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熱血勇者と冷静魔女

これは異世界のお話です。


とある町はずれに、一つの家がありました。

そこには、強い魔女が住んでいました。

彼女の名は『レイハ』 ギルドが認める強い魔女でした。


しかし、魔女はギルドには行かず、薬の調合で生計を立てていました。

何故ならば、彼女は組んでいたパーティに捨てられたからです。


『お前、強すぎなんだよ!!』

『私たちの見せ場をとるな!!』

『お前なんか、いらないわ。』


その言葉を受けた彼女は捨てられ、パーティーを強制に脱退させられました。

ギルドは、そのパーティを罰しましたが、彼女の心は晴れませんでした。

彼女は、誰も信じることができなくなったからです。


今日も、薬を売りに町へと出かけました。

いつもの薬を、薬屋に売り、お金を得て、素材を買いました。


すると、何処からか、石ころがレイハ目掛けて飛んできました。


「やーい! 捨てられ魔女―!!」

「お前なんか、怖くなよーだ!!」


町の子供たちが、レイハに石ころを投げてきたようです。

おまけに、馬鹿にするような言葉まで放ってきたのです。

そんなレイハは、気にすることもなく立ち去ろうとしました。


「こら!! やめないか!!」


何処からか、子供たちを怒る声が聞こえてきました。

そこには、立派な剣と防具を備えた男が立っていました。


「何だよ!! こんな奴、いなくてもいいだろ!!」

「そんなことを言ってはダメだ!! その人が可哀そうだろう!!」


男は子供たちに説教をします。


「うるせー!! バーカ!! ダメダメ勇者―!!」


子供たちは、男の説教を右から左へ流し、男を馬鹿にして去って行ったのでした。

そんな光景を、ポカーンと見ていたレイハは、我に返り、家へと帰ろうとします。


「待ってくれ!!」


男がレイハに声を掛けます。

何のようだろうと、レイハは振り向きます。


「君、レイハだろう? 最強魔女の!!」

「……そんなこと聞く前に、名乗ったら?」

「すまない!! 俺はライクス!! 勇者をやっている!!」


ライクスはレイハに名乗ります。

レイハは、暑苦しい男、と感じていました。


「で、その勇者様が何の用?」






「俺と組んでくれ!!」


ライクスはレイハに、パーティを組んでくれと言いました。

しかし、レイハはそんな彼を無視して、家へと帰りました。

ライクスは追いかけたりせず、彼女を見送りました。




家へと帰った彼女は、早速薬の調合を始めます。


「何だったの、一体……。」


鍋をかき混ぜながら、ライクスの言葉を思い出します。



『俺と組んでくれ!!』


「私はもう、冒険者にはならないのに……。。」


捨てられたことを思い出し、レイハは涙を流します。

涙を拭き、調合を終わらせると、お風呂に入り、そのまま別途へ入り眠りました。


次の日、起きたレイハは、薬を売りに行こうと扉を開けます。


「おはよう!! レイハ!!」


そこには、ライクスが立っていました。

元気に挨拶をするライクスを無視し、レイハは町へと出かけました。

そして、薬を売り、素材を買う、いつも通りの日々を送ろうとしました。

しかし、前と違うのは、ライクスがいることです。


家に帰ると、ライクスが玄関に立っていました。


「レイハ!! 俺と組んでくれ!!」


ライクスは昨日と同じことを言いました。

しかし、レイハはそんなこれを無視し、家へと入りました。


「また来るからなー!!」


そんなことを言いながら、ライクスは去って行きました。

懲りない男、そう思いながら、レイハは薬の調合を始めました。



次の日


「おはよう!! レイハ!!」


次の日


「俺と組んでくれ!!」


次の日


「頼もー!!」



何度もやってくるライクスに、レイハの怒りは頂点に達しました。

扉を思い切り開け、ライクスに告げます。


「私は冒険者にならない!! 二度と来ないで!!」


そう言うと、扉を思い切り閉め、家に閉じこもりました。

しかし、ライクスは去ろうとしませんでした。


「レイハ、何で冒険を拒んでるんだ?」


ライクスの言葉に、レイハは答えようとしませんでした。

何度ライクスが放そうとも、レイハはベットの中に籠りました。


そして、数時間が経った頃、突然の雨が降り始めました。

洗濯物を干しっぱなしのレイハは、急いで取り込もうと扉を開けました。

そこには、ずぶ濡れのライクスと、取り込んである洗濯物がありました。


「あなた、どうして……。」

「だって、ほっておいたら、レイハが困ると思ってさ。」


苦笑いをするライクスに、ため息をつくレイハ。

レイハは、彼にタオルを差し出します。


「……え?」

「風邪ひくでしょ、さっさと上がって。」


レイハはライクスを家に上げました。


「洗濯物、ありがとう。」

「どういたしまして。」

「だからといって、貴方とは組まない。」


礼を言いながらも、レイハはライクスとは組まないと言います。

ライクスはもう一度尋ねます。


「レイハはどうして、冒険者をやめたんだ?」


ライクスの言葉に、レイハは下を向きます。

そして、顔を上げ、これまでのことを話します。


彼女は生まれながら、魔力の強い子でした。

いろんな属性に愛され、その代わりに、人からは嫌われていました。

理由は、最強だからです。

彼女が魔法を放つと、どんな魔物も簡単に倒してしまいます。

仲間からは、嫌われ、追放を受けてしまいます。

ギルドはソロ提案しましたが、彼女の心は閉ざされたのでした。


「これが、私が組まない理由。」

「そんなことが……。」


