そのまま現場を通り過ぎようとした。しかし、もう一度振り返って現場を見ると、花を供えているところに、一人の女性が立っていた。

 その女性には見覚えがあった。身なりは多少違うが、それは間違いなく彼女だと判別できるものであった。間違いなく、荒井恵である。

 すぐに声を掛けようとしたが、思いとどまった。家出しているのだから、帰るように言っても素直に聞いてくれるとは限らない。無理やり連れて帰るのも気が引けた。

 それに声をかけた途端逃げられる恐れもある。それならば、彼女の居場所だけでもつきとめて、後の事は新一さんに相談した方がいいだろう。

 彼女は献花の前でしばらく立ったまま、じっとしていた。

 数分後、彼女は歩き始める。その後を気づかれないように追う。

 彼女はどこに寄るわけでもなく、真っ直ぐ歩く。そして、5階建てのあるマンションに着くと、彼女はそのままマンションに入って行った。


「ここは……海翔の……」


 そこは海翔が住んでいるマンションだった。嫌な予感を感じながら、そのまま彼女の後をつけた。

 海翔が住んでいるマンションは各階10室で、海翔の部屋は5階、最上階の一番端の部屋、501号である。

 彼女は階段を上がり続ける。2階、3階、4階、そして――。


「ついに5階、か……」


 彼女は5階まで上がった。そして、海翔の部屋に近づいていき、501号の前で足を止めた。そして、部屋の鍵を開け、入っていった。


「そ、そんな……」


 荒井恵が身を隠していたのは、海翔の部屋だった。その事実に、俺は海翔の部屋の前で呆然と立ち尽くす。

 いま目の前にある事実が信じられなかった。海翔は昔からふざけたりする奴だが、俺に対しては一度も嘘をついたことがない。ならば、一昨日別れてから、再び彼女と会うことがあったのだろうか。それとも、海翔が嘘をついたのか。

 自分の中に色々な疑惑が生まれてくる。

 けれど、答えは出ている。要は、俺自身が認めたくないだけのことなのだ。

 あの時、海翔は俺に嘘をついたのだ。不良達に絡まれていた荒井恵を助けた後の事を一昨日海翔に訊ねた時、海翔は「お前と別れた後、すぐに逃げられた」と答えた。それを聞いた時に気づくべきだった。あいつが嘘をついていることに。

