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異世界から学ぶライフスタイル 〜第一部 始まりの地〜  作者: カズー
第八章

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57話 決闘

 オレとレオックは、無言で向かい合った。


 オレの身体には、鉄と革を組み合わせた新しいハイブリッド鎧。機動性と防御力を兼ね備えた逸品だ。だが、今は魔法のマントは身につけていない。あれは動きの邪魔になる。


 手には鉄の槍。もう一方には、重く頑丈な鉄の盾。


 一方、レオックは全身に磨き抜かれた銀の鎧を纏っている。その姿はまるで騎士そのもの。右手に無造作に握られた剣が、ただそこにあるだけで威圧感を放っていた。


「カズー子爵、魔法使いが槍で私に勝てるとお思いか──」


 オレは答えない。ただ、レオックの動きに意識を集中する。


 彼は続けた。


「……わかりました。私が少し指南して差し上げよう」


 その言葉と共に、レオックが静かに歩き出す。まるで獲物に近づく獣のように、ゆっくりと、しかし確実に。


 オレの槍の間合いに踏み込んだ。


 反射的に、オレは槍を構え、銀鎧の中央に向けて突きを放つ。


「やぁーッ!」


 だが──


「遅い」


 レオックは槍を難なく躱し、剣で横から叩きつけてくる。鋭い金属音が響いた。オレは必死に槍を離さぬよう堪え、すぐに距離を取る。


 レオックが笑う。


「子爵、魔法で来なさい」


(……やはり、オレの槍じゃ当てられない)


 そう、わかっていた。レオックは歴戦の騎士。オレは、たった一週間前に槍を握ったばかりの素人。槍での勝負は分が悪すぎる。


 魔法しかない──。


「……」


 オレは無言で槍を地面に置き、アイテムボックスから魔法の杖を取り出す。


 レオックは口元をわずかに吊り上げて言う。


「やっと、やる気を出したか。しかし、それでも私は負けない!」


 オレは杖を構え、レオックの胸部へ攻撃魔法を撃つ。


「ウィンドボール!」


 轟音と共に、圧縮された風弾が一直線に飛んだ。


 しかし──


「──甘い」


 レオックは軽やかに身を翻し、風弾を躱した。


「子爵、凄まじい速さです。だが、それだけでは──」


 レオックの剣が閃く。オレは盾で防ごうとするが、彼の狙いはそこではない。鋭く足元を薙ぐ──フェイントだ。


「……ぐっ!」


 浅いが確かな痛みが足を襲う。それでもオレは歯を食いしばり、再び魔法を放つ。


「ウィンドボール!」


 またも躱される。


 そして、今度は肩に突きが入る。


「──がっ……!」


 地面に倒れる。焼けるような痛みが肩を走る。


 レオックが叫ぶ。


「子爵、もう止めますか!?」


 だが、オレは言い返す。


「レオック、これからだ!!」


 距離を取りながら、怒涛の連続魔法。


「ウィンドボール! ウィンドボール! ウィンドボール!」


 だが──、一発も当たらない。


(どうしてだ!? この速度の風弾が……)


 観察する。


 レオックの視線が、常にオレの目を見ている。


(そうか……動きを読まれている!? オレの視線や体の動きで、魔法の撃つタイミングと軌道を予測してる……!?凄まじい技術だ!)


 オレは叫ぶ。


「レオック、なんでそこまでして、オレを姫様から遠ざけるんだ!」


 レオックの目が細くなる。


「それは、貴様が姫様を幸せにできぬと、わかっているからだ!」


「なら……お前が幸せにすればいいだろう!」


 その言葉に、レオックは一瞬だけ言葉に詰まった。


「それが……できるなら苦労しない!!」


 剣閃が舞う。右足、そして左手に斬撃。


 オレは膝をつく。


 だが、ここで終われない。


 アイテムボックスから【妖精剣】を取り出す。


 ──装備した瞬間、世界が変わった。


 身体が軽い。速い。


 オレは、妖精剣を突き出す。鋭く、的確に──だが、


「無駄だ!」


 レオックはそれさえも躱す。


 すぐさま、魔法へ切り替える。


「ウィンドボール!」


 レオックが風弾を躱す。


 そこに、オレは全体魔法を発動。


「ウィンドレイン!」


 無数の風の粒が辺りを包み、視界を遮る。レオックの動きが、一瞬だけ鈍る。


(今だ!)


「ウィンドボール!!」


 風弾が直撃──する寸前、全体魔法の風の粒に当たり、威力が少し減衰する。


 だが──


 レオックが後ろに吹き飛ぶ!


 その瞬間、オレは一気に背後へ回り込み──


「ぉおおおおッ!!」


 押し倒した!!


 レオックが地面に叩きつけられる。


「うぐっ……何をする、貴様!!」


 オレは答えず、寝技で完全に抑え込む。


 小さい頃にやっていた柔道が、今、活きた。


「レオック、何があっても、オレはお前を離さない!!」


 レオックは剣で斬りつけてくる。腕も、足も切られ、血が流れる。痛い……だが、オレには《オート・リカバー》がある。回復はしている。


 痛みはあるが、離さない。


「ぐぅ……くそっ! 離せ!!こんなのは決闘じゃない、戦士として立って戦え!!」


「…………!」


 オレは無言で抑え込む。呼吸を整え、意識を一点に集中させる。


「ルイアナ!こいつをどけろ!!これは違反だ!!」


 ルイアナは、動かない。黙って見ている。


 1分──2分──5分──


 レオックの抵抗は続いた。


 だが、10分後。


 ──レオックの動きが止まった。


 静寂の中、ルイアナの声が響く。


「そこまでだ!!」


 オレはレオックを離すが、もう立ち上がれない。


 レオックも地面に伏したまま、ぽつりと呟いた。


「……私の負けだ」


 その言葉に、ルイアナが静かに告げる。


「この勝負──引き分けとする」


 オレは地面を見ながら、血と汗にまみれた身体で考える。


 そしてオレは学ぶ。


〈決闘で抑え込みは有効だ〉


 と言うことを。

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