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芳寛さま(2018/9/2改訂版)


ドロードラング領での結婚式から8年後の話だそうです:+((*´艸`))+:。

「15キロのドレス」より(笑)


【追記】(2018/8/26)にいただいた作品より衣装が豪華になりました。




『門出』






『お嬢とパレードをしたい。』


お嬢の引越しが決まった日、日頃わがままを言わない子供達がそう言った。


「僕たちお嬢からたくさんのモノを貰ったよ?あと一年でアンドレイ様と他の領地に行っちゃうんでしょ?

だから僕らも何か思い出になるモノをあげたいの。」


コトラ隊を卒業したロイが、代表してそう言った。

サレスティアは初めて此処に来た時は、まだ幼児だった。毎日おんぶに抱っこしていたあの子がもう娘から一人前の女性へと変わっていった。

この子ももう体つきは細いががっしりとした男子特有のものに変わりつつある。

思えば長く一緒にいたものだ。


お嬢達の衣装も自分らで作りたいと子供達は言ったが、お嬢が知ったら「勿体ない!」と怒るのが目に見えるので、大人達と子供達は相談し、お嬢には内緒で作る事にした。



******



「………で、みんなで作ったのがコレなの?」


私はあんぐりと口を開けた。いやだってすんごいんだよ?

前世で見た年末の歌合戦の、某女性演歌歌手の名物衣装みたいなんだもん……。


ヒズル国とセン・リュ・ウル国の民族衣装を掛け合わせたような婚礼衣装だった。

新郎の衣装はインナーにハイネックの前を合わせて飾り紐で肩近くを結ぶようなシャツとズボンを着て、更にその上に脇にスリットの入った着物の様な膝下までの丈の上着を羽織り、腰を帯で結ぶ。

新婦の方はキャミソールのような服を着てその上に襟と袖口とフリルがついたドレスを着てフリルを襟と袖口から覗かせて新郎と揃いの上着を羽織り幅広の帯で結ぶ。上着のスリットの間と裾から、パニエのようにヒラヒラした布が重なったドレスの裾がはみ出て可愛らしい。


その上着がすんごいんだ……。

下地が光沢のあるアイボリーなのに、裾の方から腰下まで朱雀の羽と青龍の胴体がうねる様にガラスビーズで刺繍されているの。

新婦は振袖でそこにも半分程朱雀の羽と青龍の胴体がガラスビーズで刺繍されている。

帯は深緑の亀甲紋で、飾り紐が小さな貝殻が同じ大きさのビーズで首飾りの様に細かく綺麗に巻きついていて、亀様の帯留めに華を添えている。

コレだけでも派手なのに、新婦のティアラがすごい。

コレ、ティアラっていうよりも冠だよね……それも能とかで被るやつ。銀色のミニ朱雀が羽を広げて(この羽が閉じたりもできる!)銀冠の上に鎮座しているの。

んで、冠の台座から小さな貝殻が同じくらいの大きさのビーズと数珠の様に繋がれたのが、複数連結されて垂れ下がっているんだけど、要所要所に小さいシロクロがいて二本の飾りを交差させて繋げられていて、その先っぽには白虎と同じ白と黒のフサフサが揺れているの。

ついでに新郎の冠もあるんだけど、こっちは金色のミニ青龍(手で形を動かす事ができる!)前後に鐔のある金冠の上に鎮座して、鐔に目線の位置まで連結された水晶が暖簾の様に垂れ下がってるだけで、新婦のと比べるとシンプルだ。


