釣瓶落し
平助たち三人は、山爺と山姥に別れを告げた後、洞窟を通って剣山のに戻った。
そこには刑部一人が残っていた。
そこで刑部の言うには、琴平神宮のある像頭山で釣瓶落しが暴れているとの事だった。
金毘羅坊はそれを収めるため、取り急ぎ山に向かったというのだ。
「ワシらも後を追うぞ!」王が言った。
「だったら、この洞窟の奥を右に曲がってくれ、像頭山に一番近い出口に通じている。それから金毘羅坊は奥社にいる」
刑部が教えてくれた。
「わかった」
刑部の言葉に従って右の洞窟を通って出てきたのがマンホールだった。
「なんで出口がマンホールなのじゃ?」
「分からんがここが一番近かったのじゃろう」
三人はマンホールを出て、周りを見回した。
「あそこに鳥居があるわ!」凛が指差した。
「金毘羅坊は奥社におると言っておったな」
「ならばあの鳥居に間違いない」
「行ってみよう」
三人は通りを歩いて鳥居に近づいていった。
「な、なんじゃ〜この階段は!」
苔むした石の鳥居の先を見上げて、平助が声を上げた。
ここは琴平神宮御本殿に続く参道だ。
「ここを登っていくのか?」
「平助、この石段はどこまで続いているのじゃ?」
「儂が知るものか、なんせ初めて来るところじゃぞ」
「この上に金毘羅坊がおるのじゃな?」
「刑部がそうもうしておったわ」
「とにかく行ってみましょう」
三人はとりあえず石の階段を登り始める。石段の両側に土産物屋が軒を連ねているのは、どこの神社でもお馴染みの風景だ。
昼間の事とて参拝客の姿も多い。狭い階段ではないが、所によっては傾斜がきついので肩でもぶつけようものなら転げ落ちる危険性もある。
気をつけてしばらく登っていると、簡素な杉の一枚板に表示が出ていた。
「ここで百段目・・・じゃと」
上を見上げると石段の先が右に折れ曲がり先が見えない。
「一体何段登れば良いのじゃ?」
「さあ、見当もつかぬわ」
「そこのお店で聞いてみましょ」凛が左側の土産物屋に入って行った。
しばらくして戻って来ると、気の毒そうな顔で言った。
「本宮まであと六百八十五段らしいわ」
「なに!そんなにあるのか」
「待て、今本宮までと言わなんだか?」
「そう・・・金毘羅坊がいる奥社までは後千二百六十八段だそうよ」
「なんじゃと!年寄りを殺す気か」
「うむ、なかなか骨の折れる数じゃわえ」
「お爺ちゃん達さっきから文句ばっかり。そんな事じゃ奥社にたどり着く前にへばっちゃうわよ、もっと元気を出さなくちゃ」
「わかっておるわい、のう王」
「わかっちゃいるが、のう平助」
「もう、ぐずぐず言わない!そんなことばっかり言ってると日が暮れちゃうわ、行かないなら置いてっちゃうわよ!」
「鬼じゃのぅ、凛は」
「鬼じゃないわ、し・に・が・み、よ」
「口の減らん奴じゃ」
爺い二人が渋々石段を登り始めた頃、奥社の裏山では金毘羅坊と釣瓶落としが睨み合っていた。
「そこを退け金毘羅坊!」
まるで達磨のような首だけの妖怪が、奥社の拝殿の前でピョンピョンと飛び跳ねながら金毘羅坊を威嚇していた。
「ダメだ釣瓶落し、俺はお前を行かせはせん!」
金毘羅坊は両手を広げ釣瓶落しをとうせんぼしている。
「おいは、この日本を妖怪の国にするんじゃ、邪魔をすんな!」
「馬鹿な考えは捨てよ釣瓶落し、たとえ日本が妖怪の国になったとて、あの女狐の言いなりになるのならお前は一生奴隷のようにこき使われるだけだ」
「ふん、そんなことがあるか。玉藻様はおいを重要な役職に就けると約束してくださったのじゃ」
「お前は騙されているのだ、目を覚ませ釣瓶落し」
「何を言っても無駄だ、そこを退かなければお前を食い殺してでもおいは行く」
「仕方ない・・・」
金毘羅坊は一本歯の高下駄で地を蹴って、虚空高く飛び上がった。そして手に持ったヤツデの団扇をブンと振る。
強烈な突風が釣瓶落しを襲った。
しかし、次の瞬間釣瓶落しはその名の通り、撥ね釣瓶の如く舞い上がり、ガブリと金毘羅坊の肩に噛み付いた。
ミシミシと肩の骨が鳴る。
グワァァァ!!!
