BGM
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その後、トニーと私は結婚した。
そして今現在どうしているかと言うと、なんと二人揃って日本BGMの正社員をやっているのだ。
私達との戦いで政府系利権を握る社内勢力はほぼ全員失脚して一掃され、技術系の生え抜きグループが社内の実権を握るようになった。技術系生え抜きグループは『開発者の権利を守る』をスローガンにして組合をまとめて力を付けてきたので、トニー達の戦いには大層共感してくれた。
さらに、優れた人材は会社の為に必要ということで取締役会がまとまり、その熱意が株主総会をも纏め上げ、トニーは晴れて日本BGM本社で技術系スーパーバイザーとなったのだ。しかし、長年自営業とフリーターを足して二で割ったような生活をしてきたトニーがいきなり普通のサラリーマンになれる訳はなかった。
普段は自前のネットブックを片手に社内や街中をブラブラしたり、今でも時々リーマスの中に現れては初心者のタスククリアを助けたりしている。
今、私とトニーの共同口座にはBGMからの慰謝料と給料の前払い分が合計で8000万円ほど入っている。無理して働かなくても当分はこれで食べていけるので、私は会社に頼み込んでゲームプランニングとプログラミングをトニーから必死で学んでいる。
なぜかって? 聞かなくても分かるよね。全国の引きこもり達に先輩の立場からアドバイスしたいから。
生きがいとお金を稼ぐってこと、両方ともとても大事なことだって伝えていきたいから。
私がそうだったように。私がトニーのゲームから生きる力を学んだように。
そしてゲームの中でウオーミングアップが終わったら、ゆっくり慌てずにリアル社会の中に踏み出して行って欲しい。
だから、私が目指しているのはヴァーチャルだけどリアルなゲーム。
決してやさしくは無いよ。でも、だからこそ色々なことが学べるゲーム。
後で思い出したら心が温かくなったり、涙が溢れて来たり。
プレイするあなたの心をたくさん揺すれるといいな。
浅倉改め、椎野小娘