 もし、彼女が海翔から逃げることができるくらいなら、不良からも逃げていた。それに、海翔に連れて行かれる前に、俺と別れる前に逃げ出そうとしたはずだ。

 そんな考えを巡らせ、俺はその場に立ち尽くしていた。

 そこに、誰かが近づいてくる足音が聞こえてきた。


「一輝……か?」


 名前を呼ばれ、我に返って振り返る。

 そこに立っていたのは海翔だった。


「海翔……お前……」

「よう、どうした? 俺になんか用か?」


 海翔はいつもの調子で話しかけてくる。


「どういうことだよ?」

「何がだ?」

「さっき……荒井恵がお前の部屋に入って行ったのを見た」

「え……そ、そうか……見られちまったか……はは、恥ずかしいところ見られちまったな」


 気恥ずかしそうに笑う海翔。それはきっと女性が自分の部屋を出入りしていることがばれたしまったことへの恥ずかしさでしかなかったのだろう。

 けれど、こっちはそんな風に思えるわけもなく、


「見られちまったか、じゃないだろ! お前、この間あのまま別れたって言ったじゃないか!」


 語気を強くして問いただした。


「おいおい……何そんなに怒ってんだよ? そりゃあ、確かにお前に嘘ついたのは悪かったと思ってるよ。けど、こっちだって事情ってもんがだな……」

「彼女が家出をしてるからだろ?」

「え……なんで……?」


 海翔は驚きを隠しきれていない。なんでその事をお前が知っているんだと言いたげな顔だ。


「……あの子の父親が娘を捜してくれって探偵事務所に依頼してきたんだ。それで、俺が探してた」


 海翔は一瞬驚いたように大きく目を見開いたが、すぐに平静な顔に戻った。


「そう……だったのか……」

「どうしてお前が彼女を匿うつもりになったのかは後で訊くとして、とりあえず中に入れてくれるか? 彼女と話がしたい」

「連れていくのか?」

「依頼だからな……それは仕方ない。でも、無理やりは嫌だ。だから話をさせて欲しい」

「……」


 俺と海翔は向き合ったまま、動かず睨み合う。


「……わかった。今、開ける」


 先に折れたのは海翔の方だった。

 海翔はドアの鍵を開け、俺を部屋に招き入れる。

 けれど、そこに彼女の姿はなかった。


「え……恵……?」

「おい、海翔? 彼女はどこだ? 確かにお前の部屋に入っていったんだぞ? いないなんて……」


 生じる混乱。荒井恵の姿はどこにもなかった。部屋の中を探し回っても、どこにもいないのだ。


「まさか、窓から?」


 そう思ったが、窓には鍵もかかっていて、さらにここが5階ということもあって、窓から出るのは不可能だった。


「どうなってんだ? 彼女は一体どこに行ったんだよ?」


 海翔に問いかけるわけでもなく、疑問を口にする。

 一方、海翔の方といえば、ただ呆然と突っ立っているだけだった。


「おい、海翔! 彼女の行きそうな場所、知らないか?」


 海翔を問いただす。しかし、海翔は首を横に振るばかりで。


「俺には、分からない……」

「くそ! 彼女が部屋から抜け出したとしても、まだそんなに遠くには行ってないはずだ。捜すぞ!」

「あ、ああ……わかった」


 急いで部屋を出て、彼女を捜しに街に繰り出した。

 その後、俺と海翔は二手に分かれて探すものも、一向に彼女を見つけることができなかった。


「ダメだ、やっぱり見つからない!」


 焦りが募る。このままでは、最悪の展開だ。

 彼女の事を調べていく中で、彼女は人と接点を持とうとしていない事は分かっていた。その例外が海翔なのだろう。それ故に、海翔の傍を離れてしまえば、彼女を追う糸が切れてしまう。

 俺にミスがあったとすれば、海翔とあの場で言い争ってしまったことか。いや、彼女を見つけた時点で保護していれば、こんな事にはならなかっただろう。


「くそ! たまたま見つけたとはいえ、これじゃあ、また振り出しじゃないか……!」

「恵……」

「海翔……何故、俺に嘘をついた? 何故、彼女を匿うようなまねをしたんだ!?」


 こんな質問をしている場合ではないと分かりつつ、それでもイライラと焦りが募り、ついきつい口調で問いただしてしまった。


「……お前、あの娘の事をどこまで知ってる?」

「どこまでって……彼女は荒井財団の会長の一人娘で、如月学園に通う高校3年生。人付き合いが苦手な女子高生……」


 自分が知りえる情報を並び立てる。それを聞いた海翔はフッと笑った。


「一人娘ね……お前の知ってる事なんてそんなもんかよ」

「な、なんだよ……違うのかよ?」

「ふぅ……お前、探偵の助手だろ? いままで、何を調べてたんだ? そもそも、あの会長はいままで結婚暦もない。彼女にはな、母親がいないんだよ。それでなんで、彼女が会長の一人娘になる?」

「え!? そ、そんな……それじゃあ、彼女は養子?」


 その質問に海翔は首を横に振る。


「戸籍上では確かに会長の娘になってる」

「ど、どういうことだ……? お前、どうやってそれを?」

「彼女から聞いたんだよ。自分でもそれなりに調べてはみた。どういった経緯でそうなったかは分からないけどな……。ただ、あの会長は彼女の事を自分の娘と思ってないのは確かだよ」

「どうして?」

「あの財団、実は今、経営が相当苦しいらしい。それで、大企業との提携を結ぼうとしてるらしいが……あの会長、あろうことか、そのために自分の娘を取引に使おうとしてるんだよ!」

