満月の夜の戦い
ノラとチャン・チュンの機転で辛くも水鬼に勝利した王は、水鬼を家族に合わせたいという子供達の願いを聞く事を約束する。しかし、それを実現するには王の躰を一時水鬼に貸さねばならない・・・
満月の夜の戦い
改めて眺め渡してみても奇妙な庭である。
四つの棟に四角く切り取られた空間の真ん中に、煉瓦積みの丸い井戸がある。
その周りには小学校らしく花壇や小動物の飼育小屋が適度に配置されており、校長の言っていた杉の木はチューリップの花壇とウサギ小屋の間に立っていた。
井戸には井戸の円周と同じサイズの分厚い石で蓋がしてあり、子供達が落ちないように留意してあった。
「あの蓋は随分重そうじゃが?」王が校長に訊いた。
まだ陽があるうちに集合した四人は、校長室の前の廊下の窓から中庭を監視していた。
「大人が三人かかっても持ち上げることのできない代物です。子供達が落ちでもしたら大変ですからな。持ち上げるときは中央の穴に先の曲がったカギを差し込んで櫓を組んだ滑車で持ち上げます」
「ノラ、水鬼はあれを持ち上げたのか?」
「そう、ネン・ネンを脇に抱えたまま片手で軽々と」
ノラは身振り手振りでその時の様子を再現して見せた。
「なんて力持ちなの!」チャン・チュンが驚いて目を丸くした。
「並の力ではないな、用心してかからねばこちらが危ない・・・校長、校舎にはもう人は残っていないのだな?」
「生徒はもちろん、残業していた教師たちも先ほど帰りました。わたしたち以外には誰もいません」
「よし、月を待とう」
四人は一旦校長室に引き上げ、月が出るのを待つ事にした。
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「そろそろだな?」月が東の校舎の上に昇った頃、水鬼が呟いた。
「何がそろそろなの?」
ネン・ネンが手探りで水鬼に近寄った。
「俺の躰に触るな!」
「・・・なぜ?]
水鬼に一喝されてネン・ネンの動きが止まった。
ネン・ネンの心には同情心さえ芽生え始めていたのに、なのに・・・
「俺はお前ぇを殺そうとしているんだぞ!」
「だから、いいって言ってるのに」
「ばか、お前ぇに情が移ったら殺せなくなるだろうが!」
「あ、そうか」
ネン・ネンがホッと息を吐いた。
「なんだ嫌われたのかと思った」
「お前ぇ・・・」
水鬼は信じられないといった顔でネン・ネンを見た。
「お父ちゃんお母ちゃんに会えなくなるんだぞ!それでもいいのか!」
「良くはないけどおじちゃんが娘に会えるならいい」
「おじちゃん・・・て」
「真っ暗で見えないから、声だけ聞いてるとおじちゃんじゃん」
「お前ぇなぁ・・・」
その時、井戸の蓋の小さな穴から月の光が真っ直ぐに差し込んできた。まるで黄金のロープが登ってこいと言うように降ろされたように。
「月が真上に来た!」
「そろそろって、この事だったんだね?」
「よし、井戸を出るぞ、月の光を全身に浴びなければ替死はできねぇ」
「どうやって上るの?」
「俺の背中に掴まれ」
そう言って水鬼はネン・ネンに背を向けた。一条の月の光で水鬼の姿が薄っすら見える。
「怖くねぇか?」
「うん」
ネン・ネンが背中に捕まろうとした時、水鬼の躰に緊張が走った。
「待て、外に誰かいる・・・」
水鬼は顎を上げて鼻をクンクンと鳴らした。
「人間が三人それに人でねぇものが一匹」
「人でないものって?」
「分からん、暫くお前ぇはここに居ろ。外の奴を始末して戻ってくる・・・上手くいけばお前ぇを殺さずに済むかも知れねぇ」
「それって・・・」
「時間が無ぇ、待ってろ!」
