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第十四話 おっさんの説明

「まず僕ら…つまり僕が所属している組織についてだね、「探索者協会」そう呼ばれているよ。」

「…どんな組織なんだ?」

「東早グループ、という企業グループは知っているか。」

「ああ、一応」

東早グループ、東早電鉄を中核として様々な分野の企業や法人が所属している企業グループだ。前は東早線の沿線に住んでいたから知っている。

「その東早グループに秘密裏に所属しているのが探索者協会だ、表では東早特殊商社と呼ばれている。」

「…なぜそんなことになったんだ?」

「実は東早グループの会長である後藤健司がダンジョン探索者でね。グループ内の企業から探索者としての才能があるものを引き抜いて探索者協会の従業員としているんだよ。」

…探索者のバックには巨大な企業グループがいたのか

「そしてその探索者協会が何をやっているのかというと、主として、探索者の支援、そして探索者が持ち帰ってきたアイテムを特殊な伝手で売ること、などだ」

特殊な伝手ねぇ、聞く限りダンジョンから産出されるアイテムはヤバい効果のものが多いけど、どうやって売りさばいているのやら。というか春樹の父さんはこれで稼いでいたんだな。

「まあ、大雑把だけど、協会についてはこんなもんでいいだろう」

「ちなみに私は…」

「…この病院、東早探索者病院を利用している時点で、まあもう、所属は探索者協会みたいなものだよ」

「…拒否権は?」

「…まあ、強制はしないけど、所属しておくことを進めるよ」

まあ、おっさんには色々と世話になっているし、…信用してもいいだろう。

「うーむ、じゃあ、入っとく」

「うん、それがいいよ」

おっさんが安堵したように言う

「で、次はあの仮面の女について聞きたいんだが」

そう、ボスを魔改造して私を殺そうとした、あの女だ。

「…いいよ、やつら…アパスルの執行使徒について、ね」

アパスル?執行使徒?

「…いきなり、色々と言葉を並べられてもわからないぞ?」

「順を追って説明するよ、まずは奴らの組織「アパスル」について」

おっさんはそう言うと語りだした。

「アパスル、探索者協会と敵対する組織だ。そしてその活動目的は…」

「活動目的は?」

「人類の浄化だよ、お嬢ちゃん」

人類の…浄化?

「…はぁ」

「時に嬢ちゃん、お腹すいてたりする?

なんだ、突然に

「いや、別にすいてない…あれ?」

そういえば…ここ最近、食事を全くとっていなかったような?

「そう…探索者は食料を取らなくても生きていけるんだ」

…まじかよ

「つまり、探索者になった時点で、レベル関係なく人間離れしているのか…」

「そう、そして、それが奴らに行動原理となっている」

「…つまり?」

「…やつらの主張は、進化した人類である探索者が、旧人類を駆逐することで、人類は浄化され、新たなる上位存在となる、というものだ」

「旧人類を…駆逐…」

「…つまり非探索者を殺しつくそうとしている」

…想像以上に狂った連中だ。まあ狂っている以上に厨二的ではあるけど。

「その、狂った組織の中で指導者的役割を担う物たちがいる、それが執行使徒だ」

…執行使徒、か

「なんか、中学生がつけたみたいな名前だな…」

「…まあ、奴らの主張、狂っている上に幼稚だからね」

さもありなん。

「で、その執行使徒とやらはどんな連中なんだ」

「奴ら、執行使徒は確認されているだけで6人いる。その全員が使徒スキルか呪神武器持ちの、強力な力をもった連中だよ」

呪神武器…三笠刀みたいなやつか、ところで。

「使徒スキルって?」

「まあ、単純に言うと、極一部者たちが持つ普通のスキルの上位互換で、非常に強力な効果を持っているスキルだよ」

普通のスキルの上位互換っていうことか

「で、その六人の素性は?」

「第6席 憂国の使徒、第5席 銃の使徒、第4席 戦争の使徒、第3席血の使徒、第2席 核熱の使徒、第1席 神の使徒、それが今、協会が確認している執行使徒達六人だ」

…なんか名前だけでもヤバそうな連中だな、主に頭が

「君が遭遇したのは「核熱の使徒」だね」

「核熱の使徒、ねぇ」

名前からして、なんだ…核反応を扱うのだろうか?

