14)布石
先祖たちにより良い報告を届けるためには、解決しなければならないことが少なくない。その一つは、かつてロバートがアレキサンダーに指摘したことだ。アレキサンダーの治世を支える者たちが不足していた。
ティタイトとの戦争で、多くの貴族の若い子弟が戦死した。跡継ぎを失った貴族は存続のために養子を迎えるなどしたが、その後の混乱もあり絶えた家もある。その子供達の世代であるアレキサンダーと同年代である貴族の子弟はそもそも人数が少ない。
アルフレッドも、アレキサンダーの治世を支える者の選定を始めると先日宣言した。次の御前会議から、後継者の世代を連れてくることが許可されていた。
御前会議が荒れるのは見えていた。彼ら後継者たちよりも身分は劣るものの、既に功績を立てた孤児のローズが、嫉妬の的になることを、アレキサンダーとロバートは懸念していた。
「子供同士の喧嘩のようなものです。孤児院で慣れていますから、大丈夫です」
ローズは気丈なことを言うが、問題はそこではない。下手に彼らの自尊心を傷つけ、逆恨みされる危険があった。
「ローズ、喧嘩ではないのです。あなたが、自分のほうが正しいと思っても、反論してはいけません。論破など、絶対に駄目です。ローズ、あなたが王太子宮に来た当初の茶会とは違います。ローズ、あなたは今よりも幼かった。ご高齢の重鎮の方々が、孫のようと言ってかわいがってくださったようにはなりません。相手は年齢が近い、高位貴族の子弟です。批判されたことなどない者がほとんどです。己の否を指摘されていることなどなく、育っています。逆恨みされて、偽証や冤罪であなたを殺そうと目論むものが現れかねません」
常に王家に近く仕えてきたロバートの先祖の中には、そのようにして命を落としたものも、少なくないのだ。
「アレキサンダー様のように、諫言に耳を傾けてくださる方は少ないのです」
ロバートが、自身の諫言を自覚していることに、アレキサンダーは軽い驚きを覚えた。
「私、そんなに諫言を言っていないはずよ」
ローズが自覚していないことは、アレキサンダーの予想通りだった。




