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11)御前会議の子弟達

 ロバートの父親、バーナードが怖いなど、誰にどういえばいいのか、ローズにはわからなかった。ローズにとって信頼できるのはロバートと、その主であるアレキサンダーと、アレキサンダーの父アルフレッドだ。グレースも信頼しているが、グレースの公務は国の慈善活動などであり、政にはかかわっていない。


 リヴァルー伯爵とはある程度の距離は保っている。バーナードは、ロバートの父親だ。どこまで信用出来るかわからない他人に言うことはできない。

 

 御前会議に各貴族が子弟達を伴ってくるようになって数か月が経っていた。年齢は様々で、ローズに対する態度には、無視も嫌悪も好奇もあった。

 

 時に、次世代だけの茶会が開かれるようなこともあった。ローズはレオンと一緒のときだけ参加した。各自、自らの家の権威を誇るだけで、建設的な会話もなくつまらなかった。


 王太子宮に戻ってから正直な感想をいうと、アレキサンダーとロバートは苦笑した。


 王宮図書館でバーナードに罵倒された後から、少しずつ様子が変わり始めた。バーナードとの騒動の話が、どこからか伝わったのだろう。ローズは、貴族の子弟達に、陰口を叩かれるようになった。悲しかった。いずれは彼らが御前会議に出席する貴族となる。


 それぞれの家に事情はあるだろう。だが、この国の貴族である以上、アレキサンダーに忠誠を誓って欲しかった。東のティタイトとは常に大河の利権絡みで小競り合いが尽きない。南のミハダルは数多い部族の集合体でまとまりがなく、間に身を隠す物が無い草原があるため、戦争にはなりにくい。だが、かの国で合法な奴隷制度に絡んだ問題が常に尽きない。


 孤児院にいた頃、周囲の貧民街では、人買いは当たり前だった。それが違法だと知ったのは、王太子宮にきてからだ。ライティーザの識字率は高くはない。法律が一般に浸透しない。グレース孤児院に続いて、王都周辺では他の孤児院も孤児だけでなく、周辺に住む子供や、大人に文字と計算を教えるようになっている。


 文字が普及すれば、情報の伝達が変わっていくだろう。国を統治する側は、流言飛語への対策を考えておく必要がある。


 やらねばならないことは、尽きないのだ。


 自らの家の利権だけに固執する彼らの姿に、ローズは幻滅した。当主は対外的な立場があるから、己の利権を声高に主張することはない。


 アレキサンダーは、それを含めて貴族を使うのが、王族の仕事だと笑っていた。

「ミハダルとの問題なら、南の貴族を使えばいい。あるいは彼らがミハダルと通じているならば、その貴族に対抗している別の貴族を使うまでだ。だから私にとって、君やロバート、エリックやエドガー他の近習達皆のように、私に仕えてくれるものが大切なのだ」


 どうせなら、各家の事情を探ろうと、ローズは子弟達の茶会に出席していた。そんなある日のことだった。

「しかしまぁ、アレキサンダー様も酔狂なことだ」

「さすが御母堂が、身分が低いだけのことはある」

「得体が知れない者を御前会議に連れてくるなんてね」


 少し遠い席から聞こえてきた会話に、ローズは身をこわばらせた。

「卑怯者はずいぶんと元気だな」

アスティングス家の長男ウィリアムが、声の方向に菓子を投げつけた。

「おや、手が滑った。大丈夫だったかな。もったいない」

「兄上、耄碌(もうろく)するにはあまりに早すぎます。せめて父上のあとになさってください」

次男ウィルヘルムの言葉を皮切りに、二人はくだらない兄弟喧嘩のような会話を始めてしまった。


 二人なりに守ってくれたのだろう。ローズは遠い席で、アスティングス家の兄弟を睨む貴族の子弟達が誰かを確認した。


 王太子宮では、ローズの悪口を言うものはいない。アレキサンダーとロバートが護ってくれる。お前は実績があるのだから誇れといってくれる。みな一人前に扱ってくれる。


 王宮ではそうでない。


 レオンは、父アーライル侯爵の代理として御前会議に出席していた。


「王宮の使用人の多くは貴族の子弟です。王宮侍従長であるバーナードは、ロバート様のお父上です。ロバート様のお父上の悪口は言いたくはありません。ただ、彼は権威主義というか、権力に貪欲で知られています。ローズ様、気を付けてください。ロバート様とバーナードは別人です。あのそっくりな容姿からは想像もつかないくらい、全くの別人です」


 貴族の子弟の同席が許されるようになってからは、毎回出席してくれているレオンの言葉に、ローズは頷くしかなかった。


「王宮の使用人も、信用できません」

そういってレオンは、御前会議では、彼の護衛の一人にローズの警護を命じてくれた。


「部下も私の警護より、ローズ様の警護のほうが、皆やる気が出ますよ」

レオンの言葉に、彼の部下全員が頷いた。

「酷いなぁ」

拗ねてみせたレオンに、笑い出した彼の部下達とローズは一緒に笑った。


 人はそれぞれだから、誰かと仲良くなったら、誰かに嫌われる。自分自身と大切な人を大切にするのを忘れないでね。


 久しぶりに、ローズの心の中で、“記憶の私”の言葉が聞こえた。


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