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異世界から学ぶライフスタイル 〜第一部 始まりの地〜  作者: カズー
第八章

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53話 マスター戦後

 団長ルイアナの一撃が、ついにダンジョンマスターを打ち倒した。


 その瞬間、ダンジョンマスターの部屋にいる全ての魔物が黒い霧となって霧散し、静寂がダンジョンマスターの部屋を包み込む。重々しく閉ざされていた入口の扉が、音を立てて開かれた。同時に、前室の扉も連動するように開く。


 オレは歓喜を込めて、ルイアナに声をかけた。


「ルイアナ、やったな!」


 ルイアナは満面の笑みを浮かべ、息を切らせながら俺の肩に手を置く。


「あぁ!カズー、お前のおかげだ!本当にありがとう!」


 だがオレは首を振り、皆を見渡しながら応える。


「いや、オレたちチーム全員の勝利だ!」


 アタックチームの6人が互いに肩を組み、達成感と連帯感を噛みしめた。


 そこに、後続の騎士団や歩兵部隊が前室へと入って来た。彼らはオレたちの姿を見るなり歓声を上げ、団長ルイアナのもとに駆け寄る。


「団長、やりましたね!ダンジョン攻略、おめでとうございます!」


 ルイアナは誇らしげに頷き、皆で彼女を称えた。


 その時、魔法師団の一人が部屋の片隅から、まるで人の頭ほどもある巨大な魔石を拾い上げ、ルイアナに差し出す。


「団長、魔石を発見しました……!」


 オレは興味に駆られ、その魔石に手を触れる。ゲームシステムのメニューを開くと、表示されたのは――


【大魔石】


「この魔石が……ダンジョンの核か?」


 ルイアナが真剣な面持ちで説明する。


「そう、この魔石がダンジョンを創っている。この魔石を持ち出せば、いずれダンジョンは崩壊していくだろう」


 再びメニューに目をやると、今度は見慣れないポップアップが表示された。


『槍兵のジョブを獲得しました』


(やった!新しいジョブだ!)


 喜びが胸を躍らせるが、今は喜んでいる場合ではない。まだ出口までは危険が残っている。オレは風の魔法使いにジョブを切り替え、先頭に立った。


「ファイアボール! ウィンドボール!」


 放たれた魔法が次々と魔物を焼き払い、吹き飛ばしていく。魔法師団の一人が目を見開いて言う。


「子爵様は、どれほどの魔力をお持ちなのですか……!?」


 確かに、オレは《オート・リカバー》のスキルによってMPを回復し続けていた。だから、魔法を連続で使い続けられるのだ。


 ついに出口が見えた。仲間たちは皆、疲労困憊の表情をしている。そこでオレは、風の全体攻撃魔法を使う。


「ウィンドレイン!」


 風の粒のような魔法が空間を包み込み、周囲の魔物の動きを封じる。足止め程度ではあるが、仲間を守るには十分だった。


 ――


 無事、全員が脱出を果たし、俺たちは野営地へと戻った。


 魔法師団の一人が【大魔石】をプリーストのエルミナへと手渡す。オレは彼女に尋ねた。


「エルミナ、その魔石はどうするのですか?」


「カズー子爵様。この魔石は“聖印石”にします。これほどの大きさがあれば、都市全体を覆う結界にもなります」


(クルワン師匠が言っていた……聖印石は、魔物を寄せ付けない結界。なるほど、プリーストが魔石から作るものだったのか)


「エルミナ様も聖印石を作れるのですか?」


「いえ、私はまだ未熟で。師匠の補助に回るだけです」


 頷くオレ。聖印石の製作には、相応の熟練が必要なようだ。


 そこへ、ルイアナの声が響いた。


「皆、よくやってくれた!我々はダンジョンを攻略した!さあ、城塞都市へ帰還するぞ!」


 ◆ ◆ ◆


 道のりは4日。疲労はあったが、皆の顔には誇りと安堵が溢れていた。城門をくぐる時、住民たちの温かい歓声が迎えてくれた。


 ダンジョン攻略部隊は任を終え、解散。


 だがオレは、ルイアナに呼び出されて騎士団宿舎の中庭へと向かった。そこには長テーブルが並び、山のような食事が用意されていた。騎士団の慰労会だ。


 準備が整ったところで、ルイアナが立ち上がる。


「皆、よくやってくれた!ダンジョン攻略、おめでとうー!」


「「おおおー!!!」」


 歓声が上がり、乾杯のエールが交わされた。


 オレもルイアナとグラスを合わせ、満ち足りた気持ちで酒を飲む。


 騎士団員たちは、団長から報酬として金貨2枚を順に受け取っていく。そして、ルイアナが声を上げる。


「ダンジョンマスターを討伐した者たち、前に!」


 アタックチームの仲間4人が前に出る。


「お前たちは、見事に主目標を果たしてくれた。誇り高き騎士団の勇士だ!」


 ルイアナはそれぞれに金貨10枚を手渡す。


 そして、オレを一度見やってから、騎士団全体に問いかける。


「今回、ここまで犠牲が少なかったのは……カズー子爵のおかげだ!皆、カズー子爵は貴族か――!?」


「ウ―――!ウ―――!」


「カズー子爵は魔法師団か――!?」


「ウ―――!ウ―――!」


「では、カズー子爵は騎士団員か―――!?」


「そうだ――!うオ―――!!」


 ルイアナはオレの手を取り、高らかに掲げた。


「今日からカズー子爵は、騎士団員となった!!」


 歓声が天に届くかと思うほどに沸き上がる。オレのもとにルイアナが歩み寄り、金貨10枚を差し出す。


 その金貨の重みは、単なるお金ではなかった。オレの心に温かく、誇り高く響いた。


「ありがとう、皆……ありがとう……!」


 言葉にならない想いが、涙となって頬を伝う。誰も笑わない。アタックチームの仲間がオレの肩を抱き、声を上げて笑った。


「これからは、仲間だ。カズー!」


(なんて幸せな瞬間だろうか。オレはこの日を、一生忘れることはないだろう)


 そしてオレは学ぶ。


〈報われた努力は涙になる〉


 と言うことを。

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