表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/63

12)王家の揺り籠 本家当主と分家の男2

 バーナードは王宮という大きな組織をまとめることができている以上、ある程度は有能だ。やり方には問題があるが、人がいない今、放置せざるを得なかった。


 放置していた間に、王宮の使用人達が権力に貪欲なバーナードの考え方に染まり、互いに足を引っ張り合うようになった。


 有力貴族に取り入り、利益を得ようとする者までいる。その筆頭がバーナードだというのだから頭が痛い。


 一族本家のうち、使用人として貴族社会という表の立場に出ることができるのは、今はロバートただ一人だ。バーナードよりも有能な分家の者も多くいたが、ティタイトとの戦争で戦死したと聞いている。ロバートの先祖たちと縁のある貴族もいるが、彼らがその事実を現在まで伝えているかは不明だ。ロバートは、貴族には貴族としてライティーザのために尽くして欲しいと考えていた。

 

 アレキサンダーが王位につき、ロバートが王宮を管理するようになれば、組織の一大改革が必要になる。既に、有力貴族の一部は、それを見越してのことだろう。王太子宮に関係者を行儀見習いに預けてくるようになっていた。多くが、ロバートの一族と縁のある貴族だ。本家が誰かを知っていての行動だ。


 預かる以上は責任があるので、一定人数に制限している。金さえ積めば無制限に受け入れる王宮侍従長バーナードと、本家当主であるロバートとの違いだ。


 ただ断っていたら、順番待ちにしてはどうかとローズに提案された。それ以来、数年待ちというのに見習い希望が後を絶たない。


 何もなく待たされるのも可哀そうだから一度、会って話を聞いてみてはどうかともローズに言われた。確かに一理あると思い、最初に申し込んできたときに、会うようにしている。会ってみると、紹介者と本人の意向が一致していないことも少なくなかった。


 騎士や司祭、学者や司書といった各自の希望になるべく沿った道筋をつけてやり、紹介者たちを説得してやった。多くの場合、ロバートが対応に困るくらい感謝された。その後、一人前になるかどうかは本人次第だ。本人の意向に沿ってはいるが、苦労することには変わりない。謝辞は不要だと伝えると、多くは一人前になってきますと宣言し、王太子宮を去っていった。

   

 どうしても商人になりたいと言った者に関しては、申し訳ないがカールに頼んだ。向いていないとカールが判断したならば、即刻こちらで引き取ると約束したが、未だに何の連絡もない。カールが無理をしているのでなければ、上手くやっているのだろう。


 ローズのように、初対面の他人にも笑いかけてやるような心遣いは、ロバートにはできない。愛想の無い自分は、怖がられるだけだと思っていた。ただ、相手の話を聞いてやるだけだったが、彼らは熱心に語った。出来るだけ希望をかなえてやると、彼らは喜んでくれた。それにつれ、ロバートは苦手だった他人との会話を苦に感じることも減った。


 ロバートは、バーナードの権威欲に染まった王宮を少しずつ塗り替えるつもりだった。その予定を、違えてしまったのはロバート自身だ。


その日の夜、アルフレッドの私室にロバートはいた。

「思っていたよりも早く、バーナードと揉めたな」

「申し訳ありません」


 アルフレッドの言葉にロバートは謝罪した。せめて、誕生祭の後にしておけばよかったと、後になって思った。


 ローズとの婚約に口出しされ、ロバート自身が冷静さを欠いた。既に、アルフレッドの周囲の使用人達は、ロバートの意を汲むことが出来る者に入れ替えた。最低限の手を打って気が緩んだのもあるかもしれない。


「一応、バーナードには、そのくらいのことで動揺して責務を全うできないほど、無能な男ではないだろうと言っておいた」

「お気遣いいただき恐れ入ります」


 アルフレッドが釘を刺してくれたことに感謝した。国王が誰か、最高権力者が誰かということくらい、バーナードもわかっている。


 バーナードは誕生祭に手を抜くことはないだろう。人々の規範となるという道徳観が欠如しているが。


 ローズのことを知りもしないというのにバーナードは、ローズを、あの小娘などと軽んじる発言をした。そのことで自身が冷静さを欠いたと、ロバートも自覚はしていた。


「のっぽの兄ちゃんもしっかりして下さらないと」

去り際、まだ若い侍女の言葉にロバートは肩をすくめた。

「その呼び方、今は誰も聞いていないから良いですが」

「気をつけます。泣かせたら、承知しないわよ」

侍女は、突然砕けた言葉遣いに変えた。誰を、とはいわずとも、言葉が意味するのはたった一人の少女だ。

「もちろんです」

ロバートは、婚約指輪に口づけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