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異世界から学ぶライフスタイル 〜第一部 始まりの地〜  作者: カズー
第五章

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34話 反撃

 ◆ ◆ ◆


 物置小屋でジーノと別れてから、すでにどれほどの時間が経っただろうか。

 重く湿った空気に、微かに潮の匂いが混じり、息苦しさを覚える。

 物置小屋の古びた扉を睨みつけながら、オレは静かにジーノを待っていた。


 今は、ジーノが仲間を連れてきて、海賊に占拠されたこの島を奪還することを目指す。


 不意に、物置小屋の扉がわずかに開く。

 光の隙間からジーノが顔を出し、静かに声をかけてきた。

「領主様、仲間が来てくれます。待ち合わせは港の海賊船です。移動しましょう」


 ジーノとオレは、海賊船へと向かうため、物置小屋を出る。

 海賊の目につかないように、ジーノは慣れた様子で裏道や路地裏を使い、慎重に進んでいく。


 島の路地裏は入り組んでおり、薄暗い。

 そこかしこから、生臭い潮風と酒の匂いが混じり合った、不快な空気が漂ってくる。


 ジーノの背中を追いながら、オレは静かに息を潜める。

 やがて、視界が開け、港へと出た。


 そこには、巨大な帆船が停泊している。


 両側に櫂が装備できる造りになっており、帆と櫂の両方で進むことができるようだ。


 海賊船の入り口には、見張りが一人、ただぼんやりと立っている。


 ジーノはオレに手で合図を送り、見張りに気づかれない場所で身を隠すように促す。

 オレたちは身を潜め、10分以上待っただろうか。


 ジーノの仲間らしき人影が、物陰から次々と現れる。


 10人ほどの集団だ。

 ほとんどが農夫や漁師と思しき、質素な身なりの者たちだ。


 しかし、その中に一人、獲物を狙うかのように弓を構えている40才前後の男がいる。

 おそらく猟師だろう。


 オレは、集まった彼らに静かに語りかけた。

「オレは、新たにこのマーブル島の領主になった子爵のカズーだ。海賊からこの島を奪還すると決めた。みんな、協力してくれ!」


 オレの言葉に、ジーノが応える。

「カズー様、もちろんです。みんな、この時を待っておりました!」


 彼らの言葉を聞き、オレは胸が熱くなった。

(この島に住む人々は、これまでどれほどの苦しみに耐えてきたのだろう)


