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異世界から学ぶライフスタイル 〜第一部 始まりの地〜  作者: カズー
第三章

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21話 襲撃

 オレは、チャンの叫び声を聞くなり、慌てて1階の扉へと駆け下りた。


 そこには、崩れかけた扉の前で必死にテーブルを押さえているチャンの姿があった。扉はすでに壊され、今はテーブルを盾にして辛うじてゴブリンの侵入を食い止めている。


 チャンはオレに気づくと、顔を歪めながら叫んだ。


「カズー、こっちに来て押さえてくれ!」


 テーブルの向こうでは、外から何体ものゴブリンが押し寄せているようだ。ギシギシと木が軋む音、獣のような唸り声が混じって、外の混乱がこちらにも伝わってくる。


 そして、その瞬間だった。


「ドーン! ……グガゴーーン!!」


 雷鳴のような衝撃音と共に、テーブルが内側に吹き飛ばされた!


 凄まじい力により、テーブルは無残にも室内に転がり込み、それと同時にチャンの身体も宙を舞って床に叩きつけられた。


 遮蔽物が消えたことで、外の様子がはっきりと見える。


 入り口のすぐ先には、棍棒を振り下ろした直後の巨大なボブゴブリンが立っていた。周囲には、血に飢えたような表情を浮かべた大量のゴブリンたちが、今まさに突破口を突こうとしている。


(このまま家に侵入されれば、数の差で確実に押し負ける……!)


 オレは迷わなかった。手を前に突き出し、攻撃魔力を放つ。


「ファイアボール!!」


 炎の球が音を立てて飛び、突撃してきた先頭のゴブリンを爆炎の中に消し去る。しかし、後ろにいたゴブリンたちは怯むことなく突入してくる。


「ファイアボール!」


「ファイアボール!」


「ファイアボール!」


 距離が近いため連続で魔法を撃てる。爆炎が次々に敵を焼き払い、室内を赤く照らす。しかし、それでも数は減らない。


 オレは叫ぶように詠唱した。


「ファイアレイン!」


 天井から降るように火の粉が降り注ぎ、群がるゴブリンたちを広範囲で焼き払う。


 だが——


(くっ……入口が範囲外だった!)


 入口の隅から数匹のゴブリンが突破してくる!


「——ぐっ!」


 そのうちの1匹が、手にした槍をこちらに突き出した。鋭い痛みが太ももを貫き、思わず片膝をつく。


 血が噴き出す。激痛で意識がかすむが、オレは歯を食いしばった。


「ファイアボール!!」


 怒りのこもった火球が、槍を持ったゴブリンを霧散する。


 そのとき——


「カズー!!」


 チャンが再び立ち上がり、ククリナイフを手に突進してきた。彼は軽快な動きで、侵入してきたゴブリンを次々と切り倒していく。


 続いて、2階からクルワン師匠が駆け下りてくる。彼もまた魔法で応戦し、ゴブリンたちを次々に撃破する。


 オレは息を荒げながら、防御魔法を使う。


「ファイアウォール!」


 詠唱と共に、入口に巨大な炎の壁が立ち上がった。ゴブリンたちは思わず足を止め、進行が止まる。


(今だ!)


 オレは室内に残ったゴブリンに向かって魔法を放つ。


「ファイアボール!」


 爆発音と共に、最後の1体が灰となって崩れ落ちる。


 そのとき、オレは気づいた。


(3つの魔法が同時に使えている……属性が違えば、同時使用が可能らしい。だが、MPが……ほとんど残ってない)


 息が荒く、視界が揺れる。MPの消耗が激しい。だが、立ち止まるわけにはいかない。


 クルワン師匠が驚いたような目でこちらを見る。


「入口の炎……それに、その連発……カズー、一体どれほどの魔力を秘めておるのだ!」


 その声を背に、オレはある記憶を思い出していた。


(もっと威力のある攻撃は……あれを、試してみよう)


「クルワン師匠、お願いがあります」


「なんじゃ?」


「できるだけ大きな水の塊を、敵の密集地帯に作っていただけませんか?」


 一瞬、クルワンの眉がピクリと動く。そして、挑戦を前にした者のように口角を上げた。


「もちろんじゃとも!儂は水の魔術師じゃぞ!」


 そう言うと、クルワンは外に向かって両手を広げ、魔力を練り始めた。


 空気が震えるような気配と共に、水の塊が宙に浮かび、徐々に大きくなっていく。数秒後には、大人の人間を包み込めるほどの巨大な水球が空中に浮かんでいた。


 額に脂汗を滲ませながら、クルワンが言う。


「どうじゃ! この大きさ!」


「はい、十分です!」


 オレは頷くと、力を振り絞って手を掲げる。


「ファイアボール!!」


 炎の球が一直線に水塊へと突き進む。そして、激突——


「ドッッッガーーーーーン!!!」


 爆音と共に、水が一気に蒸発し、恐るべき水蒸気爆発が起こった。爆風が地を這うように広がり、周囲のゴブリンを一掃する。


 家が揺れ、窓ガラスが震える。だが、オレはそれを見て確信した。


(やった……成功だ!!)


 生き残った数体のゴブリンは、爆風の威力に戦意を失い、尻尾を巻いて逃げていった。


 ——勝ったのだ。


 なんとか、この家を守りきったのだ。


 痛む足を押さえながら、オレは心の中で静かに呟く。


 そしてオレは学ぶ。


〈あらゆる経験が糧になる〉


 と言うことを。

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