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俺臭いますか?

「俺臭いますか?」


 翌朝、変装なしで異空間ハウスの門を出て部屋に戻るとすでに待っていたロノリアが突然近づいてきてスンスンと鼻をならした。


「あらごめんなさい。いい香りがしたものだからつい・・」


「そんなことより修行の準備の方はどうなって―」


「そ、そんなこと!?リーシェくん!あなた今世界中の女性を敵に回したわよ!!」


 (騎士、盗賊に続いて女性まで敵に回るのは勘弁して欲しいな・・)


「すみませんが俺も余裕がないんです、それにあなたの頼み事なんですよ?」


「あなたじゃなくリアよ。いいわ、今回は引いてあげるわ」


 ものすごく機嫌の悪そうな表情だった。きっと納得はしてない。それはわかるが俺も命がかかってる以上修行の件を優先したい。ロノリアもそこはわかってくれるだろう。


「リアさん、修行の準備の方はどうなっていますか?」


「・・・えぇ。もう済んでいるわ」


 少し間をあけて落ち着いたロノリアは扉の方に振り返るとついてくるように促し部屋を出た。

俺は追うようについていくとここに来るときとは違う階段を下り始めた。


 階段を一番下まで降りたところに鍵の付いた扉があった、ロノリアがそこを開くと上下左右を石レンガに囲まれた少しばかり広い空間が広がっていた。


「ここが昨日言っていた地下ですか」


「そうよ、ここには元々牢屋があったのだけど必要なくなって檻を取り払ったのよ。でも元牢なんてとこだれも寄り付かなくて、遊ばせてたってわけよ」


「なるほど。確かにいいイメージじゃないですよね」


「それでね?修行の相手はもう少ししてからくることになってるの。武器もその人に頼んでるわ。」


「それじゃあ来るまでどうしましょうか?」


 そう聞きながらロノリアを見るとニコニコとした顔でこちらを見ている。


 (なんだろう・・・怖い・・・)


「リーシェくーん。腕立て伏せって知ってる?正規な軍属の騎士様なんかが基礎訓練でするんだけど」


「は、はい知ってますよ。俺の故郷にも体を鍛えるの方法として有名でした。俺もたまにやってましたよ」


 (なんだ腕立てかよ、リアさんも驚かせてくれる)


「それなら話が早いわ。でもね、鎧が用意できなかったのそれでね―」


 (ん?鎧?何言って―)


「ヘビィタートルの子供の甲羅を用意したからそれ背負ってやってくれる?」


 そう言うとロノリアは扉の死角になる位置に置かれていたウミガメサイズの亀の甲羅を指さした。


 (その修行知ってるわー最終的には手からビームでるやつの修行だわー)


「じゃあ早速やりましょう?早く背負ってきて」


 ロノリアに急かされ俺は甲羅を背負った。

ズシっと背中に重量を感じるが思っていたほどの重さはなかったことに安堵して俺は腕立て伏せを開始した。


「1・・・2・・・3・・・4・・・」


 この世界にきて初めての腕立て伏せは重い甲羅を背負っているのにも関わらず元の世界の頃よりずっと余裕を持ってできていた。


 (元の身体よりこの世界の身体のが確実にすごいってことだよな。レベルも上がるし、この分なら犯罪者顔兄弟もなんとかなるかも―)


 考え事をしていた俺の背中に更なる重量を感じた、ふと自分の影を見ると甲羅の上に人の影が見えた。


「なんか余裕ありそうだったから乗っちゃった」


 (重くなったとか言ったら今度こそガチで怒られそうだよな・・。耐えろ!耐えるんだ!)


「213・・・214・・・215・・・」


「がんばれがんばれ~」


 しばらく続けて600回を迎えようとしたところで汗で手を滑らせて潰れてしまい、また1から始めようとしたとき地下の扉が音を立てて開いた。


「店長きたよ~!」


「レソちゃんありがとう」


 元気よく入ってきた女性は昨晩受付にいた女性にそっくりだった。


「昨日受付で会ってると思うけれど改めて紹介するわね、うちの従業員のレソートちゃんよ」


「昨日のイケメン童貞のお客さんちーっす、レソートちゃんでーす、レソちゃんって呼んでね?」


「ど、ど、ど、ど、童貞ちゃうわ!」


「またまた~。あそこまでキョドってきた人、ウチはじめてみたよ。思わず素で笑いそうになったし」


 (こいつマジで昨日の受付の人と同一人物か?二重人格、いや悪魔に憑依されてるって言われたほうが納得するぞ)


「レソちゃんはね?元は諜報関係で潜入の仕事をしていたの」


「つまり演技だったと?」


「そそ~、イケメン童貞さんも騙されちゃった?ウチに恋しちゃった?」


「イケメン童貞言うな!俺はリーシェだ」


「へぇ~女の子みたいな名前なんだね。でも優しい顔だしあってるじゃん」


「お、おう、ありがとう・・」


 必死の思いで考えた名前を合っている言われたことが嬉しくて照れてしまった俺をニヤニヤと見つめるレソート。

するとロノリアが手を叩いた。


「はいはい、自己紹介は済んだんだし話を続けるわよ。リーシェくんにはこれを使えるようになってもらいます」


 ロノリアはレソートが持ってきた袋からナイフより長いがショートソードというには少し短い剣を取り出してそう言った。


「それは・・?」


「ショートソードの1種なんだけど目立たず携帯しやすいから護衛剣なんて呼ばれたりするものよ」


 そう言うとロノリアはその剣を俺に持たせた。見た目よりも重みを感じる。


「へぇ・・」


「そして私の信用できる人の中で一番この武器を使えるのがレソちゃんなのよ」


 それを聞いて俺はレソートに目をやると自信たっぷりという感じで笑顔を向けてきた。


「潜入で使える武器では一番仕様できたからね~。こんな風にさ~」


 そういうと次の瞬間俺の首にはレソートの護衛剣が当てられていた。


 (マジかよ・・)


「ちなみにウチいまスカートの中からこれ取り出したんだけど、そこそこ鍛えれば取り出すときにウチのパンツ見えるよん」


 (マジかよ!!)


「やる気になったみたいね。じゃあレソちゃん今日からよろしくね。それと夜には受付でてもらうからほどほどにね。」


「店長了解しました~」


 そう言うとロノリアさんは扉の外へ去って行く、レソートは扉が閉まるまでロノリアの背中に敬礼していた。


 「それじゃあリーシェ、はじめよっか。先に言っておくけどウチは剣突き合わせてのチャンバラごっこはしないよ、この剣を身体の一部のように扱えるようになる訓練。それだけをリーシェに叩きこんであげる」


「よろしくお願いします、先生」


 雰囲気を読んで俺がそう返すとレソートは不満げな顔して言い返してきた。


「先生ってなんかかわいくないよね~。師匠がいいかな~レソちゃん師匠!レソちゃん師匠とお呼び!」


「はい!レソちゃん師匠!」


 こうして修行は開始された。

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