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異世界から学ぶライフスタイル 〜第一部 始まりの地〜  作者: カズー
第七章

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51話 努力の先

 暗闇の中で、時間の感覚が徐々に薄れていく。


 ダンジョンは広大で、道が幾重にも枝分かれしており、まるで巨大な迷路だ。時には人ひとりが通るのがやっとの細道もあり、騎馬では進めない場所も多い。


 最初にトロールと遭遇してから、すでに数え切れないほど魔物と戦ってきた。気を緩めれば、命を落とすのは一瞬だ。


 そして今、オレは――ゴブリンの群れと対峙していた。


「ファイアボール! ウィンドボール!」


 続けざまに魔法を放つ。火球と風弾が幾重にも炸裂し、ゴブリンたちは混乱しながらも襲いかかってくる。


「ファイアレイン!」


 上空から降り注ぐ火の粉が、敵の頭上を焼き、ゴブリンたちは悲鳴を上げながら地に倒れていく。


 魔法を撃ち終えたオレは、妖精剣を手に取り、愛馬と共に突撃した。馬が咆哮のように嘶く。


(突撃は馬の力があってこそだ…!)


 その一撃で残ったゴブリンたちを一掃する。戦いの終わりと共に、オレの中に湧き上がる力のうねり――


『レベルアップ 騎士レベルが30になった。新しいスキル 騎士を獲得した』


 そこに、騎士団長ルイアナの凛とした声が響き渡った。


「全員、野営地に戻れ!」


 伝令が各小隊を回り、撤退の号令を伝える。


 オレも馬を駆って野営地へ戻ると、すぐに団長から呼び出された。


 天幕の中。ルイアナは大きな机に広げられた地図を前に座っていた。その表情はいつにも増して真剣だ。


 部隊長たちが全員集まると、ルイアナが口を開く。


「みんな、疲れているところ悪いな。この地図を見てくれ」


 地図には、ダンジョン内の構造が簡易に描かれている。とはいえ、把握しきれないほどの通路と部屋が入り組んでいるのが見て取れた。


「早期にダンジョンを攻略するため、部隊を分けて進攻する。それぞれの担当区画はここに示した。目的はただ一つ――ダンジョンマスターの部屋の発見だ」


 その言葉に、オレは思わず問いかけた。


「ルイアナ、ダンジョンマスターとは何のことですか?」


 彼女は少し頷いて答える。


「カズー、お前はこれが初めてのダンジョンだったな。ダンジョンマスターとは、その迷宮を支配している魔物のことだ。そいつを倒せば、このダンジョンは崩壊し、攻略完了となる。通常であればフロアマスターという中ボスが各階層にいるが、このダンジョンはまだ未完成なようだ。フロアマスターはいないと見ていいだろう」


(なるほど…つまり、ダンジョンの王様のような存在ってことか)


 ルイアナは続ける。


「今日はゆっくり休め。明朝から、再び進軍だ!」


 その夜。オレは自分のテントに戻り、剣を脇に置いて、しばしの眠りについた。


 翌朝――。


「では、各部隊。ダンジョン攻略を始めろ!」


 ルイアナの号令が響くと、各部隊が小隊単位で迷宮へと散っていく。オレもルイアナと共に、中央ルートを進む隊に同行する。


 しばらく進むと、ぬるりとした気配が足元から漂ってきた。――スライムだ。


 歩兵たちが素早く反応し、槍で応戦する。オレは即座に魔法を放つ。


「ファイアボール!」


 火球が命中し、スライムは蒸気と共に霧散した。


 やがて、広めの部屋を見つけたルイアナはそこに天幕を張り、簡易の指揮所を設営する。机を置き、地図を再び広げ、各部隊からの報告を待つ。


 数時間後、伝令たちが次々と天幕へ駆け込んできた。


「敵の数が多すぎます!」「負傷者が増えています!」「魔力切れで魔法が撃てません!」


 報告の度に、ルイアナは冷静に指示を下す。魔法使いの魔力切れ、小隊の孤立、進軍の停滞――すべては魔物の物量に押されているせいだ。


 オレは黙って状況を見つめながら考える。


(オレは《オート・リカバー》のスキルでMPがすぐに回復するが、他の魔法使いたちは違う。魔力が尽きれば、ただの“お荷物”だ。これは、ジリ貧になる…)


 午後に差し掛かり、ルイアナは決断する。


「全隊、野営地へ一時撤退!」


 野営地に戻ると、そこはまさに修羅場だった。救護隊が忙しなく動き回り、あちこちからうめき声が聞こえる。魔法使いたちは座り込み、意識が朦朧としている者もいる。


 その中に、エルミナの姿があった。彼女はヒールの詠唱をしようとするが、魔力が込められずに詠唱が途切れている。


「エルミナ様、手伝います。ハイポーションを持っています。これをお使いください」


 オレはアイテムボックスからハイポーションを20本取り出して渡した。


「子爵様…! こんなにたくさん…ありがとうございます!」


「軽傷者にはこの傷薬を。重症者にはポーションを優先してください」


(多くは軽傷だ。まずは手が届くところから回復していこう)


◆ ◆ ◆


 数日後――。


 ダンジョン内に設営した指揮所に、息を切らした伝令が駆け込んできた。


「団長! ダンジョンマスターの部屋を発見しました!」


 ルイアナが立ち上がり、力強く頷く。


「――よくやった!」


 その言葉に、天幕内の空気が一気に高まった。目の前が開けるような、そんな感覚が胸に広がる。


 オレは、深く息を吐きながら思う。


(希望は、ただ待つものじゃない。努力を重ね、前へ進んだ先に現れるんだ)


 迷宮の先にある光を信じて――進軍は、まだ終わらない。


 そしてオレは学ぶ。


〈努力を重ねれば、希望が現れる〉


 と言うことを。

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