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この辺境に引っ越してからあっという間に1か月が経過した。
農作物は順調に育ち大豊作となった、初回としては大成功ではないだろうか。
これで、ここでも作物は育つ事は実証出来たし生活の基盤は徐々に出来つつある。
「さて、今日は釣れるかな?」
僕は釣り竿とバケツを持って近くの川にやって来ていた。
目的は勿論、魚釣りである。
餌は現地調達、石の間にいた小さな虫を釣り針に刺してエイッと投げる。
ここからが魚との駆け引きになるんだけど、川は澄んでいるので何処に魚がいるのかはわかる。
大物は流石にいないけど小魚とかは焼いたり煮たりして食べている。
釣果は釣れたり釣れなかったり半々だ。
と、釣りを楽しんでいると川上の方から何かが来るのを見た。
「あれ、ボートだよね? こんな田舎に珍しい……」
しかも川上は隣国方面だからもしかしたら隣国から来たのかもしれない。
ボートは左右にガタガタと揺れている。
よくよく耳を澄ますと『んーっ!!』とか聞こえる。
もしかして人が乗っているんじゃないか?
僕は釣り竿を置いて川に入って行った。
川の流れは穏やかだし腰ぐらいの深さなのでギリギリ動ける。
ボートに近づき中を覗き込んだ。
「んーっ!! んーっ!!」
「ち、ちょっと!? すぐに解くからねっ!!」
中にいたのは手足を縄で縛られ口も紐で塞がれていた少女だった。
僕はボートを岸に誘導させ少女をボートから降ろしそこで少女の口を塞いでいた紐を解いた。
「はぁはぁ……、あ、ありがとうございます」
「いやいや、それにしてもなんで縛られていたの? 何かトラブルに巻き込まれたの?」
「私もどうしてこうなったかわからないんです……、気がついたらこんな事になっていて……、あの此処は何処でしょうか?」
「此処はクマンデール王国の端にある田舎だよ」
「えっ!? 隣国に来てしまったんですかっ!?」
やっぱり隣国の少女みたいだ。
しかし、何処かで見た事ある様な……。
「僕はロビア、元クマンデール王国の第一王子だった者だ」
「えっ、第一王子なんですかっ!? あ、私シェリア・スマーフと申します。 レイスア王国の公爵家の娘です」
「えっ、シェリアて確か向こうの王子の婚約者だよね? 確か交流会で顔を見た事あるよ」
シェリアと名乗った時、すぐに交流会の事を思い出した。
挨拶もしたんだけどあの時は所謂貴族令嬢らしい隙のなさを感じていた。
しかし、今目の前にいるのはその時とは違う疲れ切った少女だった。




