隠し扉の日記
少しホラーを匂わせる表現あります
「痛ってぇ…なぁ!もう」
後頭部を強打した
いや、後頭部どころじゃないしなんかもう背中とか頭とかがすごい痛い
もう大人と言われる年なのに痛すぎて泣きそうだ
骨折や大きな怪我を経験してこなかった代償が今ここに
でも、存在すると思ってた壁に全力で寄りかかった結果、急に壁が消えるなんて予想できないだろ普通に
じんじんする痛みを無視して起き上がり左右を見ると、いつもとは違い若干劣化した壁があった
前はまぁいつも通りの家
ようやく痛みが落ち着いてきたので、立ち上がって振り返ると通路みたいな道が続いていた
奥は暗くて良く見えないが、そこまで長い通路ではなさそうで照らせばすぐに見えるだろうと予想できた
長いこと住んでいる家なのに、隠し通路があるなんて一度も聞いたことがなかった
なぜ急に壁が消えたか、なぜ誰も教えてくれなかったのかは謎だったが好奇心に従ってスマホのライトをつける
少し進むと急に周りが暗くなった
後ろを振り向くと最初から閉まっていたかのようにジメジメした壁があるだけだった
「まじか…」
一瞬どうしようか悩むがスマホの充電はあるしすごい怒られるだろうが最悪、強行突破もあるだろうし
何より好奇心が勝っていた
「…おぉー…なんだろ…?……日記か?」
奥に進むとすぐに簡易的な椅子とテーブル、そして日記と蝋燭が置いてあった
蝋燭は灯り用だろうか
こういった持ち運びができる銀の匙みたいなやつを映画で観たような気がする
ジメジメした雰囲気も相まって、なんとなく牢獄を思わせる無機質さがあった
その中に日記があるのがすこし不気味だな、とぼんやり考える
「…は、?…っ、うわっ……え、なにこれ?」
日記だと思っていたものをめくると、写真と詳細な情報が書かれていた
履歴書みたいだがそれにしては内容が不気味だ
名前と生年月日、趣味思考パターンまでは気色悪りぃなで済む
いや済ませたくはないけど、その後が不気味すぎるから最初がかわいく見えてくる
「凶器、方法……っうわ、え、内容グロくない?えぇー……こわ…」
恐らく殺害に使われる凶器名とその方法が細かく載っていた…怖すぎるだろ
方法がエグくてグロい上に、妙にリアリティがあってより恐怖感が募る
とりあえず出よう
やばい人がここにいた可能性高いしめっちゃ怖い
そう思い日記を持って引き返すとスマホの電気がふっと消える
周りが一瞬で暗闇に包まれ、恐怖で内心は大パニックである
「…!…〜!!…こんなところでいつまで寝てるの!」
母さんの怒声で飛び起きた
「は、え??」
「え、じゃないでしょ!こんなところで寝てたら、体痛めるでしょ。全く寝るなら自分の部屋行きなさいよ」
母さんに促されて流されるまま、自室に戻る
夢?どこまでが?
結局、あの不思議な体験の後もなんの変化もなく数日が過ぎ、なんとなく家族にも聞けずじまいだった
ふと思いついて日記に出てきていた人は無事なのか気になり、スマホで調べてみた
フルネーム、しかも漢字で書かれていて覚えていた1人を検索してみる
もし実行したならかなり酷い死に方だし、事件になっていてもなんら不思議ではない
「……え、は??…さつじん、き?」
フルネームと顔写真付きで出てきた人物は、確かにニュースになっていた
俺の地区から遠いからそれほど知らなかったが、3年前に連続殺人鬼として捕まった、そう確かに記されていた
その殺害方法凶器は日記に書かれていたもので、もしかしてと思い当たり、日記のもう1人を調べる
正直こちらはペラペラ見ただけだったからあまり覚えていなかったが、何度も検索をかけるとやっぱりニュースになっていた
ーーー連続殺人鬼として
そうか、あの場所はあの日記には加害者が記されていたのだと確信した
あの不思議な場所はなんだったのだろう
でも一つ確信があった
神様は信じていないがなんとなく俺の役目を理解している
すこし時間が経って落ち着き、思い出したことがある
ーーー最後に記されていた顔写真は、俺の幼馴染に良く似た人物だった
彼女はまだ捕まっていない
しっかり見る時間もなかったが、これから彼女に接触してこの仮説が正しいか確かめる必要があるだろう
「俺も被害者にならないといいな、…」