レイハのことを知るたびに、ライクスの口数は減っていきました。


「わかったら、ここから……。」

「レイハ、俺と組んでくれ。」

「……はぁ!?」


レイハが、帰るように促すと、ライクスはもう一度組もうと言いました。

そのことに、レイハ声を上げて驚きました。


「あなた、さっきのこと忘れたの!?」

「だからだよ。」


レイハが怒ろうとすると、ライクスは立ち上がります。


「俺さ、勇者になっても、誰からも認められなくてさ。」


ライクスは語ります。

自分は貧相なところから来たと。

周りは誰も助けてくれず、いじめられていました。

とある日、王国からの使者がライクスのところに来ました。

彼には勇者の証がある、その力で魔王を倒してほしいと。

ライクスは、家族と一緒に王国へ連れていくことを条件に、勇者になりました。

しかし、勇者になっても、周りは認めず、誰もライクスとは組もうとはしませんでした。


「ということがあってさ。」


ライクスは苦笑いをし、椅子に座りなおします。

その話を聞いたレイハは、驚きの顔を隠せませんでした。

自分と似たような不遇に、会うのでしたから。


「魔王を倒して、世界が平和になったら、皆認めてくれるかなって。」

「……そう。」

「だから、頼む!! 俺と組んでくれ!!」


そして、冒険に出かけよう!!


ライクスは頭を下げて、頼み込みます。

レイハはため息をつき、立ち上がります。


「わかった、組んであげる。」

「本当か!?」

「ただし、嫌になったら、速攻で解消だからね。」

「よっしゃー!!」


こうして、熱血な勇者と冷静な魔女のコンビが組まれました。



「はぁぁぁぁ!!」


ライクスが、魔物を倒します。

レイハは残った魔物と、ライクスの援護をします。


「ナイス!! レイハ!!」

「いいから!! 前を見なさい!!」


こんなゴタゴタがありながらも、二人はどんどん活躍していきました。

ギルドも、二人の活躍を見て、ランクを上げました。


そして、時は過ぎ、とうとう魔王討伐まで来ました。


「やばい、体が震える……。」

「ここにきて、怖くなった?」

「いや、これは武者震いだ!!」


ライクスの言葉に、レイハはクスっと笑います。

そして、魔王の待つ部屋の扉を開けます。



「よくぞ来たな勇者よ。」


ライクスとレイハの目の前に、魔王『グレイス』が玉座に座っていました。

グレイスの覇気に、二人は圧倒されます。


「魔王グレイス!! お前を倒しに来た!!」


ライクスが剣を構え、レイハも杖を構えます。

グレイスは、まぁ待てと二人を落ち着かせます。


「お前たち、我が軍に入らぬか?」

「何?」

「お前たちは強い、我が四天王を倒してします力、ここで失うのは勿体ない。」


何と、グレイスは二人をスカウトします。

その答えに二人は――


「「断る!!」」


「ならば仕方ない、ここで消えろ!!」


こうして、魔王と勇者、魔女の戦いが始まりました。


グレイスの攻撃をライクスが受け止め、レイハが強力な魔法を放ちます。

魔法を喰らったグレイスは、何もなかったかのように、服を払います。


「噓……!!」

「お前、邪魔だな。」


グレイスがレイハに向けて、闇の魔法を放ちました。

魔力を多く使い、動きが遅くなったレイハは目を閉じてしまいます。


「レイハ!!」


レイハの前にライクスが立ちふさがり、魔法を受けてしまいました。


「ライクス!!」


煙が張れると、そこにはライクスが倒れていました。

体中から血が流れ、ヒューヒューと声が漏れていました。


「どうした? まだやるか?」


グレイスの言葉に、恐怖を感じたレイハはワープの魔法で、城から脱出しました。





「ライクス、ライクス……!!」


ボロボロのライクスに、回復魔法をかけますが、魔力が少なく、回復しません。


「レイ、ハ……。」

「ライクス……?」


ライクスは最後の力を振り絞り、レイハと話します。


「俺達、色々あったなぁ……。」

「もういい、喋らないで……!!」

「色んなところに冒険して、沢山敵を倒して、喧嘩もしたよなぁ……。」


ケホッと血を吐くライクスの手を、レイハは握ります。


「レイハ、俺と組んでくれて、ありがとうな……。」

「ライクス……!!」








「大好きだぜ……!!」


そういうと、ライクスから力が抜け、そのまま目をつむってしまいます。


「ライクス、ねぇ、起きてよ、ライクス!!」


レイハが何度呼びかけても、何度揺さぶっても、ライクスは起きませんでした。


こうして、熱血の勇者は永遠の眠りについたのでした。




時は流れ、一人の女性が魔王の前に現れました。

ローブを被り、どのような顔をしているのかわかりません。


「ほう、その剣、あの男の剣か。」


グレイスの言葉に女性は答えません。

そして、グレイスは前と同じ質問をします。


「どうだ、我が軍に入らぬか?」


その答えに、女性はローブを外し、答えます。


「断る。」


ローブを外した姿に、グレイスは驚きを隠せませんでいた。


「貴様!! あの時の魔女か!!」


女性、いや、レイハはライクスの剣を持って、グレイスの前に現れたのでした。


「そう、この剣はお前を倒すために鍛えなおした、最強の剣だ!!」

「よかろう!! 我を超えてみせよ!!」


こうして、魔法剣士となったレイハはグレイスとの対決に挑みます。


ここからのページはありませんでした。


最後はどうなったかって?

それは、誰にもわかりません。


一つわかることは、勇者の墓に剣が供えられていたということだけです。


おしまい。

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