4)馬商人 セタ
苦笑しているレオン達の分まで、椅子が用意された。レオン達がここにいるということは、彼らは目的を達したのだろう。
周囲には、疲れたと言っているローズを、待つ商人たちがいた。見慣れない衣裳の異国の者もいた。彼らが商売を終えたということは、市は終わったのだ。
「ローズ、あなたは何をしに来ましたっけ?」
ロバートの問いに、ローズが目を見開きレオンをみた。
「馬を見にきたのに、競りはおわっちゃったの?」
「おっしゃる通りです」
レオンが笑いをこらえている。
「馬を見たかったのに、馬の値段だけ見て終わってしまったわ」
ローズが天を仰いだ。
「私が乗れる馬…練習の小さな馬は?」
「私も同じことをききたいのですが、どうしてこうなったのでしたっけ」
「そんなつもりじゃなかったの」
「いいです。慣れました。あなたは、困っている人から頼まれたら、断れない人です」
レオンや護衛達の茶や菓子まで、用意されてきた。
「お嬢さん方は、そもそもここに何しに来られたのですか?」
市を取り仕切っている商人の一人だと、先ほど挨拶にきた男の一人セタが、仲間と一緒にやってきていた。ティタイトよりも東のずっと彼方から馬を売りに来ているというセタは、このあたりでは見ない服装と顔立ちだった。
「私が馬に乗る練習を始めるために、練習用の馬を買いに来たはずだったのです」
全身でがっかりしているローズを、ロバートは苦笑しつつ慰めた。
「それは、申し訳ないことをしてしまいました。多くの者が助かりました。市場は信用が大切ですから、ありがとうございました」
実際、取り仕切っているというだけあって、セタやセタの仲間が頼んできた計算はかなりの金額だった。ローズとロバートで数回ずつ検算して合わせたのだ。数か所間違いがあり、セタ達の損を防ぐことは出来た。
「まぁ、そういう理由ならよかった」
セタの合図で馬が連れてこられた。
「私と私の仲間からのお礼です」
可愛らしい小型の月毛の馬がいた。もう一頭の見事な栗毛の馬にロバートは目を見張った。小型の馬の手綱はローズの手に渡され、栗毛の馬の手綱はロバートに差し出されていた。
「この栗毛は、あなたの損どころの値段ではないでしょう」
ロバートは競りには参加していないが、今日の市場での馬の相場はわかる。
「何、仲間全部の分をあわせたら、これでもまだ足りません」
それは、確かにその通りだった。今までこの市場の商売がどうやって成り立っていたのかが気がかりだ。
「しかし、それでは利益が出ないでしょう。この月毛の馬の分は主が払います。許可をいただいていますから、値段を教えてください」
「お礼ですから、金は受け取れません。栗毛も御引取ください」
「こちらの栗毛は確かに素晴らしいですが、いただけません」
「大丈夫です、調教はしてあります。それとも、俺からの礼を受け取れないというのか」
セタが口調を変えたが、ロバートも譲るわけにはいかないのだ。
「ですから、そういう問題ではありません」
「落ち着いてください、こちらの方はですね」
ロバートとセタの会話に、レオンが割り込んできた。