肩に釣瓶落しを乗せたまま、金毘羅坊が落下した。
地面に激突した金毘羅坊は、白目を剥いて気を失った。
「悪く思うな、金毘羅坊」
釣瓶落しは狭い参道の石段を、飛び跳ねながら降りていった。
『ここで二九四段目 御本宮まであと四九一段』
石の道標に文字が刻まれていた。
「まだ四九一段もあるのか」平助が言った。
「本宮まで・・じゃ」
二人の爺いがガックリと項垂れる。
「二人とも、日頃はまだ若い者には負けないって威張ってるじゃない。しっかりしてよ」
「ば、バカを言うでない、技と体力は別物じゃ。儂らの洗練された技は到底若い奴らの及ぶところではないわ」
「はいはいわかりました。そこのお店で杖を借りてきてあげるから待っててね」
平助を軽くあしらった凛は、近くの店に飛び込んだ。
「すみませ〜ん、杖を二本借りたいんですが!」
「ああ、そこの傘立てにたくさん入ってるだろ。好きなのを持っていきな」
「帰りにお返ししますね」
「杖があると下りも楽だから、下の店に返して貰えばいいさ」
「ありがとうございます、じゃあ借りていくね!」
「これは楽じゃ」
杖をついた途端、スイスイと石段を登りながら平助が言った。
「でしょ、だからもう少し頑張るのよ」
「凛、なんだかお母さんみたいじゃぞ」王が凛を振り返って言った。
「だって私千歳過ぎてるんだもん」
「そ、そうじゃった」
爺い二人が複雑な表情で頷いた。
「キツくなったら後ろから押してあげるからね」
「無、無用じゃ、それだけは絶対にごめん被る!」
「頑固ね、じゃあ私先に行ってるから、ちゃんと追いかけてきてね」
「心配無用じゃ、早う行け!」
「じゃあね!」
凛は風のように石段を駆け登って行った。
一ノ坂を登りきれば大門に着く。この先はご神域だ。そのため店の姿は無くなる。
凛は大門を潜って石畳の参道をゆっくりと歩いた。二人の老人を労ってのことである。
「あまり先に行っても、追いつけなくなっちゃうからね」
苔むした石灯籠が両側に並ぶ参道は、そこからが異世界だと知らせているように見えた。
しばらく行くと、目の前にまた急な石段が現れた。『御前四段坂』と言うらしい。
この石段を登り切れば、いよいよ本宮だ。
「この坂かなりキツイわねぇ、お爺ちゃんたち大丈夫かしら?」
凛は階段の先を見上げる。本宮の屋根が僅かに見えた。
「ようし、あそこで待つとするか!」
凛は残りの石段を一気に駆け上がった。
「儂らも歳をとったもんじゃのぅ、王」
石段を一歩づつ登りながら平助が嘆いた。杖の効果もそろそろ切れかかっているようだ。
「若い頃はこのくらいの山、ひとっ飛びじゃったのになぁ」
相槌を打ちながら王も愚痴を溢す。
「おっ、大門が見える」
「本当じゃ、あそこまで急ぐぞ」
やっと大門に辿り着くとそこから空気が違っていた。
「なんとも神聖な気じゃの」
「うむ、神域に入ったと言う気がする」
暫くは平らな道が続いた。二人の足取りも軽くなる。
『桜馬場』を抜けると十分ほどで『旭社』だ。御前四段坂の下で上を見上げると本宮の屋根が見えた。
「あと少しじゃ」
「しかし急じゃのう、少し休んで行かぬか?」
「そうじゃの、2〜3分遅れても凛は待っとってくれるじゃろう」
二人は石段の端に腰を下ろした。
最後の石段を登り切ると、目の前に立派な社殿が鎮座していた。
しめ縄を張った柱の両脇に、朱で丸に金の文字が描かれた大きな提灯が下がっている。
凛は柏手を打って手を合わせた。
爺いたちを待つ間、境内の広場の欄干の前に立って眼下を見下ろしていた。
