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異世界から学ぶライフスタイル 〜第一部 始まりの地〜  作者: カズー
第五章

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37話 演説後

 オレは、島民の前での演説を終えたあと、領主の館の執務室で椅子に身を沈めていた。


(……疲れた。だが、これでようやく自警団の設立には目処が立った)


 ふと、机の端に前足をちょこんと乗せてくる感触がある。シャムだ。


「主、お疲れ様ニャ」


 相変わらずの癒し要員である。

 オレはその頭を優しく撫でながら、自然と笑みをこぼす。


 その時、執務室の扉が勢いよく開かれた。新しい領主代行のジーノが、興奮気味に飛び込んでくる。


「カズー様、すごいことになっています!自警団への入団希望者が……500人を超えています!しかも、まだまだ増えそうです!」


「……ジーノさん、それは良かった。あとは、武器と防具の調達、そして訓練ですね」


 オレがそう返した瞬間、また別の男が慌てた様子で執務室に飛び込んできた。おそらく、出来たばかりの自警団員だろう。


「カズー様!海賊の船長の住処を発見しました!ですが……一部の団員が、興奮して武器を持って討伐に向かってしまいました!」


(まずい……! まだ訓練もしていない今の段階で海賊と衝突すれば、こちらに死傷者が出る。そんなことになれば、せっかく高まった士気が一気に落ちる……!)


 オレは立ち上がり、ジーノに執務室を任せて、報告に来た団員とともに現場へ向かった。


◆ ◆ ◆


 海賊の住処は、島にある山の中腹。岩壁に沿って建てられた、複数の木造の小屋が連なっている。荒々しいが、そこそこ防御力の高そうな作りだ。


 険しい山道を登りきったオレたちが現場に着くと、すでに戦闘が始まっていた。自警団員たちが拠点に向かって攻撃を仕掛けているが、海賊側からの矢が容赦なく飛んできて、前に進めていない。


 オレは、以前共に戦った猟師のローティに声をかける。


「なぜ、こんな無茶な戦いをしているんだ!?」


 ローティは、苦い顔で頭を下げた。


「すみません……カズー様の演説に感化されて、皆、勢いで動いてしまって……止められませんでした……」


 見渡すと、こちらには100人以上の団員が集まっている。だが、すでに何人かが矢で負傷している。今のところ海賊たちが外に出てこないのが唯一の救いだが、このままでは犠牲者が出るのも時間の問題だ。


 オレはアイテムボックスから【ポーション】5本と、【救急箱】から取り出した傷薬をローティに手渡す。


「重傷者にはポーションを使え!軽傷者にはこの薬を塗って手当てを!怪我人は後方へ!」


 指示を出しながら、オレは盾を構えて前線へと進み出る。


「全員、盾を構えろ!」


 だがローティが、申し訳なさそうに声を上げた。


「カズー様……その、全員、盾を置いてきてしまいました……登山には邪魔だと……」


(……そういうことか)


 オレは即座に判断し、自ら先頭に立つことを決める。


「オレが前に出る!お前たちは矢で援護しながらついてこい!」


 前方に向かって詠唱する。


「ファイアウォール!」


 空間に赤い光が走ると、オレと敵陣の間に高く立ち上がる炎の壁が出現した。炎の熱気が顔をなでる。


 だが、それでも矢は飛んでくる。炎の壁の外側、斜めの角度から放たれている。


 オレは鉄の盾を構え、体を低くして前へと突き進む。盾に何本も矢が叩きつけられ、衝撃が腕を襲う。


 次の瞬間、鋭い痛みが肩を貫いた。


「くっ……!」


 矢が肩に刺さった。だが、止まるわけにはいかない。オレはそのまま炎の壁の最前線に到達する。


(……まずは左側から仕掛ける!)


「ウィンドボール!」


 圧縮された空気の塊が音を立てて飛び、木造の家に直撃。爆発的な風圧とともに壁を吹き飛ばす。


(この空気の球は、“風弾”か……!)


 続けて、右の射撃ポイントに狙いを定める。


「ウィンドボール!」「ファイアボール!」


 風と火の魔法、風弾と火球を狙った場所に向かって放つ。立て続けに炸裂し、建物の一部が崩れるように壊れる。木の破片が宙を舞い、敵の視界を奪った。


(やはり属性が異なる魔法なら、連続発動できるな)


 そして――中央を狙おうと構えたその時。


 拠点の中央の建物から、海賊たちが両手を挙げて現れた。


「降参する!もうやめてくれ!」


 次々に海賊が出てくる。ざっと20人はいる。


 自警団員たちが一斉に駆け寄り、縄を使って海賊たちを拘束していく。


 その場にいたローティが、心配そうにこちらに近づいてきた。


「カズー様……肩に矢、刺さってますが……!」


(そうだ、すっかり忘れていた……!)


 興奮していて気づかなかったが、肩の激痛が蘇る。

 オレはローティに矢を抜くよう指示する。


「頼む……!」


「失礼します……!」


 矢が引き抜かれる瞬間、鋭い痛みが体を駆け抜けたが、《オート・リカバー》のスキルが発動し、数十秒後には傷がみるみるうちにふさがっていく。


 拠点内へと踏み込んだ自警団員の一人が、叫ぶ。


「カズー様!船長が……死んでいます!」


 オレはその場に向かうと、そこには斬り殺された海賊の男が倒れていた。拳を強く握ったままこと切れている。


「……内部抗争か。討伐直前に仲間割れしたか……」


 その拳を開くと、男はひとつの鍵を握っていた。オレはその鍵を手に取る。


 と、別の団員が奥から叫ぶ。


「カズー様!宝があります!」


 中に入ると、そこには金貨の山――おそらく500枚はある。加えて、質の良い武器と防具も大量に保管されていた。


 思わず笑みがこぼれる。


 そしてオレは学ぶ。


〈悪の組織は金を隠し持っている〉


 と言うことを。

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