 オレは、心の中で誓った。

 必ず、この島を彼らの手に取り戻してみせる。


 「よし、まずはあの海賊船を奪取する。弓を持っているお前、あの見張りを倒せるか?」


 オレの問いかけに、猟師は静かに頷くと、迷うことなく弓に矢をつがえた。


 その手つきは淀みなく、訓練された兵士のようだ。


 張り詰めた静寂の中、矢が放たれる。

 「ヒューーーーッ!」


 風を切り裂くような音が響く。

 放たれた矢は、見張りの胸に見事に突き刺さり、見張りは悲鳴をあげる間もなく海へと落ちていった。


 静寂を破ったのは、水しぶきの音だけだった。


 オレは、見張りが海に落ちた音が他の海賊に気づかれることを恐れ、仲間を急かして海賊船へと向かう。


 海賊船の中は、外の光が遮られ薄暗い。


 船内に入ると、櫂を漕ぐための広い空間が広がっており、そこで目を疑う光景が俺の目に飛び込んできた。


 そこには、鎖に繋がれた男女や子供が20人以上、憔悴しきった様子で座り込んでいる。


 後ろからついてきた島民の仲間が、声を絞り出すように言う。

「行方不明になった者たちです。やはり、海賊に連れ去られていたようです」


 海賊は、島民を攫い、奴隷として売買していたのだ。


 怒りが、俺の心に燃え上がる。


 仲間たちは、すぐに鎖に繋がれた人々の解放を始めた。


 その間に、俺はさらに下の階へと続く階段を進む。


 階段を降りると、食堂と船員室があった。

 食堂のテーブルには、食べ散らかされた料理がそのままになっており、数人の海賊が談笑していた。


 オレの存在に気づいた海賊の一人が、顔色を変えて叫ぶ。

「お前は、何者だ!」


 そして、そのうちの一人がナイフをかざしてオレに向かって突進してきた。


 オレは、迷うことなく攻撃魔法を放つ。

「ファイアボール!」


 オレの放った火球は、海賊の体を直撃し、海賊は吹き飛んだ。

 即死だろう。


 そして、オレはさらに魔法を放つ。

 「ファイアボール!」


 再び、火球が放たれ、別の海賊が吹き飛ぶ。


 食堂の空気が一瞬にして凍りつき、海賊たちは恐怖に顔を歪ませる。


 その中に、斧を構えた大柄な海賊が、オレに向かって突進してきた。


 オレは、持っていた木の盾で斧を受け止める。


 乾いた音とともに、木の盾は真っ二つに割れた。


 海賊は、嘲るような笑みを浮かべる。


 オレは、その隙を見逃さず、攻撃魔法を放つ。

「ファイアボール!」


 火球が海賊に当たり、二人の海賊が吹き飛ぶ。


 その音を聞きつけ、島民の仲間が食堂に入ってきた。


 彼らが武器を構え、海賊と交戦し始めると、オレへの攻撃は少なくなり、攻撃魔法を放ちやすくなった。

 「ファイアボール!」


 「ファイアボール!」


 「ファイアボール!」


 オレは次々と火球を放ち、食堂にいた海賊をほぼ全て倒した。


 オレはさらに奥へと進む。


 廊下には、両側に船員室が並んでいる。


 突然、左側の船員室の扉が開き、一人の海賊がナイフを片手に飛び出してきた。


 船内は狭く、オレは鉄の剣を持っていたが、上手く打ち返すことができず、左腕を斬られた。


 傷口から熱い血が流れ出す。


 鋭い痛みが、神経を駆け抜けた。


 その時、後ろから来たジーノが、素早く槍でその海賊を突き刺した。

「カズー様、大丈夫ですか!?」


 ジーノの言葉に、オレは「助かった」とだけ言い、海賊が出てきた船員室に入った。


 部屋の中には、5人の海賊が武器を構え、待ち構えている。

(さすがに5人を一度に相手するのはきついか……)


 そう思い、オレは海賊たちの前に防御魔法を使った。

「ファイアウォール!」


 オレの魔法で、目の前に炎の壁が出現する。

 狭い船員室は火の壁で塞がれ、海賊たちは逃げ場を失った。


 熱さに耐えられなくなった海賊の一人が、火の壁に突っ込むと、服に火が燃え移る。


 オレは、火の壁から出てきた海賊に攻撃魔法を放つ。

「ファイアボール!」


 必死に火を消そうとしていた海賊は、オレの魔法で吹き飛んだ。


 島民の仲間が駆けつけてきたので、この場は彼らに任せることにした。


 ジーノは、火の壁から出てきた海賊を、次々と槍で突き刺していく。


 オレはさらに奥へと進み、階段を降りた。


 下の階は、巨大な倉庫になっていた。


 そこには、穀物の大袋や干し肉、乾燥した野菜など、大量の食料が積み上げられている。

 酒樽も多数あり、そして武器も豊富に揃っていた。


 盾、剣、槍、斧、弓、そして大量の矢。


 オレは、壊れた木の盾の代わりに、鉄の盾を手に取った。


 さらに進むと、鍵のかかった部屋があり、行き止まりになっていた。

 オレは、バックパックにいるシャムに尋ねる。

「この中に誰かいるか?」


「誰もいないニャ」

 シャムの答えに、俺は首を傾げた。


 おそらく、何か大切なものが保管されているのだろう。


 しかし、今は海賊の殲滅が優先だ。


 この部屋は無視し、オレは再び上の階に戻った。


 上の階に戻ると、島民の仲間たちが、海賊を全て倒していた。


 その時、鎖に繋がれていた島民の一人が、切羽詰まった声で叫ぶ。

「海賊が100人以上、こっちに向かって来るぞ!」


 そしてオレは学ぶ。


〈悪者による悪の所業は際限ない〉


 と言うことを。

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