モブ令息の弟~婚約破棄を止めようとしただけだったのに~
拙作「モブ令息の誤算~婚約破棄を見に来ただけだったのに~」
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の姉妹(兄弟?)作品となります。
このお話だけでも大丈夫ですが、先にそちらをお読みいただけると、なお楽しめると思います!
僕の前世は、カエルだった。
雨の日に、道路をピョンピョン渡っていたら、軽トラにペチャッと潰されて死んでしまったのだ。
どうやらこれが、流行のトラック転生と見なされたらしい。
次に目覚めたとき、僕は異世界の辺境伯家の三男に生まれ変わっていた。
なんでカエルのくせにトラック転生とか知っているのかって?
なにを隠そう僕は、今までの転生すべてを記憶しているのさ。カエルの前は、異世界アニメ好きのオタクだったから、知識だけはバッチリだ。
まあ、そんな僕のことはさておいて、問題なのは目の前の出来事。
ここは王都の学園で、今は卒業パーティーの真っ最中。
「――――アンネローゼ! お前の愚行には、ほとほと愛想が尽きた。私の婚約者でありながら、権威を笠に着て、か弱いマルガを虐めるなど……お前には、未来の王子妃に相応しい品位がなにもない! ここに、私はお前との婚約破棄を宣言する!」
高らかに叫ぶのは、我が国の第二王子殿下だ。
彼の目の前で糾弾されているのは、婚約者の公爵令嬢アンネローゼ・ハエット嬢。
第二王子の腕には、あまり見たことのない女の子がピタッと張りついていた。マルガって呼ばれていたから、そういう名前なんだと思うけど。
そっか。これが流行の婚約破棄か。
まさか実物が見られるなんて思ってもいなかったな。
さすが異世界転生だ。僕は、ジ~ンと感動する。
「そんな! 私は虐めなんてしておりません! なにかの間違いです」
アンネローゼ嬢は、必死の表情で叫んだ。
う~ん? なんだか、本気っぽいな。
これって冤罪なんじゃない?
僕はちょっと考えこむ。
前々世で見たアニメでは、罪を着せられた悪役令嬢が、復讐を誓い大逆転! 自分を婚約破棄した王子にざまぁするのが、お決まりだった。
それはそれで面白いんだけど、問題はそのざまぁが、国そのものに向くパターンも多かったこと。馬鹿王子の巻き添えで僕の住む国を滅ぼされたんじゃ、困るよね?
……ああ、いや。僕はそれほど困らないけど、父さんや兄さんあたりは大変になりそうだ。特に小兄さんは泣いちゃうかもしれない。
仕方ないなぁ。
面倒だけど、この場での婚約破棄は止めてもらおうか。
「申し訳ありません。発言してもよろしいでしょうか?」
スッと手を上げて、僕は前に出た。
当然王子は、困惑顔だ。
「誰だ、お前?」
おっと。
僕と王子は、同じクラスだったんだけどな。
そこそこ関わりもあったんだけど……そっか、覚えていないのか。
そういえば王子って、自分に都合の悪いことはすぐに忘れるタイプだった。
あと、僕は影が薄いからね。人の印象に残らないことには、自信があるよ。
「名乗るほどの者ではありません。卒業生Mとでも思っていただければ」
「卒業生エム? ……なんだそれ?」
第二王子は首を傾げる。
モブのMなんだけど、わからなくても仕方ないかな。
「まあまあ、ちょっと疑問に思っただけなんです。……ハエット公爵令嬢は、いったいどんな虐めをされたんでしょう? 僕ら、そんなお話聞いたことがないんですが?」
僕の言葉を聞いたこの場にいる卒業生たちは、小さく頷きあった。
「たしかに」
「虐めなんて初耳だよな」
「あなた、ご存知でした?」
「知らないわ」
ざわざわざわと声が広がっていく。
王子は少し焦ったようだった。
「そ……それは。……おいっ、説明しろ!」
咄嗟に答えられなかったのだろう。後ろにいた眼鏡の青年に話を振る。
「え?」
王子に促された彼は、焦った様子で眼鏡をかけ直した。
彼は、一年のとき同じクラスだった、宰相の次男だ。
「――――あ、そのっ……マルガちゃ……マルガ嬢は、……ムシ……そうっ! ハエット公爵令嬢から無視されていたのです。声をかけても返してもらえず、お茶会にも呼ばれなかった――――そう聞いています!」
今、さらっと「ちゃん」呼びしそうにならなかった?
