27話 冒険者
オレは、冒険者ギルドの受付で冒険者登録をした後、受付の女性の案内で、討伐隊のリーダーに会いに行った。彼はギルド内のテーブルで、仲間たちと食事を取っている最中だった。
受付の女性が彼に声をかける。
「バインさん、こちらは探されていた魔法使いのカズーさんです。今回のクエストに参加されます。よろしくお願いします」
オレも頭を下げる。
「カズーです。よろしくお願いします」
討伐隊のリーダー・バインは、がっしりとした体格で革の鎧をまとった戦士タイプの男だった。年齢は三十代後半といったところだろうか。
「おぉ! それは助かる。ちょうどオレの仲間の魔法使いが体調不良でな。代わりに来てくれて本当に助かるぜ、カズー!」
(気の良さそうな戦士だな……)
オレは受付の女性に礼を言ってから、バインとその仲間たちと共にギルドを後にする。
城塞都市の門の外では、すでに20人ほどの冒険者たちが集まっていた。バインが前に進み出て、全員の顔を確認すると、大きな声で呼びかける。
「オレが今回のクエストのリーダー、バインだ! 任務は魔物の討伐だ。各自、全力で魔物を狩ってくれ! では──出発する!」
冒険者たちが声を揃えて応える。
「オォーーー!!!」
オレは討伐隊の列に加わり、森へと向かって歩を進める。
先頭には身軽そうな男──斥候だろう──が進み、道を案内していた。どうやら敵の位置は事前に調査済らしい。
オレは戦闘に備えて、ジョブを「火の魔法使い」から「戦士」へと変更し、魔法の杖と木の盾を装備する。そしてバインのすぐ後ろについて、森の中を進む。
◆ ◆ ◆
約一時間ほど進んだころだった。
斥候が手を上げて、静かに「止まれ」の合図を送る。全員が息を潜め、草の音さえも聞き逃さぬように身を低くする。
バインが弓兵たちとオレを手招きし、小声で囁いた。
「森の奥を見ろ……ゴブリンどもがたむろしてやがる。数は……百近いか? 奴らに先制攻撃を仕掛けるぞ。準備しろ!」
弓兵たちが頷き、草陰に身を伏せて矢をつがえる。オレも静かに一歩前に出て、魔力を集中させる。
やがてバインが小さく手を振り下ろした。
「──やれ!」
次の瞬間、十数本の矢が一斉に空を切り、ゴブリンの集団へと放たれた。
数体のゴブリンがその場で霧散するが、残りの大多数が怒声を上げながら武器を手に取り、こちらへ突進してくる。
オレは、彼らの密集している中央に向かって詠唱する。
「──ファイアレイン!」
火の粉が天から降り注ぎ、ゴブリンたちの群れに激しく降りかかる。数体が炎に包まれて断末魔の悲鳴とともに消えた。
バインが雄叫びを上げる。
「行くぞー! 突撃ー!!」
彼を先頭に、冒険者たちが雪崩れ込むように前進する。オレも杖を振りかざして前線へ駆け出した。
「ファイアボール!」
火球を放つと、先頭のゴブリンが一瞬で霧散する。バインは大剣を振るい、二体のゴブリンを斬り裂いた。
「ファイアボール!」 「ファイアボール!」 「ファイアボール!」
息をつかせぬ連射でゴブリンを焼き払っていく。
だが、ふと視線を上げると──遠くの木々の間から、さらなるゴブリンの群れが押し寄せて来ているのが見えた。
「リーダー! 後方からさらに魔物の群れが来るぞ!」
バインが舌打ちし、すぐに命令を飛ばす。
「弓兵、後続の足止めだ! 撃て!」
矢が再び空を切り、後方のゴブリンたちに向かって飛ぶ。何匹かは倒れるも、その勢いは止まらない。
オレは一歩前へ進み、両手を広げて詠唱する。
「ファイアウォール!」
炎の壁が地面から立ち上がり、ゴブリンたちの進路を遮る。奴らは炎の熱気に怯え、足を止めた。
その間に、前線のゴブリンを殲滅する。オレは魔法の杖をアイテムボックスに戻し、鉄の剣を抜いて戦士たちと共に斬りかかる。
「ファイアボール!」
火球を一発撃ち込み、続けて至近距離のゴブリンを剣で貫く。二体が同時に霧散した。
その様子を見ていた冒険者のひとりが驚きの声を上げる。
「魔法と剣、両方使えるのか!? しかも魔法の詠唱が早すぎるぞ!」
オレは彼らの驚きなど気にせず、残りのゴブリンの群れに向かって再び詠唱を開始した。
「ファイアレイン!」
火の粉が再び空から降り注ぎ、敵陣に混乱が走る。
「ファイアウォール、消えろ!」
防御の炎を消すと、ゴブリンたちがこちらに殺到してくる。
「ファイアボール!」
一体を焼き、オレは鉄の剣と木の盾を構える。ゴブリンからの木の槍の突きを盾で弾き、剣で斬る。
そのとき──ゲームシステムから《レベルアップ》の音が響いた。
(……上がった。戦士のレベルが上がった……!)
オレは、異世界に来たときに戦士のジョブだったが、剣など使ったことのないオレは戦士を諦めて火の魔法使いにジョブを変えた。
だが、火の魔法で上手く戦士のレベルを上げることができた。そして、オレは今確かに新たな戦士の技を手に入れた。
【戦士:レベル20──回転斬り】
鉄の剣を水平に構え、意を決して前へ出る。
「──回転斬り!」
剣を振るいながら回転し、周囲のゴブリンを一閃する。数体が一気に霧散した。
その技を見ていた後衛の冒険者が、驚愕の声を上げる。
「なんて剣技だ……! 魔法も剣も、どちらも一級品じゃないか……!」
だが、オレは回転したままふらつきながら心の中で呟いた。
(……この技は封印しよう。目が、目が回る……)
◆ ◆ ◆
戦いが終わった。
すべてのゴブリンは討伐され、森は静寂を取り戻した。
火の魔法と剣を併用することでオレは勝利を収めたが、同時に一つの真実を知った。
そしてオレは学ぶ。
〈訓練無くして熟達は出来ない〉
と言うことを。




