5調査委員会(4)
いつの間にか忍者大戦である。
僕の左手からは間違っても雷と閃光は出ない。
いやそうではない。
これは一種の心理テスト的なものであろうかという考えが頭をよぎる。
自分を物に例えるとするならば何ですか?代表されるようなここで今聞く必要が本当にあるのかといった質問のことであり、まるで関係なさそうな質問をぶつける事により回答者の機転の良さや、なぜその答えに至ったかを答えさせ、これまでの経験から自分には何ができるのかを答えさせるいわば意地悪問題である。
「加えると私の忍者は無論電気にも強い」
そういった類のものではなさそうですね。
これは大真面目に空想上の忍者について語り合おうとしている顔だ。
ということであれば何が目的の質問か、その答えはずばりこれであろう。
人としてのノリの良さだ。
学生の中心となってイベントごとを引っ張り成功に治めるためには真面目だけでは勤まらないということなのではないか。
ただ毎年毎年同じことの繰り返しでは何の成長も面白みも得られない、ここぞとばかりに大胆かつ突飛な意見を忌憚なく発することの出来る人材を自治会では欲しているのではないだろう。
よしそうと分かればこちらの土俵である。
幼少より連綿と続く我が妄想の力を思い知らせてやろう。
「お言葉ですが先輩。僕は空想の忍者を単体で走らせることは致しません」
「ほう。単体ではないと」
「はい。僕は忍者にはそれ相応の敵対組織が必要と考えています」
「走らせている忍者に対して敵キャラを配置するということか」
「そうです。ですが敵キャラだけではなく、残機アップやパワーアップアイテム等をそこかしこに配置し、最初は弱かった忍者を強化し誰にも負けない強さを表現することを主体としています。言わばゲームのような体験をしております」
「それはおもしろい!その考えはなかった。私の忍者は常に強者であり出てきたものをなぎ倒すチート忍者であったが、あえて弱者を演じるとは、なかなかやるな」
「ありがとうございます」
間違っていなかった。僕の予想は当っていたらしい。己が妄想、空想、想像力に物言わせ自治会に新たな風を吹きすさぶ人材を欲しているに違いない!
「では次の質問だ」
「はい」
「高校の文化祭を妄想したとき君は何をしている」
「ギタリストでございます」
「天晴」
その後も僕の口はとどまることを知らなかった。
妄想上では宇宙創生以来の天才ギタリストであった僕の想いを垂れ流し、教室にやってきたテロリストをなぎ倒す僕、新しい数式を発見する僕、論破の達人である僕、果てはノーベル賞を受賞した。
「はっはっは!君は面白いやつだ!よくある妄想と突飛な発想を混ぜ合わせたまごう事なきオリジナリティの組み合わせ、実に愉快だよ私は」
そういうと彼女は勢いよくコートを翻して立ち上がった。そして背を向けたままの姿で一言、
「よろしい」
と言い放った。
「新入生くん。君を学生自治会員として認めよう」