すいぶん親しいみたいだけど、その子の言い分だけ聞いて、決めつけたりしていないよね?
さすがにそこまでずさんな婚約破棄だとは、思いたくないんだけど。
宰相の次男の言い分に、王子にくっついていたマルガ嬢は、うんうんと頷く。
いろいろ思うところはあるけれど……まあ、でも、たしかに無視は立派な虐めだよね。
本当にそんなことをされたのなら、傷ついても仕方ない。
でも、それって、この世界じゃ当然のことじゃない?
アンネローゼ嬢は公爵令嬢だから、マルガ嬢よりたぶん身分が上だ。貴族は、身分の低い者から高い者へは声をかけられないのが常識だもの。それに反したのなら無視されて当たり前だし、お茶会だって呼んでもらえるはずがない。
……とはいえ、そんなこと言っても、王子に聞く耳はありそうにないけれど。
「えぇ? それは虐めじゃないですよ!」
だから僕はそう言った。
「は? なにを根拠に――――」
「だって、僕も同じことを彼にされましたから」
そう言いながら、僕が指さしたのは宰相閣下の次男だ。
眼鏡の青年は、驚いたように目を丸くする。
「僕が彼に『こんにちは』と声をかけたら、ツンと横を向かれたんです。その後、クラスの大半を招いたお茶会に招待されませんでした。僕の友人が、どうして僕を招かなかったのかと尋ねたら、『礼儀を教えてやったんだ。私は親切だからな』と答えられたとか。だから、無視とかお茶会に招待しないとかというのは、虐めじゃなくて親切なんですよね?」
――――あれは、入学してすぐのことだった。割と驚いたので、よく覚えている。
ちなみに僕が先に声をかけたのは、マナー違反じゃないよ。現宰相は伯爵で、僕の父は辺境伯だもの。身分的には辺境伯子息の僕の方が、伯爵子息の彼より上なんだ。
まあ、あっちは僕のこと田舎貴族の三男坊だと思っていて、辺境伯家の息子だとは知らなかったみたいだけど。
僕が、クラスの自己紹介で「田舎者ですが、よろしく」って言ったのがいけなかったのかな? 家名とかしっかり聞いていれば、わかったはずなんだけど。
眼鏡を調整し、僕をジッと見た宰相の次男は、ようやく思い出したのか「ああ!」と叫んだ。
「ね、虐めではありませんよね?」
僕の問いかけに口をパクパクさせて、答えに窮する。
まあ、それも仕方ない。
肯定すれば、アンネローゼ嬢は虐めをしていないことになるし、否定すれば、自分が僕を虐めていたことになるからだ。
ダラダラと脂汗を流す彼を放って、僕はなおも尋ねた。
「ハエット公爵令嬢のおこなった虐めって、他にもあるんですか?」
「――――ある!」
今度、声を上げたのは背の高い青年だった。宰相の次男の隣に立っている。
「彼女は、マルガ嬢のドレスをビリビリに破いたそうだ。自分よりダンスが上手かったのが気に入らないという理由だったらしい」
らしいって。それって伝え聞いただけで、自分でたしかめたわけじゃなさそうだよね?
彼は、たしか騎士団長の末っ子だ。僕とは、剣術の授業が一緒だったから、よく知っている。
「え? でも、自分の持ち物を傷つけられるのは、その人が油断しているのが悪いんじゃなかったですか? 君、たしか僕にそう言ったよね?」
僕に聞き返された騎士団長の息子は、鼻じらんだ。
「そんなわけ! あ――――」
怒鳴り返そうとしたようだけど、途中で口をつぐむ。
目を限界まで見開いて、僕をジッと見た。
そして「お前はっ!」と叫ぶ。
「あ、気づいてくれた? そうそう。僕だよ。君が剣術の授業で、一度も勝てなかった僕だ。……君、割と頻繁に僕の剣に細工をしてくれたよね? その現場を取り押さえたときに『自分の剣を傷つけられるなんて、油断している証拠だ』って言っていたじゃないか。『それを教えるために、わざと傷つけたんだ』って。……ハエット公爵令嬢がマルガ嬢にしたことも、それと同じじゃないのかな?」
まあ、本当に公爵令嬢がドレスを破いたとは、とても思えないんだけど。
ドレスって、繊細な見た目のわりには頑丈な生地で仕立ててあるんだもの。はさみで切るとかならまだしも、ビリビリに破くとか。ご令嬢には無理があるんじゃないかな?