香川の市街地が一望の元に見渡せる。平地の多い香川ではこの高さでもかなりの高台で、清々しい景色に心も癒される。
どのくらい眺めていただろうか、景色にも飽きて社殿を振り返ると、まだ爺い達の姿は見えない。
「遅いなぁ、お爺ちゃん達」
右に目をやると強い気を感じる。木の立て札に『奥社』の文字と矢印が見えた。
「先に行っちゃおうかな・・・」
そう思うと居ても立っても居られない。凛は心の赴くままに奥社への道に足を向けた。
「さて、登るか!」気合を入れて平助が立ち上がる。
「そうじゃの、凛々が待っておるわ」王も立ち上がった。
急な石段を最後の力を振り絞って登った。
「着いたぞ、凛はどこじゃ?」
「待て、先にお参りしておこう」
「おお、そうじゃったな」
二人で拝殿に手を合わせてから、境内を散策している大勢の人の中に凛の姿を探す。
「何処にもおらんぞ」
広場の赤い欄干の方を見に行っていた王が戻ってきて言った。
「こっちにもおらん」平助が答える。「先に行ったのやもしれぬ」
「儂らがあまりに遅いんで、痺れを切らしたのかも知れんの」
「まったく、せっかちな奴じゃ」
「あと六百段近くあるのか・・・」
「気が遠くなるの・・・」
爺い二人はガックリと肩を落として、奥社に続く階段を登り始めた。
次の鳥居が見えてきたところで霧が出てきた。
参詣の人の姿が無くなって、もうだいぶ経つ。
周りはますます神気を帯びてきた。
「霧がだんだんと濃くなってきているみたい」
凛が足を進めるに従って、まるで冥界へ誘うように霧が深まってくる。
鳥の声も聞こえない、聞こえるのは石段を登る自分の足音だけだ。
石段に沿って設えてある赤い手摺りを頼りに先へ進む。
霧がじっとりと着衣を濡らし躰が重い。まるで牛乳の中を進んでいるようだ。
さっきまで見えていた足元の石段さえ全く見えなくなった。
「引き返した方がいいかしら?」
凛が立ち止まったその時・・・
ドスン!
今登ってきた石段のあたりで音がした。
振り返ると霧の中で蠢く物がある。
「なに?」
思わず後退ると石段に足を取られて尻餅をついた。
その途端何かが覆い被さってきた。咄嗟に石段を蹴って空に舞い上がる。
一瞬、風が吹いて霧が流れた。
味噌樽ほどもある、生首ががこちらを見上げている。
「お前、人間じゃないんか?」
「あなた誰!」
「俺の質問に答えろ」
「あんたが先に答えなさいよ!」
「気の強い女だ、いいだろう答えてやる、おいは釣瓶落しと呼ばれている」
「あんたが釣瓶落し?」
「知ってるのか?」
「金毘羅坊に頼まれてあんたを止めに来たの」
「なに、お前何者だ?」
「残念ながら人間じゃないわ、死神よ」
説明がめんどくさいので『元』は省く事にした。
「死神が何故おいを止める」
「あんた玉藻に騙されてるのよ、私は玉藻をやっつけにきたのよ」
「お前玉藻様の敵か?なら好都合だ、お前を殺して玉藻様に報告すれば、褒めてもらえる」
「救いようのないバカね、こうなったら力尽くで分からせるしか無いみたいね」
「返り討ちにしてくれる!」
釣瓶落しは、ピョンと跳ねると近くの大木の枝に飛び乗った。
ピョンピョンと跳ねて、凛の周りを回るように、枝から枝へと飛び回る。
凛は大鎌を取り出し構えたが、釣瓶落しの動きが早くて狙いが定まらないのと、木の枝が邪魔で大鎌を振り回せないのとで完全に動きを封じられていた。
徐々にまた霧が濃くなってきて、釣瓶落しの動きが見え辛くなった。
「どこにいるの、出てきなさいよ!」
凛の周囲で枝の折れる音、葉の擦れる音が木霊のように響き合い、ますます釣瓶落しの存在をわかりにくくした。
