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20)礼拝堂の婚約式

 礼拝堂は花に包まれていた。


 ロバートが窓の外を見ると、庭師のジェームズと一瞬目が合った。ジェームズは得意気に笑うと窓から離れていった。


 ロバートが知らない間に、相当前からこの婚約式は用意されていたらしい。今回の観劇についても、アレキサンダーの決定はやや強引だった。礼拝堂についた途端、グレースがローズに結婚式で使うような長いベールを被せてやっていた。


 ロバート自身の知らないところで、企みごとがすすんでいたことを、影は知っていたはずだ。影から一切の報告がなかったことは少々気にかかる。だが、賢王アレキサンダーを始祖とする一族が、一族の始祖を明らかにできないロバートと、素性の知れない孤児であるローズの将来を祝ってくれようとする気持ちは有り難かった。


 大司祭の祈りの言葉に続き、誓いの言葉を述べる。婚姻の儀式と殆ど変わらない。ローズが十七歳となる早春、この場でもう一度、誓いの言葉を口にする日が待ち遠しい。


 大司祭に促され、ロバートはローズのベールを上げた。身をかがめてローズにそっと口づけた。


 次にこの場で誓う日まで、その先、二人で家族となり子どもたちを育てて、老いるまで生きていたい。かつては、主であるアレキサンダーのためであれば、いつ死んでも良いと思っていた。自分の変化に、ロバートは微笑んだ。


「大司祭様、本日は婚約式を執り行っていただきありがとうございました」

「今日はお客様でしたのに、儀式をお願いしてしまって、ご迷惑でなかったでしょうか」

ロバートとローズの言葉に、大司祭は微笑んだ。


「お二人のご婚約を神にお伝えする儀式を執り行う事ができた私は幸せものです。お二人のご婚姻を神にお伝えする日も楽しみにしております」

「ありがとうございます」


 ロバートには礼を言う余裕はあった。頬どころか耳まで真っ赤に染めたローズは、ロバートの言葉に合わせて一礼するだけで精一杯なようだった。ローズが十七歳になる早春が待ち遠しかった。



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