私の被写体
約400字の短編小説です。
その日の25時(その日の深夜一時)には投稿する予定が、目を瞑ったら夜が終わっていました。
その通知が来た時、俺は愕然とした。
噂程度で現実感が無かっただけに衝撃は大きい。しかもよりによってこんな日に、こんな相手に。
「なんたって、こんな……ッ」
初デートの日に訪れたその通知には、恋人の名前が書かれてある。通知と共に小型カメラ一台と誓約書が一枚も渡された。
「俺が撮ったら、あの子は――」
その先を口にしたらこんなふざけた紙切れが現実になりそうで――だがそんなことをしてもカメラは無くならない。通知も消えない。
自分が生き残るためだ。やるしかないのだろうか。
迷いが消えないまま、恋人と待ち合わせてデートした。
「大丈夫?」
「あ、うん」
心配されて――何やってんだ、俺は。
そうだよ、この子を楽しませるのが俺の役目だ、通知なんて知るかよ。
「ねぇ、あのさ、手、繋――」
「ごめんね」
振り返って、振りまいた笑みは、しかし、恋人を捉えることは無く――。
その代わりに視界に映ったカメラを最期に、俺の意識は消えていった。