12)建国の双子王
ライティーザの建国の父と言われる双子王のうち、賢君と讃えられ、今のライティーザを作ったのが賢王アレキサンダーだ。その賢王からアレキサンダーは名前を頂いた。賢王アレキサンダーは片足が不自由で生涯杖を必要とした。双子の兄マクシミリアンはそんな弟の敵を屠るため、戦いに明け暮れ武王と讃えられた。
ライティーザの建国史は戦争の歴史だ。戦に優れた双子の兄武王マクシミリアンが周辺国を片端から打ち破り併合した。
武王を恐れる者も多く、彼の進軍を聞くだけで服従を宣言する国も少なくなかった。武王マクシミリアンが「俺の大事な弟に危害を加える奴を、片端から打ち破っただけだ」と、子供の喧嘩のようなことを語っていたのは、冗談でも誇張でも嘘でもなく真実だとされている。
賢王アレキサンダーは、戦いに身を置き続けた双子の兄を支えるため内政に勤め、賢王として名を残した。
創成期、周辺の国々を次々と打ち破った武王マクシミリアンの妻はソフィアといった。奴隷だったソフィアは知略に優れ、夫を支えたと言われている。
賢王アレキサンダーの妻ヴィクトリアも奴隷だったが、姫騎士と呼ばれるほど剣に優れ、夫を守った。武王と賢妃、賢王と姫騎士の四人は、ライティーザの創始者だ。
ライティーザに奴隷制度がないのは、奴隷となり苦労した妻たちへの、双子王の心遣いによるものだとされている。
賢王アレキサンダーは長く生きたが、武王マクシミリアンは戦いの傷が元で早逝した。
「兄上と並んで、今のこの国を見たかった」
晩年、賢王アレキサンダーはそう繰り返した。その願いを少しでも叶えるためにだろう。武王マクシミリアンと賢妃ソフィア、賢王アレキサンダーと姫騎士ヴィクトリアの四人が眠る棺は、聖アリア大聖堂の地下に並べて安置されている
「賢妃ソフィア様に、名前を頂いたと言う報告に行ってまいります」
子が生まれたら、聖アリア大聖堂に眠る建国の父達とその妻たちに報告に行くのが、ライティーザ王家の習わしだった。
「お前が生まれて以来の良い報告だから、きっと喜んでくださるだろう」
アルフレッドの言葉に、アレキサンダーは、生まれることのなかった正妃の三人の子供たちを思った。生まれていればアレキサンダーにとっては異母弟や異母妹になっていたはずだ。
一つ釦を掛け違えれば、ソフィアも、生まれてこなかった異母弟や異母妹と同じ天の国に旅立っていたのだ。
正妃と側妃を喪った後、アルフレッドは誰とも再婚をしなかった。今も広い王宮で一人暮らしている。数少ない心許せる相手であるはずの乳兄弟アリアとその兄達は既に亡い。
アルフレッドは、ローズが王太子宮で暮らすと決まってからは、数日に一度、ソフィアが生まれてからは、ほぼ毎日王太子宮にやってくる。
妻と娘がおり、乳兄弟のいるアレキサンダーには、うかがい知ることのできない孤独の中に父はいるのではないだろうか。
「父上がほぼ毎日いらっしゃるのも、ソフィアが愛おしいためと思えば、仕方ないな」
「それはようございました」
アレキサンダーの言葉に、ロバートがほほ笑んだ。
ほぼ毎日訪れるアルフレッドを邪険にするなと、アレキサンダーは昨夜、ロバートに言われたばかりだった。




