第四話 殻の中には綺麗な真珠
紗希さんとアニメイトで一通り語り合い、買い物もしたところで戻ることにした。縁達は一足先に戻っていた。「早かったね。どうだった?」と僕が縁に聞くと「……え…?うん!楽しかったぞ。だいぶ…うん」なんとなく歯切れが悪い。いつもはこんなんじゃないんだが。「なんかあったか?」心配になったから聞いてみた。「い、いや?なんもないよ!強いて言うなら奈々ちゃんが連れてってくれた神社がちょー綺麗だったってことくらい!」嘘だ。じゃあなんでそんな顔色悪いんだ。後で聞こう。俺が縁と話てる間、紗希さんが奈々さんに嬉しそうに俺と語り合ったことを話していた。奈々さんはてきとうに会釈しかしていなかったが、多分疲れていたんだろう。「帰るか」僕がそう3人に言うと紗希さんは駅が途中まで一緒だからついていくと言い、奈々さんはそのまま歩いて帰るそうだ。縁も僕についてくるらしい。帰ってる途中でさっきのことが気になって少し紗希さんに耳打ちした。「縁どうしたのかな…なんか元気ないように見えるんだけど。」すると紗希さんは、疲れて俺の隣で俺の肩を枕にして寝ている縁を確認してから、「そうですね…なんか最後おかしかったですね。なんだか奈々ちゃんもおかしかったですし…」そう言えばそうだ。奈々さんもおかしかった。何か悲しそうに、だけど怒っているかのように、そして嬉しそうに?していた気がする。普通の人間は一気に3つの感情を面に出すことはない。あるとすれば宝くじが当たったが、それを人にぶつかった拍子に落として、さらにそれが燃えたりでもしなければあり得ない。「少しそっちからも聞いといてもらえる?こっちからも聞いとくから」とにかくその時は縁が心配だった。猫にも縋る気持ちだった気がする。「わかりました。私は奈々ちゃんに聞いてみますね?」なんかダメな気がする。奈々さんに聞くのはなんかダメな気がする。「いや、奈々さんはダメだ。なんか嫌な予感がする。ダメな気がする。」すると呆れたように「牛歩さん…そう言う時期なのはわかりますけど、それに人を巻き込むのは…」と紗希さんに言われた。なんだかダメな方向に勘違いされてしまったようだ。「あ、いや、違うんだ…実はカクガクシカジカで…」紗希さんにはこれまでのことを全て話した。「それはダメですね…すみません。勘違いしてしまって…」勘違いするのもおかしくない。普通、何も事情を知らない人からしてみれば厨二病だ。「いいんですよ。仕方ないです。」その後も少しの間申し訳無さそうな顔をしてたが、俺がアニメの話を持ちかけるとすぐ笑顔になってくれた。すると駅の名前を読むアナウンスが聞こえ、紗希さんは私ここなんで!と言って降りて行った。ひとまずLINEだけは交換できてよかった。縁に何かあった時に協力してくれるだろうから。「ん…」あ、起きたかな?ちょうど良いタイミングだ。ちょうど自分たちが降りる駅だったからね。「おはよ。おきるよ。」声をかけると眠そうに目を擦りながら、立って着くまでじっと待っていた。そして駅の改札を通り、自分たちの家まで足を運ぶ。時刻はすでに5時半を過ぎていて夕陽が綺麗な時間だった。日が沈みかけているとはいえ、まだ暑い。汗をかきながら2人で歩く。目が覚めきったのか縁が「今日はありがとうな。付き合ってくれて。」と言ってきた。「別に良いよ。僕も楽しかったし、君がくれた桜餅美味しかったし。」そういうとすこしはにかみながら「ありがとうw紗希、どうだった?良い子だったろ?」僕は少し笑いながら、「うん。めっちゃ良い子だったよ。アニメ好きだったのは意外だったけど。」そういうと縁は少し不服そうに「私とのデートとどっちが良かった?」と聞かれたが、僕は即答で「君かな」と答えることができた。縁は少し照れていたが、すぐに我に返ったかのように笑顔は消え、暑い筈なのに顔は青白くなった。「おい、大丈夫か?やっぱりなんかあったろ?言ってみろよ」とにかく心配だった。こんなにいきなり人の感情は変わらないし、本当に体調が悪そうだったから。だけど縁は、「大きなお世話だよ。大丈夫だ。ずっと歩いたから疲れただけだ。」ずっと歩いただけじゃ感情はそんなすぐ変わらん。でもこれ以上聞けばウザがられると思ったから俺はそうか。と言って話題を紗希さんと話したことに切り替えた。その日は家に帰った後、縁のことで頭がいっぱいだった。心配で心配で仕方がなかった。だけど何もできない自分が憎かった。その後の夏休みはあっという間に過ぎていき、二学期が始まった。だが、二学期が始まってからと言うもの、縁は体調とかがどんどん悪くなっていっていたように感じる。学校を休むことも増えた。僕と紗希さんとで相談して縁の家にお見舞いに行ったが、出てくるのは縁ではなく縁のお母さんだった。お母さんが出てきては、会えないの一点張り。そして二学期の中間テストが終わる頃には縁は学校に来なくなっていた。僕らは毎日縁の家に行った。雨の日でもお構いなしに。流石に台風の日は紗希さんは行けなかったが、僕は気合いで行った。縁のお母さんがとても心配して車で僕の家まで送ってくれた。その日は親にこっぴどく怒られた。台風が過ぎて、怒られる心配がなくなり、僕と紗希さんは毎日家に行ったが、やはり出てはくれなかった。