水鬼は井戸の壁に両手両足を突っ張るようにして上まで登ると、両足を踏ん張って蓋を持ち上げた。大きく開いた井戸の口から月明かりが煌々とネン・ネンに降り注いだ。
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「シッ・・・!」
ノラが唇の前に人差し指を立てた。
「井戸の中から音がする、水鬼が出てくるわ」
チャンチュンが強張った表情でゴクリと唾を呑み込んだ。
校長は腰が引けてか、ズズッと一歩後退る。
「ここは儂に任せて校舎の中に入っておれ」
王は三人に命じると井戸から十メートルほど離れた位置に立って、ジッと井戸を凝視した。
やがて井戸の蓋がゴトリと動いた。
それは徐々に持ち上がり、井戸の縁から現れた二つの眼光が王を真っ直ぐに捉えた。
いきなり井戸の縁に飛び上がった水鬼が頭上高く石の蓋を差し上げ、力任せに王に向かって投げつけた。
ゴウ!と音を立てて石の蓋が飛んで来た。
王が横っ飛びに躱すと、石の蓋は後方の花壇に激突し、生徒が丹精した花を無惨に押し潰した。
「むむ、儂の身代わりに潰してしもうた」王が無念そうに花壇を見遣る。
「お前人じゃ無ぇな!」月の光に照らされて水鬼が叫んだ。
「お察しの通り、ご同業者じゃ!」
「ならどうして俺の邪魔をする!」
「なぁに簡単な事じゃ、美人の先生と可愛い生徒に頼まれたからじゃ」
校舎の中に隠れて見ていた校長が『私は・・』とツッコミを入れる。
「妖怪の風上にもおけねぇ色ボケ爺いが!」
「子供を己の身代わりにするような奴に言われたくは無い!」
「ググッ!」
返す言葉が見つからず、水鬼は口を噤んだ。
「どうじゃ、素直に子供を返せば見逃してやるが?」
「お前ぇのような色ボケ爺いが俺に勝てるか!」
「なら試してみるが良い」
王は腰を落として構えると差し出した右手の掌を返し、指先をチョイチョイと動かして水鬼を挑発した。
「さあ、どこからでもかかって参れ」
「くそっ、ふざけやがって!」
水鬼は全身の筋肉を怒張させた。足の爪で地面を掴むと膝を屈して前傾姿勢を取った。まるで短距離走者のクラウチングスタートの如くである。
「いくぞ!」
強靭な足の力で地を蹴り、あっという間に十メートルの距離を縮め王に肉薄した。
「遅い・・・」
王は余裕で、殆ど地を蹴る事なくふわりと宙に舞い上がる。
目標を失った水鬼はタタラを踏んだが、咄嗟に右手を伸ばして王の足を鷲掴みにした。
「なに!」
動転して王はもがいたが、水鬼に足を掴まれたまま思い切り地面に叩きつけられてしまった。
グエッ!
王は轢死した蛙のように地面に張り付いたまま動かなくなった。
「お爺ちゃん!」
ノラが校舎から飛び出して来た。
「ノラちゃん危ない!」
チャン・チュンもノラの後を追った。
「チャン先生!」
校長も中庭に出て来る。
水鬼が黄色く濁った眼差しで三人を見た。
「あのネン・ネンと言うガキの代わりにお前ぇ達のうちの誰かを身代わりにしてやろう」
「私を身代わりにしなさい!」
チャン・チュンが前に進み出た。
「先生駄目!先生が水鬼になったら、今度は先生が人を殺さなくちゃならなくなる」
「でもネン・ネンが助かるなら・・・」
「大丈夫、死んだおじいちゃんに貰った御守りのお札がある」
ノラは首に下げたお守り袋の中から黄色い紙を取り出し手早く開いた。中に赤い文字が書いてある。それを両手に掲げて水鬼に近づいた。水鬼は同極の磁石同士が反発するように地面に爪痕を残してジリジリと後退って行く。
「クッ!なんだこの力は?」
「おじいちゃんのパワーが宿った呪符よ!」
フッとノラが息を吹きかけると、呪符は凄い勢いで水鬼に向かって飛んで行く。
ンギャー!!!!!
