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朝二人が目覚めると、辺りは吹雪で真っ白でした。天候は最悪。太陽も、塔も何も見えません。
「私に任せて」イチはそう言うと、雪の舞う外へ出ました。
彼女が翼を広げるように両手を広げると、空中に舞う雪の粒は瞬時に溶け、水になりました。イチの立つ地面の雪は溶け、土が見えました。範囲は広がり、徐々に風景が変わってゆきます。オリは我が目を疑いました。雪の白が消え失せてゆき、辺りの木々が芽吹き始めたのです。草が伸び、雲が裂け、光が差し込みました。
小鳥が寄って来て、イチの足元では一輪の小さな花が咲きました。オリは感嘆のため息をつきました。
「すごい……」
天候はすっかり変わり、晴れに変わっていました。少し疲れた様子のイチが振り向きます。
「すごい! すごいわ! イチ!」
「あなたほどじゃないわ」イチは照れたように言いました。
二人は塔へ向かって歩き出しました。オリは汗が吹き出るほどの暖かさを感じ、毛皮を脱ぎました。イチは昨日とは打って変わって、胸を張って堂々と歩きます。二人は並んで歩き、ようやく塔へと辿り着いたのでした。
*
「大広間にエツお姉様はいるはずだわ。彼女、そこにある窓から外を眺めるのが好きなの」
イチはそう言って大きな両開きの扉を開きました。彼女の言った通り、その部屋に冬の女王様、エツはいました。奥の窓、桟のところに腰をかけ、外の景色をじっと眺めています。
「お姉様!」
イチはそちらに駆け寄っていきます。オリもそれに続きました。すると、先ほどまでイチの力によって暖かさに包まれていた身体が、エツに近づくにつれ、冷んやりしてゆくのを感じました。
エツはゆっくり振り返りました。長く、まっすぐな黒い髪。幼さの残るイチに比べて大人びた顔は、どこか寂しげです。
「イチ。あなたが近づいて来ていたのは感じていたわ」
「お姉様、交代の時よ。どうして城に戻って来てくださらないの」
エツはふい、と外の方を向いてしまいました。寒さが足元から昇ってきて、オリは震え、こっそり毛皮を羽織りました。
「みんな、私のこと、嫌いなんだわ」
彼女の声は、泣き濡れているように聞こえます。
「みんな、冬が嫌いなのよ。私、いつもここから町を見下ろしているから知ってるの。町に住む民も、城の皆も、動物たちも。季節の中で冬が一番嫌い。寒さに苦しむ、うんざりするような顔でわかるの、私」
「じゃあ、なおさら……」
オリはおずおずと言いました。「戻ってきて、くださらなくっちゃあ……」
「合わせる顔がないわ。私はみんなに嫌われてるっていうのに、どんな顔で城に戻ればいいの。それに……」
振り向いたエツの頰には、白く光る涙が流れていました。雫は顎に達し、地面に落ちました。それは、すでに凍っていました。
「私を愛してくれない人を、私がなぜ愛さなきゃいけないの。皆が苦しもうとも、私はなんとも感じないわ!」
雪を含んだ強い風が、窓からゴオウ! と吹いて、オリとイチを吹き飛ばしました。二人は手を取り、なんとか大広間の出口に向かい、逃げ走ります。両開きの扉をやっとの思いで閉じて二人はハァ、とため息をつきました。
「困ったわ。あれじゃ話も聞いてくださらない。オリ、何か考えはない?」
オリはうぅん、と頭を悩ませました。彼女は冬が嫌いではありません。それをなんとかわかってもらいたい。それさえ伝われば……
「……そうだ!」
オリに、一つ考えが浮かびました。




