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王様はうぅん、と唸りました。なぜなら、目の前にいる少女は今まで志願してきた誰よりも小さく、頼りなかったからです。
「オリ、といったかな」
「はい!」彼女は姿勢良く、元気良く答えました。
「君がエツを塔から降ろすことが出来たとして、君は私に何を望む?」
王様は、女王様を交代させた者には褒美を取らせる、と約束していたのです。
「王様。私は春になること、それだけを望んでいるのです。それ以上は何も望みません」
きっぱりとそう言い切ったオリに、王様は面食らいました。
「良いのではないですか。王よ」
そう言ったのは秋の女王様、ミンでした。
「彼女は欲のない清らかな心を持っているようです。彼女であれば、エツの心を開くことも可能なのではないでしょうか」
「私も賛成」
ミンの意見に乗ったのは夏の女王様、トコです。
「今までの志願者はみんな力ばっかりあったり、頭だけ良かったりで物足りなかったわ。確かに彼女はまだ若いけれど、森で育った彼女なら塔まで辿り着くことも可能なんじゃなくって? そもそも塔まで辿り着かなければ話にならないわ」
「イチ、あなたはどう思う?」トコが聞きました。春の女王様、イチは大きなあくびをしました。隠そうとする気もありません。
「別に。いいんじゃない?」
ハァ。王様は困ったようにため息をつきました。
「イチよ。そもそも君が塔に行こうともしないことが、冬が終わらない一つの原因なのだが。責任は感じないのかい?」
「エツお姉様が出たがらないんだから仕方ないじゃない」イチは左手の爪を見ながら言いました。
「それに、誰が行ったって同じよ。エツお姉様は一度言い出したら聞かないんだから。冬は終わらない……私は春の力で暖かいから別にいいの」
二人の女王、ミンとトコは顔を見合わせました。
「それじゃあ、賭けをしましょう?」トコは悪戯っぽく微笑みました。
「私は彼女……オリが、エツお姉様を塔から降りさせられる方に賭けるわ。あなたは出来ない方に賭けるの」
イチはニヤリと笑いました。「へぇ。何を賭けるの?」
「トゥフィオカルメルッツィオを百メラー」
イチは大きな目を見開いて驚きました。「トゥフィオカルメルッツィオを百メラー⁉︎」
「乗ったわ」イチはそう言ってニヤニヤ。トコもどこか楽しそうです。
王様と秋の女王様ミンは呆れていました。オリはというと話についていけず、目をキョロキョロさせているのでした。




