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第十六話 春樹の処遇とパーティー名

「困っておる様じゃな?」

「「「!?」」」

突然、老人の声がして全員が振り向くとそこには60台半ばの頃と思われる男性が立っていた。

「後藤会長!」

おっさんがあわててそちらにむかう

後藤会長?たしか探索者協会をつくったっていう、例の人?

「後藤会長、なぜここに」

「なに、見目麗しい少女が何やら困りごとを抱えているというではないか」

見目麗しい少女?…え、私の事?

…ちょと、恥ずかしい……てっ!?私は何をッ!

…やべぇこれが代償を支払った影響か…?早急に男に戻らねぇと本格的に女になっちまう。

ていうか

「…会長とやらまでロリコンなのか」

…もう変態は間に合っているんだが

私がぼそっと言うと

「ちがうぞ?わしはどんな年ごろの女性であろうとレディとして扱うと決めておるのじゃ」

訂正、どうやら軽薄な爺さんらしかった。

「で、困っておるのじゃろう、春樹君の処遇を巡って」

「会長…そこまで聞いておられたのですか…」

おっさんが呆れている。

「盗み聞きしておったからのう!」

自信満々に言うな

そんな話をしていると、突然

「まぁーて!春樹君なら私が預かるよ!」

話に割り込んできた姫川は言う。

「…なぜ?」

一条が厳しい顔で問う

「私と春樹君って戦闘での立ち位置がまあまあ似てるでしょ?私は攻撃主体だけど…預かっている間に色々と指導できるよ!」

そうなのか?

「なるほどなぁ」

一条が関心したように呟いている。

…姫川はただの変態ではなかったのか

「指導…そう、二人屋根の下でかわいい男の子に対して色々と指導…グヘへへへへ、へがはッ!」

―バス!

「死ね!ショタコン変態女ぁあ!」

姫川の顔面に一条の拳が叩き込まれる。

訂正、姫川はただの変態だ

「ひゃぎゃああああ、」

情けない声を上げて顔を抑えうずくまる姫川

「…なぁ」

「…何も聞くな」

一条が疲れたような表情でそう呟いた。

…とりあえず春樹を姫川に預けるのはなしだな、色々と危ない。

「で、後藤会長は何をしに来たんですか?」

「ふむ、姫川君は相変わらずじゃのう…何、簡単じゃわしが春樹君を預かろう」

「後藤さんが?」

一条が訝しげに問う。

「ああ、そうじゃ、わしが教育して、執行使徒どもとの戦闘で…まあ足手まといにならないぐらいにはしてみせようかのう」

この爺さんが春樹を教育するのか、うーん。

「樹、後藤さんは軽薄な爺さんだが、こと教育に関してはマジだ…俺は任せてもいいと思うぞ」

「僕もそう思うよ」

一条とおっさんが言う…ふむ、一条は口は悪いがなんだかんだ世話焼きな人間だし、おっさんは…まぁ信用できる。

では、後は…

「二人がそこまで言うのなら、あとは春樹次第だな…」

「それなら大丈夫じゃ、春樹君は樹君しだいだといっておったぞ」

…準備がいいな爺さん、まさか春樹と話し合いを終えてるなんて…盗み聞きというか、そもそもこうなることを予想して動いていたのか…?

「…じゃあ決まりだ、爺さん…いや後藤さん、春樹を…頼む」

「あいや、任されたぞ」

爺さんは自信満々にそう言う。

なにあともあれ、これで春樹の処遇が決まった。…人様の子を勝手に他人に預けるのは罪悪感があるが、まあ、背に腹は代えられない、か






その後、用事があるらしく、爺さんとおっさんは一緒に病室から出ていった。

「よし、ガキの処遇が決まった、次は俺たちについてだ」

「…私たちか?」

「ああ、そうだ…姫川ッ!いつまで蹲ってやがる!話し合いはじめんぞ!」

「いつつ、もー、一条君、女の子の顔面を殴るなんてありえないんだけど!」

「お前が変態すぎるのが悪い」

「ふんだ、そんなんだからいつまでたっても童貞なんだよ、一条ぐばしゃっ!」

姫川の顔面にけりが叩き込まれる。そしてそのまま地面に倒れこむ姫川

「…そうか、お前、俺に殺してほしかったのか、なら…」

「まままてーて、はいはーい調子に乗りすぎました、さーせん、殺さないで!」

「いつまで、この夫婦漫才もどきを見てればいいんだ」

私は呆れながら言う。

「「夫婦漫才じゃない!」」

息ぴったりじゃねぇかお前ら。


閑話休題


「はぁとにかくまずはパーティー名を決めねぇとな」

「パーティー名?」

「協会に申請するとき必要なんだよ、樹ちゃん」

姫川が答える。なるほどね

「えーと、目つき悪い男に、変態女に、男前なナイスガイだから…」

「前者2つはまあわかるが、男前なナイスガイ?」

「まって、樹ちゃんの中では私は変態女なの!?」

誰の中でもお前は変態女だよ

「男前なナイスガイとは…私のことだ!」

「なぜ自信満々に…お前はどちらかというとサ〇ゼリアの壁に描かれてるやつだろ…つーか、その前に女だろ」

「誰が天使だ」

私はツッコミを入れる、全く、誰が天使だ…あれ?天使?…もしかし誉め言葉?