コレをロイ達が作ったんだって………ウチの子達、すごい。

コトラ隊を卒業した子達はそれぞれの親方達に見習いで修行している。

兼業農家でやってる子がほとんどだけど、あまりのクォリティと派手さに絶句した。


「子供達が一生懸命縫ったんですよ。コレを着てアンドレイ様と一緒に山車に乗って、パレードに出て欲しいそうです。」


あまりの派手さに引いたけど、子供達のキラキラした瞳に負けました。




******



遊園地の営業最終日の夜── 星が霞むくらい明るいぼんやりした満月の夜だった。

大地の隅の方へ雲が退かされ、領地の周辺には月夜が支配する。

その満月を囲む様に二重に真円の虹がかかっている。よく見れば遠くの雲にも虹が写って虹の雲の様だ。

その月に向かい真っ直ぐに地上から炎が飛んで空中で弾けて白い何かがくるくると降り始めると、音楽が始まった。


遊園地の街路の両脇の街灯に張られたロープの外側にお客様が並んでいる中、コトラ隊とそれを卒業した子供達が踊りながら行進してくる。

コトラ隊はいつもの衣装だけど、卒業生は揃いのドレスとスーツだ。

指先から足並みまで揃ったダンスと可愛い衣装に、お客様の感嘆の声が上がる。

そして行列の奥から馬車3台分の大きさの亀が現れた。

亀様の目が光り、その姿がライトアップされた瞬間、複数の人影が街路の中央に躍り出た。


「漸く姿を現したな、四神・玄武!」


時ならぬ刺客達に観客は皆目を見張る。だが次の瞬間、ボムっ!と煙幕に彼らが包まれ、煙が晴れた後に刺客達が消えているのを見て、今のはなんだったんだ、と首を傾げたのだった。



******



刺客達は自分らが煙幕に包まれたまでは覚えていた。

有事に備えて散会しようとしたその時、盾を構えた男達に跳ね飛ばされ、怯んだところで武器を鞭に絡め取られ、更には素早い何かに蹴り飛ばされタコ殴りされた挙句、蜘蛛にぐるぐる巻きにされてしまった。