呪符が触れた途端、高電線に触れたように水鬼が弾け飛んだ。
地面に倒れた水鬼はなにが起こったのか分からず呆然とノラを見つめた。
「お爺ちゃん大丈夫!」ノラが王に駆け寄って抱き起こす。
「痛タタタタタ・・・油断したわい」
「お爺ちゃん早く立って!御守りの呪符は使ってしまった、もう後がないわ!」
「全く年寄りをなんだと思っている、人・・いや、妖怪使いの荒い子供じゃ」
王はよっこらしょと立ち上がって首をコキコキと鳴らした。
「カッコ悪いところを見せてしもうたが、これからが本番じゃ。ノラ、校舎に戻ってよく見ておれ」
「今度こそ油断しないでね!」
ノラがチャン・チュンと校長を連れて校舎に入ったのを見て、呻いていた水鬼が起き上がった。
「こ、生意気な小娘め。この爺いを倒したらあいつを身代わりにしてやる・・・」
ノラの信用を大いに損ねた王と、呪符のダメージから回復した水鬼は再び中庭で向き合った。
*******
「さあ、仕切り直しと行こうか!」
王は立ち上がった水鬼を睨みつけた。
「今度はさっきのようには行かんぞ」
「ふん、負け惜しみを言うな」
水鬼が北叟笑む。
「あの娘がいなければ今頃お前ぇは死んでいたじゃないか・・・いや、もう死んでるのか」
「じゃからこそ・・・」
「なんだ!」
「手加減はせん!」
王の気が見る見る膨れ上がった。
「小癪な!」
水鬼が両手を広げて腰を落とす。
王の躰が滑るように移動した。自ら水鬼の懐に飛び込むつもりだ。
『図体がデカく怪力の割には動きが早い、このような敵には背後を取って攻めるに如くはない』王は心の中で呟いた。
水鬼が王を羽交締めにしようと前に出る。
その瞬間王は身を沈めて水鬼の股の下を潜って背後に躍り出た。
背後に回った王は水鬼の肩甲骨の下を狙って一本拳を叩き込む。人間なら一撃で倒れる急所である。
グワッ!
水鬼はのけぞって天を仰ぐ。その背中を思い切り蹴りつけると水鬼がうつ伏せに倒れた。
背中に馬乗りになり背後から鉄拳の雨を降らせる。
「どうじゃ、参ったか!」
水鬼は呻きながら首を振る。
「ま、まだだ!」
渾身の力を振り絞って仰いた。
バランスを崩して胸の上に落ちてきた王を、今度こそ両手で羽交締めにする。
「ふふ、形成逆転だな!」
ギリリと力を込めた。
「むむむ・・・!」
王の苦しそうな息遣いが漏れる。
「王先生縮むのよ!」
いつの間にか中庭に降り立ったチャン・チュンが叫んだ。
「この前私に見せてくれたじゃない!」
王はハッとした。水鬼との戦いに夢中で躰の伸縮能力を忘れていた。
「ほい、そうじゃった、戦っていると時々妖怪である事を忘れる」
シュン!と躰を縮めるとスルリと水鬼の腕を抜けた。
「なにっ!」
王を締め付けていた力が行き場を失い、自分の胸を圧迫する。
「これで終いじゃ!」
王は瞬時に巨大化した。
水鬼の顔が恐怖に引き攣った。巨大な拳が顔に向かって落ちて来る。
「やめて!」
井戸の方角から少年の声がした。
*******
王が動きを止めた。
「そのおじちゃんに、僕は命をあげる約束をしたんだ!」
「なに?」
「なに言ってるのネン・ネン!」
ノラが校舎から飛び出して来た。
「あなた、なに言ってるか分かってるの、そんな事をしたらあなたが水鬼になるのよ!」
「分かってる、だけどそのおじちゃんはどうしても家族に会わなくちゃならないんだ。それに僕が水鬼になったら僕はもう人を殺さない。これからは誰も水鬼にならなくて良いんだ!」
「ボウズ・・・」
王の巨体に組み伏せられながら水鬼が呻いた。
「お前ぇそんな事を考えていたのか?」