「あーもう、話がぐちゃぐちゃだ…とりあえず一人ずつ案を出していこうぜ」

一条が言う

と、姫川が

「はいはーい、じゃあ、「ハーレムナイツ」とかどうかな!」

「俺への風評がとんでもねぇことになるから却下だ、そもそも俺は姫川を女としてみてねぇ」

「あ、ひーどーい…でも、じゃあ、樹ちゃんは女としてみてるんだー」

「…樹はな、お前みたいな変態じゃねぇし、言葉遣いは荒いが礼儀は心得ているかな」

「…」

なんだろう、めちゃくちゃはずい

褒められるのには慣れてねぇからな、私…いや女として褒められてんじゃ私的になんかダメな気がする!というかなんかじゃなくて普通にダメだ!

「クソっ、この話は終わりだ終わり!」

一条が宣言する。

「えー」

姫川が不満そうに声を出すが、それを無視した一条が言う。

「次は俺が言うぞ、俺は「粉砕!玉砕!大喝采!」がいいと思う」

「パクリじゃん、却下」

私は却下する。

「くっ、じゃあ「シャイニングロード」というのは…」

「ださい、却下」

姫川が恐ろしく冷たい目で一条を見ながら言う。

…さっきまでと雰囲気変わりすぎだろ、こわ。

その目でアパスルの執行使徒(笑)とやらをぜひ睨みつけて欲しい。

「くっ、変態のくせにそんな、ゴミを見るような眼をしやがって…よし、樹お前の番だ」

「え」

どうしよう、何も思いつかない。

うーん、イスカリオテの騎士団のメンバーが二人もいるんだし、私も入る予定らしいし、イスカリオテ…

「「ケリヨトの騎士」、というのはどうだ?」

「…安直だが、もうそれでいいか…それで行こう」

「えー私は「ハーレム騎士団」がいいと思うなー」

「お前はお願いだからもう黙っていてくれ…」

一条って意外と苦労人属性なのかね…

「…よし取り敢えず俺らのパーティー名は決まった、次は俺と姫川の能力ついて説明しよう」

こいつらの能力…使徒スキル「粉砕者」「叡智者」 についてか

「まずは俺の「粉砕者」これは単純に何かを粉砕しようとした時に極大の補正が掛かるものだ」

なるほど、シンプルだがゆえ強力そうだ。

「私の「叡智者」はね、魔法行使に莫大な補正が掛かるんだよ!樹ちゃん!」

姫川がハイテンションで言う。…まって、魔法?

「魔法なんてものがあるのか」

「そういや、お前、探索者に成りたてだったな、…ああ、あるぞ」

「どんなものなんだ?」

「端的に言うと弱小スキルをひいちまった奴が、それの代わりに使う、…まあ要するにスキルの劣化版だな、魔法は…それ以外はゲームに出てくるようなものそのまんまだな」

え、魔法の扱いってそんなヒエラルキーが低いのか…うん?じゃあ姫川のスキルは?

「ちっちっち、甘いよ!樹ちゃん!私の魔法は一味違うよ!」

姫川が私の考えを読んだかのように、どや顔でいう。…なんかうざい。

「…まぁ、こいつの言う通りだな、こいつの魔法は中々にいかれている」

いかれている?それって

「…具体的には?」

「こいつが全力で下級魔法ファイアーボールを放つと、その威力は低出力核兵器に匹敵する」

…やべぇだろ、それ

「まあ、というわけで俺たちの能力はこんなもんだ」

まあ二人とも何とも理解しやすい能力だな。

「じゃあ、私の能力を…」

「古館さんから大体は聞いてるぜ。なんでも、防御は戦艦?の主装甲並みで、主砲をぶっ放すんだろう?あと活動時間が三十分強とか」

あのおっさん、そんなことまで事前にはなしていたのか。

その後も色々な話をした、主に今後の予定だ。

私が退院したら、探索者協会にパーティー結成の申請をするらしい。

…一応は私企業なのに役所みたいだな探索者協会。

「そろそろ頃間だな…じゃあな、樹」

「じゃねー!樹ちゃん!」

そう言って話が終わった二人は病室から出ていった。

…うむ、なんか一人になったら急に眠くなってきた。

湧き上がる睡魔に抗はず、私は横になり目を閉じた。









―コツコツ

とある施設内で二十代半ばと思われる年ごろの白いスーツを着た男が、どこか薄暗い廊下を歩いている。

ふと、男は何もないところで足を止める。

そして、薄い笑みを浮かべながら言う

「楽しみにしていますよ、小池樹さん…決戦の時を、そして神誕の時を…」

男は独り言を言い終えると再び歩き出す。

どこかへと向かって…


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