3)カールとの再会
視察途中の町で、ロバートは懐かしい人物とあった。
「お久しぶりです」
深々と頭を下げた商人は、カールだった。
「お久しぶりです。お商売も順調なようですね」
「はい。イサカで仕事をしたことが、信頼につながって、商売が順調です。あの町でも新しく商売を始めました。数年以内に軌道に乗りそうです。良い報告をもってお伺いできるはずです」
「それは良かった」
「ローズ様より、この近くを通られるとお手紙をいただいたので、ぜひ一度ご面会を、と思い参りました。私の知りあいの店の一つがこの近くにあります。ロバート様、お時間があれば、ぜひ店にお立ち寄りいただきたいのですが」
「相変わらずあなたは私達に堅苦しい敬称をつけますね」
ロバートは苦笑した。
カールはおそらく、ローズからの何か伝言があるのだろう。だが、来いと言われてもロバートは、そう簡単に視察の一行から外れるわけにもいかない。あえて返事をせずにいるとカールが微笑んだ。
「やはり、難しいですよね。お立場お察しします。またお会いできる時を楽しみにしております。私も旅の身ですので、なかなかお会いできませんが、いずれお時間があるときに」
そういうと、カールはロバートの手を取った。
「また、ぜひ、お会いしたいと思います」
カールに別れを告げ、部屋に戻ったロバートは、カールに握らされた手元の紙を見た。いくつかの商家の名前と貴族の名前があった。
「ローズに頼まれたとはいえ、自ら来るとは。義理堅い男のようだ」
紙片をみたアレキサンダーが感心した。北からの献上品に紛れていた窮状を告げる手紙と、内容はほぼ一致していた。
「北のウィルザ国が関係しているとは思えませんが」
ウィルザとの境には夏でも雪を頂く高い山々がそびえる。越えられないわけではないが、越えてまで侵略する意義がないと、互いに不可侵の状態が続いていた。
「南のミハダル国や東のティタイトがわざわざ手を伸ばすとは思えん。残るは西のリラツ国だが」
西のリラツ王家には、直近では先々代のライティーザ国王の姉が嫁いでいた。東のティタイトとは戦が絶えないことから、西との同盟の維持がライティーザには必要だった。同じく同盟を維持したいリラツ王家の思惑もあり、王家の間では互いに数世代毎に婚姻関係を結んでいた。
「リラツの第三王子が、いまさら何か企んでいるということはないだろうが」
アレキサンダーの王太子就任の際、母が男爵家出身という血筋を嫌った一部の貴族がいた。彼ら反対派は、リラツの第三王子を王太子に迎えようと動いたが、第三王子自身に断られて頓挫したという経緯がある。
「まだ、他国が絡んでいるという証拠はありません。地元貴族だけの問題の可能性もあります。北は併合してからの歴史が短いですから、未だ独立の機運があっておかしくない。油断はできませんが、他国が必ずしも絡んでいるとは限りません」
「そうだが、これからまた鎖帷子を着込んで生活すると思うと、気が重くてかなわん」
「立場上、御諫めするべきですが、私もそう思います」
アレキサンダーとロバートは顔を見合わせて笑った。
「覚えたか」
「えぇ」
ロバートは、カールに渡された紙に火をつけた。




