表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から学ぶライフスタイル 〜第一部 始まりの地〜  作者: カズー
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/62

3話 火の魔法使い

 オレは考える。なぜ、あんな最弱のスライムに負けたのかと。

 そもそも、オレは剣の使い方なんて知らない。そんなド素人が魔物を倒せるはずがない。戦士のジョブがオレには合わない。

 原因は⋯⋯⋯⋯ジョブだ。


 メニューを開き、ジョブの欄をタップする。

[戦士]の他に、もう一つ選べるジョブが表示されている。


[火の魔法使い]――これだ!


 異世界といえば魔法。魔法ならただ放つだけ。剣よりずっとシンプルだ。

 オレは迷わずジョブを[火の魔法使い]に変更する。


 魔法の一覧には一つだけ『ファイアボール』とある。ゲームでよく見る初級の火魔法だ。説明文を見るとやはり思ったとおりだった。

 単体魔法攻撃、MP消費10。

 オレのMPは100だから、十分に撃てる。


 少し恥ずかしいが、オレは両手を前に突き出し、叫ぶ。


「ファイアボール!」


 次の瞬間、手の先から巨大な火球が放たれ、ものすごい勢いで飛んでいった。

 進行方向にあった木に命中し、木を吹き飛ばしながら燃やし尽くす。


 …すごい威力だ。


 メニューを見ると、MPは90/100に減っていた。あと9発撃てる計算だ。


 オレはスライムを倒しに行きたい衝動をなんとか抑え、少し休憩を取る。

 傷薬のおかげか、HPは80/100まで戻っていたが、MPは回復しない。

 まあ、ゲームなら一晩寝れば全回復するし、仕方ないと割り切る。


 そのとき――


 草むらの奥から、ガサッ…と音がした。

 目を向けると、スライムがゆっくりと近づいてくる。


 倒れた木の音に反応したのか、それとも焦げた匂いにつられたのか。

 いずれにせよ、向こうもこちらを認識している。明らかに戦闘態勢だ。


 オレは再び手を前に突き出し、叫ぶ。


「ファイアボール!」


 火球が一直線にスライムへ向かって飛んでいく。

 直撃した。スライムはしぼみながら、霧のように消えていった。


 何も残っていない。


 (スライムを倒した――!やった!)


 オレは歓喜に打ち震えた。

 たとえ最弱のモンスターでも、倒せたことがうれしい。

 何より、魔法で勝てたという事実が、自信につながった。


 まずは一匹。

 オレの中に、次なる戦いへの闘志が燃え上がっていた。


 まだMPは80残っている。ファイアボールはあと8発撃てる。スライムは動きが遅いから、危なくなったら逃げることも可能だ。

 スライムを倒したが、オレのレベルは1のままだ。やはり、レベルを上げない限りオレは強くなれない。

(もっとモンスターを探して、倒さなければ——)


 オレは森の中を歩き出した。

 幸運だったのか、少し進むと目の前にスライムが3匹現れた。まだこちらには気付いていない。

 オレはそっと距離を詰め、手をかざして魔法を放つ。


「ファイヤボール!」


 火球がスライムに命中し、爆発と共に消滅する。ファイアボールは次の一発を撃つまでに少し間が必要だが、スライムは遅い。距離を保ちながら、さらに魔法を重ねる。


「ファイヤボール!」


 ——やがて、3匹とも倒した。

 初期魔法とは思えない威力。一発で仕留められた。MPは50/100、まだ余裕がある。

 (ファイヤボール、実は最強かも)

 メニュー画面を開き、オレは手応えを噛みしめていた——そのときだった。


「ガルルルルーー!」


 突然、獣の唸り声が森に響いた。

 振り返ると、そこには2メートルを超える黒いクマのような魔物が立っていた。

 その目はオレをまっすぐ睨みつけている。

 メニューには『ジャイアントベアー』の名前が表示されていた。


 オレは恐怖で一瞬固まったが、素早く震える手をジャイアントベアーに向け、ファイアボールを放つ。


「ファイヤボール!」


 だが、火球はジャイアントベアーの鋭い爪であっさりと叩き落とされた。

 ダメージがあるのか、ないのか、わからない。

(おい!どうした⋯⋯⋯最強のファイアボールだと思ったのに⋯)

 ジャイアントベアーが地響きを立てながら突進してくる!

 オレは横に飛んで間一髪で避けるが、すぐに鋭い爪が襲いかかる。


「ぐっ……!」


 爪が背中を抉り、激痛が走る。オレは地面にうつ伏せに倒れた。

 まずい。相手が強すぎる。勝てる相手じゃない——逃げるしかない!


 咄嗟にアイアンソードを投げつけ、時間を稼いで全力でその場を離れる。

 ジャイアントベアーは怒りにまかせて追ってくる。重く、速い足音が迫る。それでもオレは全力で走る。追いつかれたら確実に死ぬ。傷が痛いが構ってられない。走って走って走りまくる。


 どれだけ走っただろうか——

 これ以上は走ることは出来ないと思えるぐらい走った。息が切れ、「ゼイゼイ」と息をする。オレは周りを確認する。

 少し先の視界は、崖だ。

 その下は滝壺になっていて、水しぶきが音を立てている。高さはかなりある。

 オレは後ろを確認する。ジャイアントベアーがオレに向かって一直線に迫ってくる。


 (……背後にはあの魔物。もう、迷っている暇はない)


 オレは迷わず、崖から身を投げた——。


 そしてオレは学ぶ。


〈全てに敵うものはない〉


 と言うことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