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ーーこの国には、一人の王様と四人の女王様がいました。王様には国を治めるという大切なお仕事がありましたが、四人の女王様にはもっと重要な使命がありました。
町を見下ろす神聖な山の中腹に城が建ち、さらに登ると塔が建っています。ここに、四人の女王様は決められた期間、一人ずつ順番に住むことになっています。四人はそれぞれ生まれつき、季節の力を授かっていました。塔に住むとその力は増大し、国中にもたらされます。つまり、その塔に住んでいる女王様が変わることによって、この国の季節は変わるのです。
この国の冬が終わらない原因はまさに、その塔から冬の女王様エツが出てこないことが原因なのでした。
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太陽がちょうど真上に昇る頃、オリは森を抜け町にたどり着きました。町はいつもでしたら活気付き、騒々しいのですが、長く続く冬に皆疲弊し、元気がありません。
「オリ!」
そんな暗い雰囲気を吹き飛ばすような、明るい声が響きました。
「ヒコ。こんにちは」
オリに声をかけた少年はヒコと言いました。彼は町に住むオリの友達で、彼女が町に毛皮や雄鹿の角を売りにやって来ると、無償で彼女の商売を手伝ったりしていました。
「今日は何を売りにきたんだい?」
「今日は商売で来たんじゃないのよ。城へ行くの」
「へぇ。そりゃなんで?」
「王様が冬の女王様を交代させられる人を探してる、って教えてくれたでしょう。それに志願するのよ」
「へぇーなるほど。……って、エェ⁉︎」
ヒコは高い、変な声で驚きました。
「そりゃ無理さオリ! 今まで何人もの腕自慢、知恵自慢が挑戦したっていうのに、誰も冬の女王様を降りさせられなかったどころか、その半分だって塔に辿り着けもしなかったって言うんだ!」
オリは平気な顔で言いました。「そんなの、やってみなくっちゃわからないわ」
「そらあ、そうかも、しれないけれど……」オリに歩調を合わせ歩いていたヒコでしたが、彼はだんだん歩く速さを落とし、やがては立ち止まってしまいました。彼女はというと、それを気にせずズンズン歩き、城へとまっすぐ進みます。
ヒコはオリの背中を黙って見つめるしかありませんでした。