あ、あと、僕は傷ものにされた剣でも、騎士団長の末っ子に負けたことはないよ。
こう見えて運動神経抜群なんだ。
「そ、それは――――」
彼も、宰相の次男同様口ごもった。
肯定も否定も出来ないのは、言うまでもない。
「こいつは! こいつは、マルガを階段から突き落としたんだ!」
取り巻きふたりが頼りにならないと思ったのだろう、突然第二王子が怒鳴りだした。
「こいつ」と言って指さすのは、アンネローゼ嬢だ。
あ~あ、やっぱりこの王子はダメだな。
少しは反省したのなら、手加減してやってもいいかと思っていたんだけど……やっぱりヤメだ。
「それって、親切ですよね?」
僕がそう言えば、王子は一瞬虚を突かれた。
「なっ、なっ、なにを言っているんだ! そんなわけないだろう!?」
「え~? だって、殿下がそう言ったんですよ。……僕を窓から突き落とした、その時に」
王子は言葉を失う。
僕は、クスッと笑った。
「あれは二年になってまもなくのことでしたっけ。すごく天気の良い日で、窓が全開になっていて、殿下はすれ違いざまに僕を窓の外へ突き飛ばしたんです。虫の居所が悪かったとかそんな理由だったと思います。……で、落ちた僕を見下ろして『よかったな』って言ったんですよ。――――『ここでこういう目に遭っておけば、今後の人生、なにがあっても耐えられるぞ』――――ってね」
聞いていた全員が、ドン退いた。
王子から一歩、二歩と遠ざかる者もいる。
王子にピタッとくっついていたマルガ嬢でさえ、ちょっと離れてしまう。
どこの暴君だって話だからね。無理もない。
大丈夫。僕は田舎育ちだから、窓から落ちたくらいなんともないんだよ。
「獅子は我が子を崖から突き落とすと聞きますから……ね、殿下? あれは虐めなんかじゃなかったんですよね?」
僕に聞かれた王子は、ブルブルと震えだした。
答えられないのは、他のふたりと同じかな?
でも、あらためて思うと、僕って結構大変な目に遭っていない?
まあ、どれも子どものイタズラだし、何度も転生を繰り返している僕にとっては、どうってないことばかりだけど。
王子は、しばらく固まっていた。
「――――きさまっ! いったいきさまは、なんなんだ!?」
そして、突如、叫びだした。
同時に、僕に向かって掴みかかってくる。
当然僕は、ヒョイッと避けた。
だって動きが遅いんだもの。ハエがとまっちゃうくらいだよ。
「このっ! 避けるな!」
えぇ~? 無茶言うなぁ。僕は痛いのは嫌いなのに。
どうしようかと思っていたら、そこに大声が降ってきた。
「フログ! どうしたんだ?」
フログっていうのは、僕の名前だよ。前世がカエルだった僕にピッタリな名前だと思わない?
