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20)ロバートとアレキサンダーの約束

ローズを部屋に送り、いつも通りロバートは執務室に戻った。部屋にいたアレキサンダーは、いつになく厳しい顔をしていた。

「いかがされました」

「ロバート、先ほどローズに言っていたこと。私を、己の命に代えても守ると言っているお前が言うと、全く説得力がないことはわかっているのか」

「それが私の務めです」

迷いなく答えたロバートに、アレキサンダーが苦々しい顔をした。


「愚か者。自分も守って、私も守れ。前から言っているだろう」

「最大限努力いたします。しかし、それがかなわない場合は、ご容赦いただきたく存じます」

二人の間では、この会話は以前から何度か繰り返している。ロバートの態度は常に変わらない。普段は、アレキサンダーが勝手にしろといって、この会話は終わる。


 アレキサンダーは、今日は、会話を終わらせるつもりはなかった。ローズが現れ、ロバートも、遺される側になった場合のことを考えるようになったのだ。


「私の乳兄弟はお前ひとりだ。庶子も含め兄弟などいない。お前に死なれたら、最も信頼できるものを私は失うのだぞ」

「光栄に存じます。ですが、今なら、ローズがいるでしょう。あの子はあなたにお仕えするため、一生懸命学んでいます。万が一、私の身に何かあった場合でも、王太子様を裏切るようなことはしないでしょう。何をなすべきかということを常に考えることが出来ると思っております」

 ロバートの返事には、一切、何の迷いもなかった。今までは、アレキサンダーは、自身の命を軽んじるロバートの発言にいらだち、感情のままに言葉をぶつけていた。今日はそうしないと決意していた。


「婚約者が身代わりになって死んだ場合でもか?」

「はい。アレキサンダー様がローズの諫言を聞き入れなくなった場合は別でしょうが」

 ロバートの言っていることは正しいだろう。万が一の時でも、ローズならロバートのいうとおり、諫言に耳を傾ける限りは自分に仕えてくれるだろう。だが、問題はそこではない。


「単純にお前に死なれたくないと私は思っている。お前に死なれたら私は悲しい。お前は誰かのためにローズが死んだらと案じている。私は私のためにお前が死ぬことを案じているのだ。わかるか」


 一瞬、虚を突かれたようになったロバートの顔に、ゆっくりと笑みが広がった。

「おまけに、お前の身に何かあったら、ローズが泣く。ローズが泣いたら、私がグレースに何と言われるか、考えたことがあるか。おまけに、ソフィアが口を利けるようになってみろ。妻と娘に罵られ、妻が妹とかわいがる娘には泣かれる。お前に取って代われる者などいない。ロバート、お前は死なずに私を守れ」


「承知いたしました」

ロバートの返事にアレキサンダーは、一応は安堵した。

「要はそのような状況にならないことが肝心ですが」

「頭が痛いことを言ってくれる」

実際、国内外問題が山積している。


「リヴァルーではない優秀な宰相がほしい」

「明日から候補が来ますから、選定なさってください」

アレキサンダーが、最も宰相として望んでいるのはロバートだ。

「つれないやつだ」

アレキサンダーの言葉に、ロバートは何も答えなかった。


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