「な……!? 自分の娘を売ろうとしてるって言うのか!?」

「ああ……まあ、良くある政略結婚ってやつだよ」

「それで、彼女はそれを?」

「断りきれなかった……と言うより、ほぼ強制だな、あれは。彼女の意見を聞こうともしなかったらしい」

「それで家出か……」

「ああ……。他に行く当てがないって言うから、それで俺の部屋に泊めてたんだ。こんなの間違ってるだろ? 本人の意思を無視して、人生を決めちまうなんてさ!」


 海翔は怒りのあまり声を大にして怒鳴り散らした。


「あ、ああ、そうだな。けど――」


 その先を言いかけた時だった。


「キャアァァァァァァァァ!」


 突然、近くで女性の叫び声が聞こえてきた。それは何かおぞましいものを見た時のような叫び声だった。


「な、なんだ!?」


 俺と海翔は話を中断し、叫び声が聞こえた方向に走った。そして、少し行ったところにそれはあった。


「な……!!」


 海翔は驚きのあまり言葉を失っていた。あたりまえだ。誰だってこんな光景を見ればそうなる。

 そこには、おびただしく血を流している男性が倒れていた。そして、その倒れた人の前に女性が座り込んで俯いていた。

 倒れた男性の傍まで近寄り、声を掛けるが反応がない。ちょうど心臓あたりから出血している。


「く……!」


 あまりの血の臭いに嘔吐感を感じながら、男性の首筋に指を当てる。


「……脈がない……おい、海翔! すぐに救急車を――ど、どうした?」


 海翔は男性の前に座り込んでいた女性の前に駆け寄っていた。しかし、声をかけるわけでもなく、険しい表情で、ただ上からじっと女性を眺めている。


「おい、どうした? その人に何かあったのか!?」


 気になって俺も女性のもとに駆け寄る。


「あ!」


 海翔が呆然としている理由がすぐに分かった。

 その女性は男性の血を被ったのか、肌や服が赤く染まっていた。けれど、俺が驚いたのはそんな事ではない。その女性が荒井恵だったことに驚いたのだ。


「恵……どうして……?」


 ポツリと海翔がそう呟いた。そして、我に返ったのか、彼女の側に行って彼女の名前を何度も呼びかけた。


「恵! 恵! おい! どうした!?」

「あ……あ……」


 海翔の呼びかけにも反応が薄い。どうやらショック状態にあるようだ。


「いや……いや……イヤアァァ……!」


 彼女は海翔の呼びかけに応えることなく、一際大きな叫び声をあげて、気を失った。


         ・

         ・

         ・


 荒井恵が倒れて間もなく、警察と救急車が来た。結局、男性は病院にすぐに搬送されたものも手遅れだった。心臓をナイフのようなもので一突きだったようだ。

 また、荒井恵は病院に搬送され、その後すぐに意識を取り戻した。

 彼女が意識を取り戻すと、すぐに警察の人間が病室に入ってきて事情聴取が始まった。もちろん、俺達も聴取された。俺達だけじゃない。あの場にいた全員が目撃者として事情聴取されたことだろう。

 目撃者の話では、昨日起きた事件と多くの類似点があるそうだ。それは、目撃者の多くが刺された瞬間を見ていないことと、突然、男性が血を流して倒れたということだ。もちろん、犯人を見た者なんて誰もいない。

 事情聴取が終わると、俺達は荒井恵共々解放された。彼女の方は特に外傷もなかったので、入院する必要もなかった。

 そして、俺は彼女に家出の事を切り出した。


「君のお父さんからの依頼なんだ。君を連れて帰って欲しいって」

「あ……わ、わた……し……」

「おい、一輝! お前、俺の話聞いてなかったのか!? 彼女は――」

「分かってるよ。彼女の家の事情はよく分かった。ねぇ、恵ちゃん? 君が何故家出をしたかは海翔から聞いて知ってる。でも、僕は探偵なんだ。依頼されて、それを引き受けたら、やり通さなきゃいけない。分かるよね?」


 俺の問いかけに彼女はコクンと頷く。けれど、海翔は不満満々だ。今にも掴みかかってきそうな感じで、俺を睨んでいる。


「一輝! 俺がなんでお前に家出の理由を話したと思ってるんだ!! お前に諦めてもらおうと思って……!」


 今にも殴りかかってきそうなほどの剣幕だ。けれど、俺もここで引くわけにはいかない。


「ふざけるな! 彼女の事をお前が決めるんじゃない! それじゃあ、あの会長とやってる事と同じだろ!! 彼女は事実を知って、それを自分で決める権利も義務もあるだろうが!」

「な……!」


 言葉を失う海翔。俺がこんな風に怒ることなんて滅多にないことだから、驚いたのだろう。

 けれど、それでも決して海翔は折れない。

 睨み合う俺と海翔。まさに一触即発な雰囲気になる。


「あ……あの……私のために喧嘩なんて、しないでください……!」


 睨み合う俺達の間に、絞り出すような声で荒井恵が割って入ってきた。


「あ、ああ。ごめんよ、恵ちゃん。でもね、これは君のためなんだ。確かに、僕は君のお父さんに依頼を受けてるけど、でも無理やり君を連れては行きたくないんだ。だから、君の意思で決めて欲しい。そして、何よりも人の言いなりになって欲しくないんだ。だから、君のお父さんの言いなりにもなって欲しくない。だから、嫌だと言うなら、縁談の事もちゃんと自分で断って欲しいんだ。わかるかい?」