「お爺さん、そのおじちゃんを助けてあげて!そのおじちゃんも被害者なんだ!」
ネン・ネンが王にかけた声には、必死の思いが込められていた。
「ネン・ネンと言ったか?」
王が拳を振り上げたまま少年を見た。
「儂がこの拳を振り下ろせば水鬼は死ぬ。そうすればその後水鬼は生まれん」
「だけど、そうしたらそのおじちゃんが家族に会えなくなる」
「お主はその為だけに身代わりになると言うのか?お主の両親や友達がどれだけ悲しむか考えたことは無いのか?」
「それは・・・」
「いっときの同情心で多くの人を苦しめるでない!」
王の一括に、ネン・ネンが口を一文字に引き結んで項垂れる。王は水鬼に語りかけた。
「儂の知り合いに強い呪力を持った道士がいる、その者にお前の魂を解き放つよう頼んでやろう。最後に一度だけ家族に会えるようにしてやる」
「本当か?」
「儂は餅は搗いても嘘はつかん」
王がどこかで聞いたようなことを口走る。
「それまで大人しくすると約束できるか?」
「や、約束する」
「ならば、今から儂と一緒に王武館に戻るぞ。そろそろ陳の奴も戻って来る頃じゃ」
王がシュルシュルと縮んで元のサイズに戻った。
「お爺ちゃん!」
「なんだノラ、大声出してびっくりするじゃないか?」
王がノラを見るとなんだか興奮している。
「お爺ちゃんの知り合いって道士なの?」
「ああ、そうじゃ」
「だったらお爺ちゃんと同じ妖怪?」
「うむ、儂と同じように訳あって妖怪になって蘇った。元は万象山の道宮におった陳傳という老師・・・」
「おじいちゃんよ!」
王がいい終わらぬうちにノラが叫んだ。
「確かに儂はジジイじゃが・・・」
「違う!その陳傳と言う老師、それ、私のおじいちゃん!」
「な、なんと!」
王が驚いて目を丸くした。
「私も連れてって、おじいちゃんに会いたい!」
ノラが必死の形相で王を見た。
「おいおい爺さん、なんだか変な事になって来たな」
いつの間にか地面の上に胡座をかいていた水鬼が言った。
「なによ人事みたいに、あなたにとっても私にとっても、これは大事な事なのよ!」
ノラに怒鳴られて水鬼が頭を掻いた、もう抵抗する気は無いようだ。
「分かった、ノラも来い」王が言った。
「僕も行く!」
ジッと聞いていたネン・ネンが声を上げた。
「僕も水鬼のおじちゃんを見届けたい!」
「私も行きます!担任として責任がありますもの!」
チャンチュンも行く気満々だ。
「私は残って警察に連絡します、どうせ言っても信用してもらえないでしょうが・・・」
校長が安堵と不安の入り混じる声で言った。
「よし、では校長を残して王武館に戻ろう」
満月は既に西の校舎の屋根に沈みかけていた。
水鬼を含む一行は、真夜中の道を王武官に向かって歩き出した。
*******
「おじいちゃん!」
ノラが陳に飛びついたのは一番鶏が鳴き始めた頃だった。
陳の八卦法衣(道士の着る服)をギュッと掴んで離さない。
あれから一行は水鬼を人目に晒さぬよう、随分と遠回りをして王武館に着いた。
陳は雲林県から帰ったばかり。道場裏の井戸で旅の垢を流していた所にいきなりノラが抱きついて来たのだった。
「ノラ、なんでお前がこんな所に?」
ノラは泣きじゃくるばかりで一向に要領を得ない。
「陳、戻ったか?」
王がノラの後ろから歩いて来る。後にネン・ネン、チャン・チュン、水鬼と続く。
「なんじゃ、そいつらは?」
王は陳の質問には答えず、結論を先に言った。
「お主に頼みがある、あの水鬼の魂を解放してほしいのじゃ」
「訳を話せ」
「話せば長くなるが・・・」