そして徐々に季節は過ぎていき、受験生の僕らにとって最も大切な期間である、受験期間が訪れた。それでもやっぱり縁は学校には来ない。そして縁がいなくなって起こったことがいくつかある。僕は突如として女子に話しかけられるようになった。僕は大体はてきとうに返して大体は紗希さんに助けてもらう。「大丈夫?牛歩さんなんか、やつれてきてませんか?」その頃の僕は体重が5キロ減り、白髪が1本生えていた。病院に行き、診断してもらうと、ストレスによる突発的な軽いPTSDだそうだ。PTSDが何かは知らないが、とにかく僕には確実に良くない変化が起きていた。そしてとうとう僕も体調を崩した。熱が39度出た。頭が痛い。吐き気がすごい。結果としてただの風邪だったらしいが、1週間熱が治らなかった。直って学校に行った時に真っ先に話しかけてきたのは紗希さんではなく、奈々さんだった。「大丈夫?お見舞い行けなくてごめんね?直って良かったね!」と言ってきた。正直僕はとてつもなく腹が立った。縁が体調を崩したときは何も言ってこなかったくせに。お見舞いになんて行こうとも思ってないくせに。嘘つきが。僕のメンタルは限界だった。それでも絶対に縁の家には行った。そしてやっと、「牛歩君だっけ…縁を助けてあげて。お願い。私達には無理だったから」と言われた。すぐに紗希さんに連絡した。紗希さんは塾だったのに無理矢理休んでまで来てくれた。そして縁の部屋に続く階段を登り、縁の部屋のドアにノックした。「縁?おい、縁!大丈夫か?何があったんだ!俺たちに教えてくれ!」「そうだよ!縁ちゃん!お願い!出てきて!いきなり連絡できなくなっちゃって、学校にも来なくなって!何か言ってくれたって良いじゃん!」2人で必死に呼びかけるが出てこない。声も…聞こえない。息をする音しか。僕は無意識のうちに一人称が僕から俺に直っていることに気づいていなかったが、今はそんなことどうでも良い。「縁」僕はそう静かに呼ぶ。出てくるはずもなく。「縁…2年の夏休み覚えてるか?一緒に花火みに行ったよな。君の浴衣姿が可愛くて何回も君に見過ぎってからかわれたよね。」たんたんと、だけど思い出を宝物のようを紹介するように。「2年の冬、クリスマスプレゼントの交換したな。俺、実は君が何が欲しいかわかんなくてさ、自分のおねぇちゃんに頭下げて協力してもらったんだ。でも最終的にはちゃんと自分で選べたんだ。」少し自分の体験したことを面白く、彼女が笑えるように、彼女に届くように。「結果的に君はすっごい喜んでくれたな。俺も嬉しかった。君が、いや縁が俺のために頑張って考えて、買ってきてくれたマフラーと手袋。あれすっごい嬉しくて、家でも着けてたら母に嬉しいのはわかるけどキモイぞって言われたんだ。」部屋から少し、少しだけ笑う声が聞こえた。「その後一緒にご飯食べたな。焼肉行って縁があまりにも美味しそうに食べるから奢っちゃってさ。俺の5年間分のお年玉が消し飛んだこと覚えてる?あの時縁はめっちゃ笑ってたね。俺にとっちゃ笑い事ではなかったけど、縁が笑ってくれたおかげで俺は笑えた。」自分の頬に一粒涙が垂れ落ちる。紗希さんはもう号泣だったけど。構わず続ける。「僕は、縁、君がいないと笑えない時に笑顔になれない。君がいなきゃ笑えることが笑えない。君がいなきゃ楽しめない。もしかしたら俺は君がいなきゃとっくに死んでたかも。俺には縁がいなきゃダメなんだ。だから出てきてくれよ。また一緒に笑おう?また一緒に楽しもう?それ以外のことなんてどうでも良いから。僕はずっと君の側にいるから。僕は君を1人にはさせないから。」「私もだよ!縁ちゃん!ずっと一緒にいるから!お願い、戻ってきて」もう2人とも、いや、3人とも涙でぐしゃぐしゃだった。そして扉がガチャっという音をたてて開いた。縁は泣いてたけど笑ってて、ちょっとだけ怒ってもいた。多分、宝くじに当たってその後に人にぶつかった拍子に宝くじ落として燃えたんだろうな。出てきた縁はそれでも美しかった
間話 作者のヒトリゴト
第四話どうでしたでしょうか。長かったぜ…書き終わらないかと思いましたよ。これを書いてる時刻は2時になりかけの1時なんですが(午前)とても眠いです。でもおもろいのでもっと書きます。牛歩が言ってた出来事は僕の友達の人たちに聞いてかき集めて、そのあと脚色してアレンジしたものです。クリスマスプレゼントつけ過ぎて親にキモいと言われたのは作者の実話です。ただ貰ったのは牛歩と縁のような関係の子ではなく、普通に仲のいい友人みたいな人からでしたが。縁のこの状態についてなんですが、実は二章を書いてる時点でこうすると決めてありました。一回はヒロインに酷い目にあってもらおうということです。僕はいつになったら現在編を書けるのでしょう。ちょっと後悔。紗希さん、いい子ですねぇ…後々この子についても触れていきたいと思ってます。皆さんは実際にこんな子いたらどうしますか?僕は多分仲良くはなれるけど恋愛まで発展しなさそうです。あと補足。牛歩と縁は付き合ってません。ちなみに…このシリーズ、実は溜めてたものを投稿しているので、今現在書いているなろう系と書き方が違いますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。それでは