「……はい」

「とりあえず、うちの事務所に行こう。それまでに考えてくれればいいし、なんだったら今日は事務所に泊まっていってもいい。な、海翔? お前も来るだろ?」

「ああ、わかったよ。お前の好きにしな。ったく、お前にはかなわねぇよ」


 仏頂面のままだが、海翔も納得いってくれたようだ。

 正直、ほっとした。あのまま海翔と喧嘩になったら、きっと大変なことになっていただろうから……。


「恵ちゃん、いいかな?」

「はい……わかりました」


 どうやら、彼女も納得いってくれたようだ。その証拠に、いまの返事は明確な意思の籠ったものだ。

 こうして、俺達は間島探偵事務所に向かった。


         ・

         ・

         ・


 事務所に着くと、新一さんが待っていた。


「所長、ただいま帰りました」

「やあ、おかえり。大変だったね。事情は香里さんから聞いているよ」

「かおりんが? そうですか……じゃあ、彼女のことも?」

「ああ、聞いているよ。君が荒井恵さんだね?」

「は、はい」

「それで所長、ちょっとお話が……」

「え? どうしたの?」


 俺は新一さんに依頼者である新井慎二には娘が見つかった事をまだ伏せておいて欲しいと、お願いした。


「そうか……」


 新一さんはため息をつく。


「ダメ、ですか? やっぱり……これって探偵としてあるまじき行為ですよね。依頼とは反する事してますから」


 新一さんは少し考え込み、もう一度ため息をついた後、口を開いた。


「わかったよ。君の頼みだ。仕方ないねぇ」

「本当ですか!? 本当に彼女、ここに泊めてもいいですね?」


 その寛大な判断に感激して、思い余って新一さんの肩に掴みかかってしまった。

 それに新一さんは困惑した表情を浮かべる。


「あ、ああ。本当だよ。ただし……」

「え? な、何か?」

「泊めるのは今日の一泊だけだよ? それまでに彼女自身にどうしたいかを決めさせること。いいね?」

「は、はい。分かりました」

「それと、だ」

「え……まだ何か?」

「君と海翔君も今日は泊まっていくこと。わかったかい?」

「俺はいいですけど……」


 ちらりと海翔を見る。すると、海翔はまだ仏頂面をしていた。


「俺も大丈夫だぜ」


 海翔はぶっきらぼうに答えながらも、新一さんの条件をのんだ。

 こうして、俺達は揃って今夜、事務所に泊まる事になってしまった。


 夕食が終わった後、荒井恵は一人でいた。俺は何をしているのかと覗いて見ると、彼女はソファーに座って、何かを耳に当てて、じっとしていた。


 俺は傍まで行って、そっと声を掛けた。


「何をしてるんだい?」

「え?」


 彼女は俺に気づくと、慌てて耳に当てていたものをしまった。


「あ、ごめん。驚かせちゃったかな?」

「い、いえ。大丈夫です」


 まだ俺のことが慣れていないのか、緊張した面持ちで彼女はこちらに向き直る。

 俺は彼女がしまった物が気になったので、訊いてみることにした。


「えっと……何をしてたの?」

「あ……これの音を聞いてたんです」


 彼女はそう言って、俺にそれ・・を見せてくれた。


「それは……確か初めて会った時に……」

「はい……私にとって、とっても大事な物なんです」


 それは彼女と初めて会った時にも見た懐中時計だった。

 彼女はそれを本当に大事そうに握り直す。


「よかったら、どうしてか訊いてもいいかな?」

「はい……いいですよ。一輝さんは私の生い立ち、知ってますよね?」

「うん……海翔から聞いてる」

「私、小さい頃からあの家にいて、本当の両親や家族の事、知らないんです。でも、これだけは、私があの家に引き取られる前から持っていた物なんです」

「そっか……それでそんなに大事そうに……」

「はい……これを持っていれば、いつか本当の私の家族と出会えるような気がして……それにこれを耳に当てていると、とっても落ち着くんです」


 彼女は今までとは打って変わってよく喋った。気心が知れた人間とは普通に話せるのだろう。

 その時、俺は思った。荒井恵は彼女・・とは違うと。

 その時には本当にそう思えたんだ。


 その夜、俺と海翔は事務所のソファーで寝ていた。荒井恵は事務所の上の階にある、新一さんの自室のベッドで寝ている。新一さんは、念のため彼女の傍についている。

 午前2時を回った頃、俺は目を覚ました。事務所のソファーで寝たこともなかったので、寝つきが悪いようだ。

 外の空気でも吸おうと、事務所から出ると、上の階の電灯が点いていることに気づいた。

 気になって、上の階へと階段を上り、新一さんの自室のドアの前まで行く。

 そして、ドアノブに手を掛けようとした時だった。部屋の中から声が聞こえてきた。

 声からすると、新一さんと荒井恵が話しているようだ。海翔は下の階のソファーでぐっすり寝ている。となると、話をしているのは新一さんと荒井恵の二人だけとなる。


「一体何を話しているんだ?」


 ドアの前で聞き耳を立てる。しかし、ドアが厚いせいか、あまり聞き取れない。


「もし、私に……あったら、ここに……」

「わか……でも……のかい?」

「……はい。きめ………ですから」

「わか…………よ」


 そこで、二人の話は終わったのか、部屋の中の電灯が消えた。

 話の内容は全然聞き取れなかった。

 俺は二人が何を話していたか気になったが、そこで眠気が襲ってきたため、それは明日にでも新一さんに訊くことにして、事務所のソファーで横になって寝ることにした。




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