こっちの世界ではありふれた普通の名前なんだけどね。
駆け寄ってきたのは、一見あまり目立ったところのない、ごく普通の青年だった。
「あなたは――――」
「兄さん!」
王子と僕は、同時に叫んだ。
「え? 兄さん?」
王子は、驚いて僕を見た。宰相の次男と騎士団長の末っ子も同様だ。
そうだよ。この人は僕の兄さんだ。正確に言うなら下の兄。上の兄は、領地で父の補佐をしているから、王都にはいないんだ。区別をつけて、家では「小兄さん」って呼んでいる。
まったく冴えない外見とは裏腹に、兄さんはすごく優秀な人だった。おかげで王太子殿下に目をつけられて、側近なんてさせられているくらい。
本当に優秀だから、この容姿なのに今では知らない人がいない有名人なんだ。
傍若無人な第二王子でさえ、お前じゃなく「あなた」と呼ぶほどの。
……まあ、彼は、兄さんのバックにいる王太子殿下が怖いのかもしれないけどね。
あ、バックっていうのは後ろ盾ってことだよ。今、兄さんの後ろには王太子殿下はいないからね。
タタタッと駆け寄ってきた兄さんは、僕の様子をサッと確認してから、第二王子に対して礼を取った。
「殿下、ご挨拶申し上げます」
「あ、あぁ。……本当に、彼はあなたの弟なのですか?」
王子はどこか呆然として、そう聞いた。
兄は「はい」と頷く。
「間違いなく私の弟です」
王子と他ふたりは、顔を引きつらせた。
「嘘だろ」
「辺境伯家の息子だなんて」
「兄上が一番信頼している側近の、弟――――」
いやだなぁ。僕は僕だよ。誰の息子だろうと、誰の弟だろうと、変わらぬ僕だ。
僕は、ニコリと彼らに笑いかけてやる。
「フログ、これはどういう事態だ?」
そんな僕と王子たちの間に割りこんで、兄さんは心配そうに聞いてきた。
「どうということもないよ。僕は、ちょっと殿下たちの誤解を解いてやっただけなんだ。ハエット公爵令嬢のした『親切』を、殿下たちは『虐め』だと勘違いしていたみたいだからね」
そうですよね? と僕が聞いても、殿下たちはなにも言えなかった。
まあ状況は、変わりないからね。
サッと周囲を確認した兄さんは「ハァ~」と、深いため息をついた。
その一瞬でいろいろ察したらしい。さすが僕の兄さんだ。
「わかった。後は俺が処理する。お前はこれ以上なにもするな」
そう言うと、本当に全部処理してくれた。
近衛騎士を呼び寄せて、殿下たちとマルガ嬢を護衛するという名目で拘束。あっという間にこの場から追いだしてしまう。
アンネローゼ嬢には丁重に頭を下げて、今日中に必ず王室から謝罪に行くと約束し、公爵家に帰ってもらった。
この場にいた卒業生や保護者たちには、場を騒がしたことへの謝罪をしつつ、しっかり口止めも。
う~ん、小兄さんってば、手際がよすぎる。
そんなだから、いつまで経っても王太子殿下にいいように使われてしまうんだよ。
僕が呆れ……いや同情していれば、兄さんがこっちを向いた。
「……大丈夫か? 第二王子はこっちでしっかり処分するから心配するな。迷惑かけて悪かったな」
「やだなぁ、なんで兄さんが謝っているの? 謝らなきゃならないのは、王太子殿下でしょう?」
王太子は、とっても優秀だ。
ホント、いやになるほど優秀で、そんな彼が弟の愚行を止められないはずがない。
つまり、今回の第二王子の婚約破棄騒動の影には、王太子の思惑が隠れているってことなのだ。
「どうせ、第二王子に好き勝手させることで、使える学生の選別やら、貴族のふるい分けやら、第二王子派閥の弱体化やら画策していたんでしょう? ……まったく、やることが陰険で極道で小賢しくて狡猾な人だよね」
「……そのとおりだけど、言い方!」
兄さんは頭を抱えて蹲った。
ねぇ、ここ卒業パーティーの会場だよ。みんな遠巻きにしているけど、王太子の側近が蹲っちゃだめなんじゃない?
「まあまあ、兄さん。そんなことより……僕、学園にいる間、本当に良い子にしていたんだよ。多少目障りな奴がいても、プチッと踏み潰したりせずに、目立たず大人しく穏便に、すごく平穏にすごしたんだ。……まあ、最後にちょっとお節介しちゃったけど、王国のざまぁを未然に防いだんだから、そこは大目に見てくれるよね?」
兄さんの腕を引っ張って立たせ、会場から庭に出ながら、僕はコテンと首を傾げた。
ここなら誰もいないから、少しくらい大きな声を出しても問題ない。
「…………ちょっと?」
兄さんは、眉をひそめた。
「ちょっとだよ! 誰も怪我したり死んだりしていないんだから、ちょっとに決まっているでしょう」
僕が言い張れば、兄さんは「……まあ、そうなのか?」と考えながらも納得する。
相変わらず押しに弱いんだから。
そんなだから、王太子に――――って、これはさっき言ったっけ?