「それほど言うなら出て行ってやろう」
「え、どこ!」
凛が周りを見回してキョロキョロしている。
「ここだ!」
突然目の前に生首が現れて長い舌を出し、凛の顔をベロンと舐めた。
「キャァァァァァァ!!!!!!!」
「王、今悲鳴が聞こえたぞ!」
「凛々の声じゃ間違いない!」
「急ぐぞ!」
「応!」
今までノロノロと石段を登っていた二人が、まるでカタパルトから弾き出された戦闘機みたいに駆け出した。
「凛、待っとれすぐ行くぞ!」
「凛々、無事でいてくれ!」
祈るような気持ちで先を急ぐ。
「何すんのよ、気持ち悪い!」
何処にいるともわからない霧の中に、凛の大声は吸い込まれていった。
「出てき・・・・いえ、出てこなくていいから、何処にいるかはっきりしなさいよ!」
「ふふふ、今度はどこを舐めてやろうか」
凛はゾッとして総毛立った。
「観念しろ釣瓶落し!」
その時、霧の向こうから声が聞こえた。同時に突風が吹いて辺りの霧を吹き飛ばす。
「あ、金毘羅坊!」
凛のすぐ横に伸びた枝から釣瓶落しが叫んだ。
凛は咄嗟に飛び退いた。
背中に羽を生やした金毘羅坊が、左手に団扇を持って宙に浮かんでいる。
「もう逃げられんぞ!」
「チェッ、もう少しだったのに!」
「お前のおかげで、右手は使い物にならん。このお返しはきっちりしてやる」
「ふん、その左手も使えぬようにしてやろう」
「待って金毘羅坊!」凛が大鎌を構え直した。「仕返しなら私が先よ。花も恥じらう乙女の顔を舐めた報いはちゃんと受けてもらう!」
オリャァァァァァァァァァァ!!!!!!!
凛がいきなり釣瓶落しに突進した。大鎌が木の枝だろうが幹だろうがお構い無しに斬り飛ばして行く。
「うわっ!こりゃたまらん!!!」
釣瓶落しが泡を食って逃げ出した。
「待て!」
凛が執拗に釣瓶落しを追い回す。釣瓶落しの失敗は凛を怒らせた事だった。
とうとう、釣瓶落しは切り立った崖の縁まで追い詰められた。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
尖った鎌の先が釣瓶落しの頭上に振り下ろされた。
「待て凛!」
鎌は急ブレーキをかけて釣瓶落しの額の前で止まった。
「平助爺ちゃん」
「殺すでない!金毘羅坊との約束じゃ!」
凛は、恐怖で大きく見開かれた釣瓶落しの目を睨みつけた。
「命拾いしたわね、今度だけは助けてあげる」
フゥッと釣瓶落しの目が裏返り、泡を吹いて転がった。
「なんだ、案外だらしないのね」
凛が勝ち誇ったように呟いた。
「へ〜、ここが奥社なのね」
総数千三百六十八段の石段を登って辿り着いたのは、本宮より一回り小さな、それでいて荘厳さは本宮にも引けを取らない、なんとも風格のある神社だった。
「奥社とは呼ばれているが、正式には厳魂神社というのだ」
金毘羅坊が説明してくれた。
「あっ、あれ金毘羅坊?」
凛が拝殿左側に聳え立つ崖を指差した。そこには天狗の面が岩肌に溶け込むように飾られていた。
「俺は生前『厳魂彦命』と言ってな、『死して永く当山を守護せん』と言い残して天狗になったんだ」
「それでここに祀られているのね」
「そう言う事だ、だからこの象頭山で釣瓶落しが暴れるのを許すことは出来なかった」
「ふ〜ん、大変なお仕事ね」
「凛々、仕事と言うのはちょっと違うじゃろう」
「じゃあ、なんなの王爺ちゃん?」
「う〜ん、約定というか責務というか・・・」
「私のはお仕事だったわよ」
「そんなことどちらでも良いわ」平助が言った。「それよりこいつはどうするのじゃ?」
拝殿の前には釣瓶落しが転がっていた。