「ところで…なんで私は奴らに狙われているんだ?」

「…それが…わからないんだよ」

わからない?

「…ただの呪神武器持ちってだけなら、わざわざ執行使徒が出向いて君を始末しようとする理由にはならない…なにか心当たりはないか?」

いや、私に聞かれたも…ん?そういえば

「…代行者」

「⁉そ、それについて何か知らないかい?」

「え、あ、いや…なんか、いろんな奴が私の事をそう意味深に評するんだよね」

あの仮面の女とか、ね

「なるほどねぇ、代行者…か…やはり」

ん?おっさんは何か知っているのか?

「やはり?」

「…君はもしかしたら、使徒スキル発現の可能性があるのかもしれない」

使徒スキル?私が?

「もし、君が使徒スキルを発現したら、呪神武器持ちの使徒スキル保有者が誕生するかもしれない…たしかにそれなら奴らにとっても脅威だな…」

「いや、一人で納得されても…」

「ああ、ごめん、ごめん、…まあ取り敢えず君は探索者協会とアパスルの戦いにおいて、とても重要な人物になる可能性が高い、ということだよ」

「はぁ…」

…うーん、なんかいつの間にとんでもないことに巻き込まれていないか?

「ところで、探索者協会側にも執行使徒、みたいなのはないのか?」

ほら、漫画とかで定番じゃん。味方側の

「…あるよ、執行使徒ほど、個々人は強力じゃない…一部を除いて…だけど」

「へー、どんな物なんだ?」

「対執行使徒部隊「イスカリオテの騎士団」、そう呼ばれている部隊だよ」

…ネーミングセンスは大差ねぇな。アパスルと探索者協会。

「ちなみに僕もその部隊の隊員だったりするよ」

…へー、もしかしておっさん、割と強い部類なのかなぁ、ゴブリンを触れずに倒していたし。

「あとはね、「イスカリオテの騎士団」のリーダー、「超越者」空狼っていう奴がいるのだけど…そいつはねぇ」

超越者?またなんか癖の強そうなやつが…

と、

「僕を呼びましたか?古館さん」

「「!?」」

え、

突然、男の声がして驚いてそちらを見る私とおっさん。

そこには、いつの間にか、二十代半ばと思われる。白いスーツを着た男が立っていた。

「…いたのか、空狼」

「ええ、古館さんが探索者協会の説明をしたあたりから」

…ほとんど最初からじゃないか、全く気が付かなかった。

「で、何の用だ?」

「いえいえ、噂の彼女を一目見たいと思いましてね」

そう言って「空狼」と呼ばれた男はこちらに挨拶してくる

「初めまして、小池樹さん、僕が「空狼」です。どうぞよろしくお願いします」

「あ、ああ…よろしく」

「では、僕は用事があるのでこれで」

そういうやいないや、空狼は踵を返して病室から出ていった。

…何だったんだ?ソッコーでいなくなったぞ

「…奴が空狼、恐らく、ダンジョン探索者最強の存在だよ」

「…最強?」

「アパスルの連中が人類の浄化を掲げながら、あまり派手に動かない理由が、あいつの存在だ」

「…そんなに強いのか?」

「ああ、恐ろしいまでに強い、…それこそ、あいつ一人で執行使徒全員を相手にできるほどに、それこそ一人世界を滅ぼせるかもしれない」

「…そこまで」

とても個人の保有する力とは思えない。というかめちゃくちゃ危険人物じゃん!

「…でも、味方なんだろ」

じゃなきゃ、やばいだろ。

「ああ…だが僕はあまりあいつが好きじゃない」

「…またなんで?」

「なんか胡散臭くないか?あいつ」

…いや、知らんし、というかおっさんも十分に胡散臭いぞ…同族嫌悪かな?

「…まあ、あいつのことはいいや、もう…それより、お嬢ちゃん、君に紹介したい奴らがいる」

「…紹介したい奴ら?」

おっさんは扉の方へ振り向くと呼びかける。

「ああ、…おーい!入ってくれ。一条、姫川」


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