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11)王家の揺り籠 本家の当主と分家の男1

 ライティーザの王宮に仕える者にとって、最大の行事は春にある。国王アルフレッドの誕生祭だ。アルフレッドが王座についたころは、ティタイトとの戦争後で国庫に余裕がなかった。当時のアルフレッドの意向で、アルフレッドの誕生祭は、春の園遊会と併せて行われ、現在もそれが続いている。使用人達にとって、地獄のような行事だが、一日で終わるのが救いだった。

  

 行事をつつがなく執り行うには、何か月も前から準備が必要だ。直前ともなると、王宮と王太子宮の打ち合わせがある。ロバートが、王宮侍従長バーナードに会う数少ない機会だった。


 久しぶりに会ったところで、親子の会話などない。例年どおり挨拶し、手順を確認し、淡々と打ち合わせが終わった。


「そういえば、ロバート」

打ち合わせが終わった後、バーナードが声をかけてくるのは珍しい。記憶にある限り、初めてではないだろうか。

「何でしょうか」

ロバートは警戒しつつできるだけ平然と答えた。

「お前は婚約したそうだな」

婚約は、一年以上も前のことだ。あえて公にはしなかった。普段、首からかけている婚約指輪を今日はあえて左手薬指に着けている。それが目に留まったのだろう。


「はい」

「私への報告がなかったが」


 会議室の空気が凍った。王太子宮の近習筆頭であるロバートと、王宮侍従長のバーナードの父子の仲の悪さは有名だ。


「本家当主は私です。分家のあなたに報告する必要はありません」


 王宮の関係者達に動揺が走った。“家名なしの一族”あるいは“王家の揺り籠”本家の先代当主はロバートの母アリアだ。一族ではない者達が、アリアの夫であるバーナードを、一族の今の当主と誤解していることを、ロバートは知りながら放置していた。

「勝手なことを。あんな小娘との婚約は許さん」

バーナードが声を荒らげたが、ロバートは平然と応じた。

「本家当主は私です。あなたは分家という、ご自身の出自もお忘れですか。そのようなお年ではないでしょうに」

ロバートは、あえて自らが当主だということを二度口にした。


「若造のくせに私に逆らうのか」

怒鳴り声をあげたバーナードの顔は怒りのためか紅潮していた。


 本家の血筋であるのは亡くなった彼の妻アリアであり、息子のロバートだ。本家の当主であった妻を裏切り、愛人に走ったバーナードを、ロバートは本家の一員とは認めていない。本家に近い分家も皆同じ意見だ。


 分家の末席でありながら、権力欲にまみれた一族の面汚しが、本家当主の婚約に口出しするなど許されることではない。


 王宮の関係者は、バーナードとロバートを代わる代わる見て様子をうかがっていた。

「逆らうも逆らわないも、分家のあなたに、本家当主である私に関して口出しする権限はありません。ご自身のお立場をお忘れになることなく、職務を全うなさってください」


 三度、本家の当主が自身であることを口にし、ロバートは立ちあがり一礼した。

「アルフレッド国王陛下の誕生祭です。皆様のご活躍を期待しております」

「かしこまりました」

 王宮の使用人たちの返答を背に、ロバートは、王太子宮の関係者を引き連れ、会議室を出た。


 ロバートが、王家に仕える自分達一族の当主が自身であることを、明らかにしたのはこの日が最初だった。分家の中でも末席であるバーナードに媚びていた者達への、警告でもあった。


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