「とにかく目を覚まさせなければ話になりません」
「よし、そこの手水の水をかけてやろう」
平助が柄杓に水を汲んで持って来ると、釣瓶落しの顔にザバッとかけた。
「ブルルルル・・・」
釣瓶落しが目を覚ました。
「ん、ここは何処じゃ?おいはいったい何をしているのじゃ?」
「気がついたか釣瓶落し?」
「金毘羅坊・・・おいはいったい・・・?」
「お前は玉藻に騙されて、この山で暴れていたんだよ」
「おいが?」
「そうだ、もう少しで人を殺めるところだったのだぞ、そこをこの人らに助けられたんだ」
釣瓶落しは平助たちを見回した。
「わわわっ!」
凛を見た途端、釣瓶落しが跳び上がった。
「その娘怖い!」
凛がフッとため息をついた。
「少し薬が効き過ぎたようね」
「金毘羅坊、すまねぇおいのせいで・・・」
「気にするな、こんなものすぐに治る。それより、玉藻とはいつ会った?」
「あれはひと月ほど前かな、いつものように参詣客を驚かしてやろうと、高い木の上で待っていた時だ。下の方から石段を登ってくる女が見えた。よし、あの女にしようと思って待っていたらいつの間にか女が消えていた。はて、何処に行ったかと下界を探していたら『こんな所で何をしていらっしゃるの?』と後ろから声がした。信じられるか、おいは木の上にいたんだぞ。びっくりして振り返ると見たこともないような美女が細い枝の上に立っていた。こりゃ人間じゃねぇ、と思ってお前は誰だ?と尋ねると九尾狐だというじゃねぇか。名を玉藻と名乗ったな。それからは懇々と妖怪のありようについて諭された。日本における妖怪の待遇の悪さ、差別についてな。そうしていつの間にかおいは玉藻について深い霧の中に入っていった。ついたのは何処かの神社の拝殿の中だった。それから美味い食い物と美味い酒をたらふく興されてすっかり酔っちまった、あとは全く記憶にねぇ」
「その神社は何処だかわかるか?」平助が訊いた。
「わかんね、なんせ霧が晴れたら拝殿の中で、後はもう・・・」
「ふむ、そうか・・・そこに何か変わったものはなかったか?」
「いんや、普通の拝殿だったな、なんの神様を祀ってあったかもわかんね・・・いや、待てよ」
「何か思い出したか?」
「そういや、拝殿の隅に巻物を咥えた怖い顔の狐の像が置いてあったっけか。してみりゃ、あれはどっかの稲荷神社じゃなかったのか?」
「うむ、だがそれだけではどこの稲荷神社かもわからん」
「平助、それはあの神社ではあるまいか?」王がお狐神社のことを言った。
「いや、かなり遠いぞ」
「玉藻の妖力はほとんど神に近いくらい強力になってるわ。こことあの神社を亜空間で繋ぐことも難しくないと思う」凛が言った。
「調べてみる価値はありそうじゃの」
「電話で熊さんに頼んでみたらどうかしら」
「それはいい考えじゃ、凛々」
「おいの話、なんか役に立ったか?」釣瓶落しが訊いた。
「うむ、これが玉藻討伐の手掛かりになるやもしれん。礼を言うぞ釣瓶落し」
「いや、助けて貰った恩返しはこんなもんじゃ済まね。何かあったら喜んで協力するで、いつでも言ってくれ」
「俺もだ、玉藻と戦う時には必ず呼んでくれ」金毘羅坊が言った。
「ありがたい、恩に着るぞ」
「私の顔を舐めた償いもして欲しいわ」
「すまね、おいはなんも覚えてね」
「惚けてるんじゃないでしょうね?」
「いや、ほんとにほんとだ、信じてくれ」
「じゃあ、しょうがないか」
「ははは、凛、お主釣瓶落しに舐められて、ますます肌がツルツルになったぞ・・・ツル瓶落しだけに」
「寒くて死にそう・・・」




