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異世界から学ぶライフスタイル 〜第一部 始まりの地〜  作者: カズー
第四章

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26話 新しいこと

 オレとクルワンは、公爵の城を後にして、クルワンの家へと向かう。

 家は城からそれほど離れておらず、街を歩くこと数十分。見えてきたのは、こぢんまりとしていながらも、どっしりとした木造の二階建ての家だった。見た目こそ質素だが、どこか温かみがあって、クルワンの人柄を感じさせる。


 玄関を開けると、夕食のいい匂いがふわりと漂ってきた。中では、奴隷のチャンが夕食の準備をしており、どうやらちょうど出来上がるところらしい。


「おかえりなさい」とチャンが小さく頭を下げて挨拶する。


「ただいま、チャン。何か変わったことはなかったか?」

 クルワンが声をかけると、チャンは手を止めて首を横に振った。


「特に何も。静かな一日でした」

 そう答えながら、食卓に夕食を並べ始める。


 オレたちはテーブルにつき、湯気を立てる食事を口に運びながら、会話を交わした。


「カズー、お前、街の中で行きたい場所はあるか?」


 クルワンの問いに、オレは考える。

(異世界の街で真っ先に行くべき場所なんて、もう決まってる……!)


「師匠、この街には、冒険者ギルドってありますか?」


 クルワンはニヤリと口元を緩めて答えた。

「もちろんあるぞ。……ふふ、金を稼ぎたいってわけか? だがまぁ、お前なら冒険者として重宝されるだろう。お前は魔法使いだからな」


「はい……」

 とりあえずそう答えたが、本音は別にある。

(確かに金はない。でも、それ以上に、冒険者ギルドで仲間を探したい。シャム以外の──)


「明日の朝、冒険者ギルドに行こうと思います」


 そう言うと、クルワンはうなずき、食事を続けた。

 夕食を終えると、彼はオレに一部屋を用意してくれた。小さな部屋だが、清潔で、ベッドと机もあり、居心地が良さそうだ。


 ベッドに横たわりながら、オレは思いを馳せる。


(シャムは、元気だろうか……)


 ──別れは、公爵の城を後にしてクルワンの家の前だ。


「主、僕は他人の家の中には行かないニャ……また会うニャ」

 そう言って、シャムは尻尾を揺らしながら背を向けた。


 その瞬間、ゲームシステムのメニューにポップアップが表示された。


『シャムが仲間から外れました』


 オレは寂しさを噛み締めながらも、また必ず会えると信じて、シャムと別れた。


 ◆ ◆ ◆


 翌朝、オレは街に出て、冒険者ギルドへと向かう。

 出発前、チャンがギルドの場所と目印を丁寧に教えてくれた。どうやらギルドの建物はかなり大きく、ひと目で分かるらしい。


 オレは歩きながら、街の様子を観察した。


 街には活気が満ちていた。

 朝日を浴びて行き交う人々の表情は明るく、道沿いの店先からはパンや焼き菓子の香りが漂ってくる。衛兵たちが巡回し、子どもたちが元気に走り回る──この街の人々は、確かにここで「生きている」のだと実感する。


 オレの胸も、自然と高鳴ってくる。

 冒険者ギルドという未知の場所に挑む興奮と、それに伴うわずかな不安が心を満たしていた。でも、今のオレには魔法がある。

 前の世界で持てなかった自信が、少しずつオレの背中を押してくれていた。


 やがて、冒険者ギルドの建物が見えてきた。


 他の建物よりも明らかに大きく、重厚な造りだ。すでに多くの冒険者たちが出入りしており、剣や槍、防具を身につけた者たちの姿が目立つ。


 オレはその流れに混じり、ギルドの中へと足を踏み入れた。


 中は天井が高く、広々とした空間だった。

 手前にはいくつものテーブルがあり、そこでは冒険者たちが食事をとりながら談笑していた。女性スタッフが皿を運び、香ばしい匂いが漂っている。壁際には掲示板があり、紙がいくつも貼られている。恐らく、クエストの依頼だ。


 オレはその賑やかさに少し気圧されつつも、自分が魔法使いであることを思い出して、まっすぐ受付へと向かった。


 カウンターの一つが空いていたので、意を決して歩み寄る。


 明るい声が響いた。

「おはようございます。御用は何でしょうか?」


 受付にいたのは、金髪の女性スタッフだった。柔らかな笑顔が、不安なオレの心を和らげてくれる。


「おはようございます。冒険者になりたいんですが、どうすれば……」


「はい、かしこまりました。冒険者登録ですね。では、こちらのオーブに手を置いてください」


 差し出されたのは、いつもの魔法のオーブ。


(なるほど、このオーブでステータスを見るわけか。まぁ、嘘をつく冒険者もいるだろうし、当然か……)


 オレは躊躇せずに、手を置く。


 少しすると、女性の口から小さな声が漏れた。


「火の魔法使い、レベル30、魔術師の弟子……凄いわ……!」


(あ、この人、心の声が漏れるタイプだ……)


 やがて彼女は顔を上げて、笑顔で言った。


「はい、ありがとうございます。カズーさん、テン等級になります。ビギナー等級を飛ばしての登録は稀ですが、魔法使いの方は別扱いになります。こちらが冒険者証になります」


 彼女が手渡してくれたのは、小さな鉄製のプレートだった。中央にはオレの名前と、星が2つ刻まれている。★★


「テン等級の方は、クエストボードの依頼書の中から、★2つ以下の依頼を受けることができます。ところで、カズーさん。今日はクエストに参加されますか?」


 少し高揚していたオレは、勢いよく答えた。


「ああ! 今日からやるつもりだ!」


 彼女は笑顔で、1枚の依頼書を取り出して差し出す。


『★★ 魔物討伐』


「都市の近郊に魔物が出没していて、今から討伐隊が出発します。実は、まだ魔法使いの枠が空いていて……ぜひ参加していただけませんか?」


 内容もタイミングも、まさに今のオレにぴったりの依頼だった。迷う理由はない。


「よし、受けよう!」


 彼女に案内されながら、討伐隊の待機場所へと向かう。


 この一歩が、オレの新しい冒険の始まりになる。


 そしてオレは学ぶ。


〈新しいことに挑戦する喜び〉


 と言うことを。

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