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第1話 はじめに

***はじめに俺の紹介***

俺は16歳になった年にレイクロードという小さな田舎町を出て、近くのサブレシティに出てきた。もともと、貧乏農家の三男である俺には、家に居場所がなく、さっさと食い扶持をさがしに出ていくしかなかった。金も教育もない俺には、できる事は限られており、結局冒険者稼業に身をやつす事になった。幸いにも、近所に住んで仲良くしてた六つ年上のオリバー兄貴がサブレシティで治療師を開業しているので、転がり込んでいそうろうをしている。オリバー兄貴は、若いのに治療術に長けており、骨折や酷いけがなども簡単に直してしまうと評判だ。俺も仕事柄、けがはつきもので、兄貴にしょっちゅうお世話になっている。


俺は冒険者になって最低ランクのEから始める事になったが、ランクはEからAまである。Cまで行けば、ベテランと言われるが、B、Aに上がれる人は100人に5人ぐらいだと聞いている。年をとると体の動きが鈍って、大けがや、魔物に殺される事もある。50歳まで、五体満足で、冒険者稼業を続けられたら、非常に幸運らしい。自分の限界を感じて、40歳台で引退したり、運よく小金を貯めて、はやばやと商人等に鞍替えする人が多いそうだ。

自分も、ずっと冒険者稼業を続けるつもりはないが、なにしろ食い扶持を稼ぐ方法がこれしかないので、当分はやるしかない。田舎から出てきて1年ぐらいだが、魔物の矢面に立つのはいまだに怖い。ベテラン冒険者の荷物持ち、所謂、ポーターと戦闘の補助をやってるが、ケガをしないように、なるべく前衛の陰に隠れて、魔物をこずくようにしている。


***俺の特技「アイテムボックス」***

実は、俺には、アイテムボックスの加護がある。生まれた時からあったようだが、10歳の時に気づいた。友達と近くの杜で遊んでいるとき、大量の栗の実が落ちているのを見つけ、必死に拾っていたが、両手に持ちきれなくなった。その時、ふと栗を入れるポケットがあればいいのにと考えたら、ポンという音とともに、手から栗が消えてなくなった。あせって、”栗”出てこいって考えたら、又手の上に現れた。それ以来、手に持ったものを入れたり出したりする事ができるようになって、重い荷物の持ち運びに重宝している。どのくらいの分量が、入るのか判っていないが、今まで入らなかったものはない。試しに家の物置にあった小麦の入った大袋を50個まで入れたが、余裕だった。こんな事ができるのは、家族にもないしょだ。農家の三男なんて、ごくつぶしだから、そんな便利な加護をもってたら、一生奴隷のようにこき使われる。小さい頃は、積極的に秘密にするというのではないが、なんとなく隠したほうがいいという勘が働いて黙っていた。


治療師のオリバー兄貴のところに最初に訪ねて行って、冒険者になりたいと言ったら、魔法とかの特技があるのかと聞かれた。アイテムボックスが使えると言うと、試しにやってみろという。兄貴の家にあるタンスやら、机やら、かたっぱしからボックスにいれたら驚いていた。今まで、入れられないものはなく、限界がわからないというと、王国のお抱えの魔導士でも、そこまでの人はいないだろうという。アイテムボックスは、空間魔法の一種で、空間魔法が使える人は非常に珍しいので、使える事がわかったら、闇ギルドなどのやばい連中に目をつけられるという。そういうわけで、使える事は秘密にする事にした。しかし、それ以外に特技がないので、どうしたらいいかと2人で考えたが、リュックを背負っておいて、人前ではそこから出し入れしているように見せるとしか思いつかなかった。大量に出し入れしてたら怪しまれるだろうが仕方がない。


***冒険者仲間「鷹の目」***

 次の日に、オリバー兄貴の友達で、冒険者をやってるローガンが、右足を捻挫して治療してもらいにやってきた。

「ローガン、丁度よかった。弟分のマテオだ。昨日田舎からでてきたんだが、冒険者になりたいんだそうだ。相談にのってやってくれ。」

「やあ、マテオよろしく。俺は、C級冒険者をやってるローガンだ。ここ10年ぐらいこの仕事をやっている。オリバーには、いろいろ世話になってる。」

「ローガンさん、はじめまして。冒険者になりたいんですが、なにから始めたらいいかわからなくって、いろいろ教えてください。」

「ちょうど、仲間のルーカスが、親の稼業を継ぐって言って、先月俺のパーティを抜けていったので、一人募集をしていたんだ。試しにやってみるか?」


ローガンのパーティは”鷹の目”という3人組のグループだった。ローガンがリーダで、剣士&盾役の前衛。クロエという女性の魔導士が後衛。先月抜けたルーカスは、シーフの加護持ちで、索敵や罠外しなど遊撃的な役割だった。投げナイフも得意で、ローガンをサポートしていた。

「きみは、何か得意なものはあるか?剣なんかは、扱えるのかい?」

「実はローガン、マテオは、アイテムボックス持ちなんだ。」

「アイテムボックスというと?」

「これは、秘密にしておいてもらいたいんだが、大量の物資をしまっておけるんだ。マテオ、ちょっと試しに見せてあげて。」


俺は、昨日オリバー兄貴に見せたように、家具などをかたっぱしから、アイテムボックスに入れてみせた。ローガンも驚いたようで、暫くうなって固まっていた。

「これはすごいな。ダンジョンに何日ももぐったり、遠出の狩り等の時、大量のキャンプ用品を携帯するのが煩わしかったんだ。又、獲物を倒しても、運搬に制限ができて、悩んでいたんだ。これがあれば、非常に便利だ。ぜひ、俺のパーティに来てくれ。歓迎する。」

 俺は、ローガンさんに、冒険者ギルドに連れて行ってもらって、手続きを行い、晴れてE級冒険者になることができた。それから、パーティのメンバーのクロエに、紹介された。クロエは、24歳のお姉さんで、青髪のキレイな人である。

「かわいい少年ね。クロエよ。よろしくね。」

「昨日、田舎からでてきたばかりです。がんばりますので、よろしくお願いします。」


 アイテムボックスの件に関しては、クロエにも伝えた。パーティメンバー内で秘密をかかえるのは、無理がある為だ。初心者冒険者と思っていたら、とんでもない特技があるというのは、クロエも、予想外だったようだ。ローガンからは、簡単に今後の予定を説明された。明日から、街から北に10Kmぐらいのところにある初級者ダンジョン”青のほこら”に行って、俺の訓練をする事になった。青のほこらは、10階層までの小型ダンジョンで、でてくる魔物は、ゴブリンやオーガ等の脳筋系が多く扱いやすい。魔法を撃ってくる魔物は居らず、やっかいな飛び回るやつは、血吸大こうもりぐらいのようだ。俺は、防具も武器も持っていないので、ローガンにつきあってもらって、安物の皮鎧と、皮の盾、鉄の剣を買った。全部で50ゴールドで、初心者セットというやつだ。家をでる時に、親父が100ゴールドをくれたので、半分無くなったが、オリバー兄貴のところでやっかいになっているので、露頭に迷う事はないだろう。


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