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その日の夜のことです。エツはいつもそうしているように、塔の窓から外を眺めていました。心に浮かぶのはもう随分会っていない、王や三人の女王、城のみんなのことです。エツは、本当は寂しくて寂しくてしかたありませんでした。心は冷たく、暖かみを求めていたのです。
そんな時、エツの目にはいつもとは違う、国の景色が見えてきました。町の広場に枯れ枝が組まれ、高い炎の柱が上がっていたのです。家々の扉の脇や、庭でも小さな炎の粒が光っていました。町だけではありません。城でもあちこちで小さな火の光が照り、城を飾っていました。雪の白が光を反射して、いつもより夜の町がうんと明るく見えました。そして炎に照らされた、人々の笑顔が見えました。
「火を見ていると、それだけで暖かな気持ちになる。お母さんはそう言っていました」
振り返ると、大広間にはオリとイチがいました。
「みんな冬が嫌いなんかじゃありません。冬は、暖かさの価値を教えてくれる、なくてはならない季節です」
「そうよ、お姉様。私も冬が好き。冬の寒さのおかげで、私も大事なことを学べたわ」
夜の町を炎の光できらめかせる。その案が浮かんだオリは町に降り、ヒコにも助けてもらって町中の人々に協力してもらえるよう頼みました。そこには、生まれて初めて町に降りたイチの姿もありました。春の女王様イチに敬意を表して、町のみんなは素直に協力をしました。イチの働きかけにより、城の皆も動いてくれました。かくして、炎のきらめく夜の国の景色は完成したのです。
「お姉様、城へ帰りましょう。炎の明かりの下、皆が宴を催しています。皆がお姉様の帰りを、待っていますわ」
「町のみんなも、冬の女王様にお礼が言いたいのです。こんな素敵な夜は、エツ様がいなければあり得なかった。お願いです、戻ってきてください」
エツは静かに、暖かな涙を流しました。
二人の行い、言葉に胸を打たれた冬の女王様エツは、窓の桟から降りました。そして、三人は塔を出て、城へと帰って行ったのでした。




