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第三十四話 起源今滅

「開闢者、起動」

―あー、一つ言うとお主は「救世主」になったことで、男へ戻ることは不可能となったぞ―

はっ…だから?

私、いや、僕、いや、俺は…俺は!

体が女になった?精神が女に近づいた?人間じゃなくなった?だからなんだ!

俺は小池樹、それが俺だ!


俺は…自分が何者かは自分で決める!!!






樹さんをダムにぶち込んで5分ほどが経ちましたが、彼女が上がってくる様子はありません。

「もう、無理でしょうね、止めを刺してしまいましょう」

結局、樹さんほどの逸材でも世界は救えませんでしたか

「さて、エルダー…」

そう唱えようとした瞬間。


―ズバッン


突如ダム湖に大穴があく、水に穴が開く?

そして穴を覗いてみて、僕は…視た。

水の壁に囲まれた穴の中心、いや違う、水が穴の中心を避けているのだ。

穴の中心には少女が立っていた。

肩まで伸びた白銀の髪の毛、そして虹色に輝く瞳と、同じく虹色に輝く3対の翼。

「樹…さん」

「ああ、俺だ、俺たちだ…空狼」

僕は勝手に体が震え始めます、彼女の放つオーラは彼我の存在としての格の違いをこれでもかと伝えてくるのです。

ああ、そうです、彼女はおそらく、管理者なんてチンケなものではなくもっと、もっと上の存在に…なったのでしょう。

ああ、ああ、ああ!ただ、ただ、ただ!素晴らしい!



なぜか感動に打ち震えている空狼を無視して突撃する。

「くっ」

私は翼を空狼に叩きつける、奴は剣で防ごうとしたが

「ぐあああああ」

なにもできずに直撃を受け吹き飛んでいく。

救世主スキル「開闢者」すなわち始まりを制御する能力、相手はスキルを起動、つまり始めることすらできなくなり、私は無限の可能性から自由に始めることができる。

―ふむ、そこまでしておいて無手で戦うというのも悲しいではないか―

でもなー、俺の今の力に三笠が耐えられないだろうし。

―それなら問題ない、憂国の使徒から、とりあえず武蔵刀を借りるのじゃ!―

なぜに?…まあいいか、三笠の言うことだ、やってみよう。

「憂国の使徒、刀貸せ!」

「おうよ!先輩殿!受け取れ!」

俺は飛んできた武蔵刀を受け取る。すると武蔵刀は俺の体の中に吸い込まれていく。

―「開闢者には統合前のスキルの能力も備わっておる、それを使ってさる国の国民の一億強の願いをわしと武蔵刀に注ぎ込め!―

なんかよくわからんが!了解!

俺はそのまま2本の刀に1億強の願いを流し込み。

―さあ、引き抜けわしの最終形態「草薙」を!―

「来い、草薙!」

すると俺の目の前に緋色の刀身をもった美しい刀が現れる。その柄を掴む。

おお、なじむな。

―草薙は4次元、つまり空間と時間すら切断するぞい!―

4次元時空すら切り裂く刀、まさに今の俺にぴったりだな。

…じゃあさっさと行くぜ

立ち上がった空狼めがけて切りかかる、それを空狼は剣で受け止めようとするが…

空狼の剣が草薙に接触した瞬間、空狼の剣は断ち切られ、その勢いのまま草薙は空狼の片腕を切り飛ばす。

「ぐ、ニュークリア…なっ起動しない!?」

開闢者能力だ、私相手ではどんなスキルも使用できない。

これ以上長引かせる必要はないな

…これで、決める。

俺は空狼の心臓めがけて放つ

開闢者の力をすべてを込めて、一点に


「…起源今滅」


全てのものには始まりがある、超越者たる空狼の核を滅するために、その始まりを滅ぼす。


―ズバン


そのまま空狼の心臓を貫き、奴を木に磔にする。

「ガハっ」

「チェックメイトだ、空狼」

「…ええ、そのようです」

空狼の核、スキル「超越者」は始まりを滅ぼされ、存在しなかったことになった、核を失った空狼は…このまま滅びる。

「最後に言い残すことは」

コイツは世界を守るため数年で死ぬことを前提に生み出された存在。最後になにか言いたいことがあれば…

「ありがとう…ございました」

「…は?」

「…僕は…春樹として…あなたから多くのものを授かった、ただ死ぬだけの僕の人生でそれは、それはとても大切な物でした」

「春…樹…?」

「だから…ありがとうござい…いや、ありがとう、樹姉…さん…僕は少しの間だけ、幸せ…でした」

「…」

「さよう…なら」

そうして空狼は、春樹は風化するように崩れ去っていった。

「…ああ、さようならだ」


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