手も足も出なかった。ぐうの音も出ない程の完敗であった。


「おのれ邪教の徒!」


リーダーらしき男が唯一動く口で喚く。


「四神討伐派の残党か……まだ諦めてなかったのか。

バーナードさんとクラウスさんの読み通りだったなぁ。流石戦中派。」

「ふふっ、皆さんも腕は衰えていない様ですね。」

「あはははは!この領地じゃあ腕が衰えたらやってけないからねぇ!」


ニックとクラウスとネリアが男の罵声をスルーして笑顔で会話する。


「……ドロードラングとは生き難い土地だったのですか?」

「まあ、ここらは魔物が昔からウヨウヨいる所でのぅ。昔から魔物が出れば狼煙を上げて周りの領地に知らせ、他領も巻き込んで退治していたんじゃよ。

他領からの援軍が間に合わぬ場合もあるので、自然と腕の立つ者か逃げ足の速い者しか生き残れなんだ……。

先先代のジャンは『にくぅぅぅーーー!』とか言って、大喜びでどこでも狩りに来とったよ。

まあジャンの死後は、居住区の周りに堀を掘って魔物を近寄れぬようにしたから、人的被害は減ったがのぉ」


モーガンの戸惑った問いにバーナードが答えた。

その言葉にウンウンと当時を思い出すバンクス領主に対し、カーディフ領とダルトリー領の領主達は顔を青くした。

どうやら初耳だったらしい。


「ヤンさんとウォルから連絡です。

やっぱり彼等は陽動だったそうです。遠距離から射ろうとしていた者達と観客に紛れていた者達がおり、その中に魔法使いもいたそうです。

『私服警備の係が速やかに捕獲し、亀様に確認してもらったが、後は不審者は見られない。引き続き警戒して警備を続行する』との事です。」


私服警備班と連絡を取ったヨジスの報告に、皆一応胸を撫で下ろした。


『おう、終わったか?』


そこにタツノオトシゴと白いトラ猫と赤い小柄な孔雀が、空から花と共に降りて着た。

ふんわりふわりと大きく回りながら、半透明な花がゆっくりと降りてくる。


「こちらは恙無く。ご助力ありがとうございます。

すごいですね。この月夜もそうですが、こんなに軽い花があるなど、初めて知りました。」

『ふふっ、そうじゃろう?サリオンと一生懸命練習したのだ!』

『今夜はサリオンと白虎とミシルと青龍が大活躍じゃのう。

この虹を出すのは容易にではなかろうに。大気の水と風が上手く調和しなければ、こうはいかん。』

『しかしこの花も珍しい。風花か……もう滅んだと思っていたが、まだ残っていたとは……』


一度玄武が滅ぼしてしまった砂漠の国の国花だった。

年に一度雨季の後に咲き、風に飛ばされた先で根付くのだという。

南のとある霊峰の雲と同じくらい高い頂上に大きな深い深い穴があり、その底の大地に昔滅んだ動植物が生息していたのだ。

朱雀とシュウが穴の底に興味を持って立ち入らなければ、発見できなかっただろう。


「花なのにまるでシャボン玉の様だねえ。ちゃんと雌しべや雄しべもあるのに、花びらが半透明で虹色の光沢で、まるでガラスでできてるみたいだねえ。」


チムリが眼鏡の縁を抑えながら、花を手に取り観察する。


「おっ!そろそろお嬢達の出番の様ですよ?

みんなで観ましょうよ!」

「そうだねぇ。弟子達の作品を見守ろうじゃないか。」


コムジの声に皆が空中に浮かんだ映像に目を向けた。



大亀の目がピカピカ光ると、同時に亀の甲羅の線も光る。といきなり甲羅のてっぺんから白い煙が地面へ滝のように流れて落ちた。

パカリッと天辺が蓋の様に空いて後方へ傾いたと思ったら、ゆっくりと朱雀と青龍の衣装を着たサレスティアとアンドレイが甲羅の中から上がってきた。

わぁぁ!と観客達が歓声をあげるが、サレスティアは少し緊張で笑顔が強張っている。


「まっ、まじんがああぁぁぁーーーっ!!!魔神が現れたああぁぁぁぁぁーーー!!!」

「この世の終わりだぁ「やかましい!!!」!!」


目を限界まで見開き絶叫した討伐派達をニックが殴って気絶させた。


「魔神だろうが何だろうが、良いんだよ。皆、あんなに楽しそうなんだから。」


彼が見つめる先には笑顔でお嬢を迎える子供達の姿があった。

パレードの音楽がワルツに変わる。

アンドレイがサレスティアの手を取り踊り始めると、パレードのコトラ隊も卒業生達も踊り始めた。

街路が光る花々で埋まる。コレは魔法科の合宿組の作品だ。幻なのでステップに引っかかる事はない。

風花がくうるりくるりと降りてきて、ダンスで生まれた風に煽られ、またくるくる散って飛んでいく。

まるで夢のような光景であった。


「みんな、大きくなったなぁ〜。」


感慨深げにダルトリーが呟いた。

小さかったあの子はもう嫁いで他領へ行く。

元からいた子供らは皆所帯を持った。

後から連れてきた子供達ももう大きくなり、もうコトラとは言い難い。

自分らは元を辿れば、太陽の下を歩けるような者ではなかった。

それをジャンとクラウスに引きずり出され、お嬢に振り回されて、ここにいる。

昔の自分では考えられなかった自分がいた。


「ふふっ、それでもまだまだ未熟な者ばかりですよ。

まだまだ伝授してない技術もたくさんあるんです。我々もうかうかしてられませんよ。」


ハンクが寂しそうに、どこか嬉しそうに言った。


映像では白虎の山車に乗ったサリオンが妻と共に現れた。

二つの山車に橋が架かり、その上でサレスティアからサリオンにハリセンが渡された。

亀様が再び眠って目を覚ました時、寝ぼけたならコレで目を覚まさせるよう後世に残して欲しいと伝えると、四神達の悲鳴ならざる悲鳴が聞こえ、領民達を笑わせた。


「── お幸せに……。」


誰からともなく呟かれた言葉は、満月に吸い込まれた── 。






___________ 終







全員出てくるかと思いました(笑)


改めなくても『贅沢』の登場人物多いですね…(^-^;

しかし!作者よりも人物像がしっかりしているこのお話!

すごくないですか? 


お嬢のラスボスぶり!(笑)

そして引き継がれるハリセン!(爆)


ドロードラング領は今日も平和です(笑)


芳寛さまー!ありがとうございました!!.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.





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