「聞かなければ手の打ちようが無いではないか?」
その時、陳の胸で泣いていたノラが顔を上げた。
「おじいちゃん、蘇ったのならなんで私に会いに来てくれなかったの!」
「おお、すまんすまん、不肖の弟子を追いかけるのに手一杯で会いに行く暇がなかったのじゃ、許せ」
「おじいちゃんの意地悪!」
「おお、おお、よしよし、儂が悪かった悪かった」
陳はノラを抱きしめ、その頭をクシャクシャと撫でた。
「そういえばガオは見つかったのか?」 王が訊いた。
「惜しいところで取り逃した」
「そうか、それは残念だったな」
王にとってもガオは宿敵だ、いずれ決着をつけなければならない。
「おいおい、俺の事を忘れてねぇか?」
水鬼が痺れを切らして口を挟む。
「そうだよ、お爺ちゃんたち水鬼のおじちゃんのことを忘れてるよ」
ネン・ネンが不服そうに言う。
「おお、そうじゃった。陳、さっきの話よろしく頼む」
「じゃから訳を言えと言っているであろう」
「儂ゃ物事を筋道立てて説明するのが苦手でのぅ・・・」
「私が説明します」
今まで黙って見ていたチャン・チュンが進み出た。
「あんたは?」
「この子たちの担任のチャン・チュンです。今度の事を王先生にお願いに上がったのは私です」
「そうか、では最初から分かり易く説明してくれ」
「はい・・・事の起こりはこのネン・ネン君が行方不明になった所からですが・・・」
チャン・チュンは順を追って陳に話し始めた。
*******
「そうか、それで水鬼の魂を解放して欲しいと・・・」
王武館の食堂ですっかり話を聴き終わった陳は、腕組みをして唸った。
「魂を解放するのは容易い、じゃが家族に合うとなると・・・」
「幽霊のままでもいいんだ、一目妻と子に会えるなら!」
水鬼がテーブルに手を置いて身を乗り出した。
「お前さんはそれでも良かろうが、悪戯に家族を怯えさせる事にならんか?」
陳が水鬼の目を見据えて言った。
「おじいちゃん、なんとかならないの?」
ノラが陳の腕に手を置いて訊いた。
「方法が無いではない」
「じゃあ、それをやってよ」
「うむ、じゃがそれには王の協力がいる」
陳が視線を王に向けた。
王は人差し指を自分の鼻に向けた。
「儂か?」
「お主の躰を借りる」
「なんじゃと!」
陳がまぁまぁと手を動かした。
「人間に死者の霊が入ればその躰を乗っ取られる、しかしお主は妖怪じゃでその心配は無い。なぁに、そいつが家族に会うている間の辛抱じゃ」
「そ、その間儂はどこに居ればいいのじゃ!」
王が抵抗するように言った。
「頭の片隅にでも潜んで居れば良い、いいか、決して余計な振る舞いをするでないぞ」
「嫌じゃ嫌じゃ、他人が儂の躰に入るなど、考えただけでもゾッとするわい!」
「お爺ちゃん、助けてくれるって言ったじゃない!」
ノラが王を睨んだ。
「わ、儂はそこの坊主を助けると言っただけじゃ!」
「お爺ちゃんお願い、水鬼のおじちゃんを家族に会わせてあげて!」
ネン・ネンが必死の形相で王に迫る。
「う、うぬぬ・・・」
王の額には脂汗が滲んでいた。
「観念せい王。乗りかかった船ではないか?」
「私からもお願いします、王先生。私、先生にお願いして本当に良かったと思っているんです!」
チャンチュンが胸の前で手を組んで、王の目をジッと見つめる。その目がウルウルと潤んでいた。
王の肩がガクリと落ちた。
「万事窮すじゃ・・・」
「決まった、早速祭壇を作る。王、子龍と包も呼んでこい、奴らにも手伝わせよう」
項垂れた王は、陳の命令に抗うこともせず、トボトボと二人を呼びに行った。




