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僕が王位継承権の放棄を承諾して1週間後、正式にリカルドが王太子になる事が発表された。
貴族は勿論国民も大歓迎でお祭り騒ぎだ。
……いや、別に良いんだけどさ、もし僕がそのまま王太子になっていたらどんな反応になっていたか。
想像しただけで切ない。
そんなお祭り騒ぎの中、僕はひっそりと城を旅立った。
父上が用意してくれたのは国の端にある辺境だ。
『お前が作る理想の街を作れ』との事だ。
王都からは馬車で1週間ぐらいかかる、人っ子1人もいない紛れもない辺境だ。
近くには山脈があり山を越えれば隣国に行けるけど、山道が険しいから余程の事が無い限りは通らない。
過酷な環境ではあるけどやりがいがある。
「しかし、見送りに1人も来ないなんて僕はやっぱり人徳が無いんだなぁ……」
僕が出て行く事は知っている筈なのに見送りに来た人はいない。
いてもいなくても良い存在である事が非常にわかる。
まぁ貴族学院時代も取り巻きはいたけどあくまで形だけで友情とか信頼とかはない。
向こうは義務でいただけで心を許す事は無かった。
それはそれでさびしいけどね、しょうがない。
向こうには向こうの事情があるからね。
「それじゃあ新天地に向かいますか」
1人荷物を持って乗り合い馬車乗り場へと向かう。
僕はお城にお辞儀をした。
「今までお世話になりました、僕はただの平民として生きていきます」
もしかしたら2度と王都に戻る事は無いかもしれない。
そんな事を思いながら僕は城を後にした。
そして、乗り合い馬車乗り場に到着して馬車に乗り込み王都を出て行った。