「そうだよ! だから、王都の邸にプールを作るっていうご褒美忘れないでよね!」
僕が王都の学園に通うに当たって、兄さんと約束したことがある。
それは、騒ぎを起こさないこと。モブ学生として目立たずすごしてほしいって、兄さんに言われて、僕は了承したんだ。
まったく変な頼みだよね? 僕が、前世のひとつも覚えていられないような輩を、まともに相手にするわけないのに。
いらぬ心配って、こういう時のための言葉だと思うよ。
でもまあ、頼まれれば、引き受けるのは吝かでは無い。
当然、対価は取るけどね。
ただより高いものはないって、よく言うだろう。
あ……これは、地球のことわざか。
――――で、僕は学生時代を目立たずすごす代わりに、プールを作ってもらうことにしたんだ。
前世がカエルだからね。水の中に入っているとホッとするんだよ。
「プールくらいいくらでも作るから、今後も大人しくしていてくれよ」
兄さんが頼んでくる。
「もう、兄さんは心配性だなぁ。僕みたいな温厚な人間がなにかするはずないじゃないか」
僕は笑っていなしたんだけど、兄さんは笑わなかった。
「前世が、アレクサンダー大王だったり始皇帝だったりした人間のどこに、温厚なんて言葉が当てはまるんだ!?」
そんな昔の話をされてもね。
「あの頃は僕も未熟だったからね。ほら、あるだろう? 世界征服とかに憧れちゃうお年頃だったんだよ」
黒歴史って言うんだっけ? いやはや、お恥ずかしい。
今の僕は、世界征服なんてしないよ…………たぶん。
「頼む! 頼むから、国家転覆とか企むなよ!」
「しないよ。そんなこと」
「うっかりとかでも、ダメだからな!」
「………………努力する」
下剋上とか簒奪とか、案外簡単なんだよね。謀とか巡らすの、面白いし。
スッと目を逸らした僕に、兄さんが青い顔をして縋ってきた。
「本気で頼む! 王太子の側近になったときだって、泣いて縋って土下座して、ようやく婚約破棄しないでもらったのに、お前が国王にでもなったら、俺はその兄だ! …………今度こそ俺は、捨てられてしまう!」
…………ああ、そっちの心配ね。
僕は、納得した。
兄さんの婚約者は、いい人なんだけど、兄さんに輪をかけた事なかれ主義者なんだ。
おかげで、兄さんが王太子の側近候補に選ばれたときは、あわや婚約破棄かっていう大騒ぎになった。
たしかに王兄になんてなったら、あっさり兄さんと縁を切っちゃいそうだ。
「だったら兄さん、プールの他に露天風呂も作ってよ。両方あれば、僕、絶対のんびりゆったりしちゃうと思うんだ。一日中ボーッとして暮らすって約束するよ」
だから僕はそう言った。
「わかった! 必要経費で落とす」
それって、いったいなんの必要経費?
「絶対! 絶対だからな!」
疑問に思ったけど、兄さんから必死の形相で頼まれて、僕はうんうんと頷いた。
まあ、露天風呂さえ作ってもらえるんなら、金の出所なんてどうでもいいからね。
「よし、じゃあ帰ろうか兄さん。僕、邸で〆のラーメンが食べたいな」
前世持ちの僕と兄さんがいるから、我が家では普通に日本食が食べられる。
露天風呂ができたら、湯桶にとっくりとおちょこを入れて、酒を飲むのもいいよね。
え? 未成年は飲酒禁止? 大丈夫。ここは異世界だから。
「ああ、帰ろう。…………フログ、卒業おめでとう」
「ありがとう、兄さん」
こうして僕は、学園を卒業した。
きっと今世の僕は、こんな感じでまったり生きていくんだろうな。
それもまたいいよねと、僕は思った。
いらない人物設定
主人公 モブ令息の弟
輪廻転生のすべてを記憶している、はっきり言って人外
前世がカエルだったため、比較的のんびりしている
自分と同じく前世持ちの兄が好き
兄 モブ令息
優秀な王太子と人外の弟に好かれる、苦労人
絶対婚約者に捨てられたくない。…………頑張れ
※宣伝
5月末に
「追放された元王女ですが、このたび最強魔女として出戻りました」
という書籍が刊行予定です。
https://t.co/dosDcoVVze
お気にとめていただけましたら幸いです。
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