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言葉尻な恋愛の話

作者: 背兎

これは『バットエンド』な物語だ。


 コオロギの鳴き声響く夜遅く。今日は外国の聖人様の誕生日だ。

 今頃俺の幼馴染が好きなヤツに告白していることだろう。どうなっているだろうか。明日は直接会ってその結果を教えてくれることになっていた。

 なんとなく気持ちが落ち着かず、俺はスマホを操作して『ダブルベット』で眠った。


 翌日、もう直ぐ待ち合わせの時間だ。

 俺は適当に服を選んで、どのカバンを持って行くかを悩んで結局『ハンドバック』した。

 そしてある物を忘れずに尻ポケットにしまう。


 時間通り待ち合わせ場所の公園に着くと、ゆったり目のジージャンを着てパツンパツンのジーパンをはいた幼馴染がベンチに座っていた。


「遅い!」

「時間通りのはずだけど……そんなに早く来てたのか?」

「別にいいじゃん、そんなこと!」


スマホの時計を再度確認するが待ち合わせまでまだ五分あった。


「それより手ぶらってどういうこと!」

「いらない気がしたんだよ。……まあ、お前がそんなジーパンを穿いてるって事は俺の直感は正しかったって事だな」


 幼馴染が小さくうなった。図星のようだ。


「そもそも、昨日いきなり倍にするなんてずるくない!!」


 俺と幼馴染は告白の成否で賭けをしていた。幼馴染は俺の動物擬人化フィギュアコレクションの一部を要求し、俺の方は幼馴染にある行為を要求していた。

 それは幼馴染のコンプレックスを刺激することなので、こいつとしてはたまったもんじゃないだろう。俺はむしろ良いと思うんだけど。


「先に掛金を上げたのはお前だろ。まさか山のクマさん一家だけじゃなく森のリスさん一家まで要求されるとは思わなかったぞ」

「結局持ってこなかったけどね」

「結局必要なかったからな」


 そう返してやると幼馴染は悔しそうな顔して黙り込んでしまった。


「とにかく場所移さないか」

「そうだね」


 俺たちは公園から程近い幼馴染の家に移動した。

 家に着くや俺はいつもの質問を口にする。


「何で断られたんだ?」

「太ってるのは嫌だって」


 幼馴染は今まで何度もこの理由で振られていた。だがそれはこいつの尻がでかいだけだと俺は知っている。そしてそれはこいつにとってコンプレックスなのだ。

 それを隠すために体型がわかりにくい服装を選び、かえって太っているという印象を相手に与えてしまっている。

 俺の質問で昨日の事を思い出したのか、足音を荒げ無言で自分の部屋へと向かう幼馴染。その背中を追って俺も部屋へと入った。


「じゃあ、そこに寝転がって」

「わかった」


 幼馴染の言葉に従い俺は床に仰向けになった。早速掛金を払ってくれるようだ。


「ほんとは二分だったのに、窒息しても知らないよ」


 そういうと幼馴染の尻が俺の顔に迫り、そしてそのまま乗っかった。

 あぁ……やはりこいつの尻は最高だ。程よい弾力で、そして重い。この尻に窒息させられるなら笑顔で死ねる気がする。


「……どう?」

「最高だ!」

「こんなのの何がいいんだか。はぁ、こんなのが無かったら恋人なんてすぐできるだろうに」


 幼馴染の声は沈んでいて、本当につらいのが伝わってくる。今日はそれを何とかしてやるつもりでもあった。

 俺は家を出る前に尻ポケットに突っ込んだ物を、顔に幼馴染の尻を乗っけたまま取り出し、幼馴染から見える位置に差し出した。


「何コレ?」

「『フューチャリング』」

「は?」

「俺の人生に一緒に出演してくれないか?」

「……――ばっ、馬鹿じゃない!? それ、告白のつもり!?」


 慌てふためく幼馴染、その尻が動き俺は自分の気持ちを再確認した。


「なら、もう少しわかりやすく言おう。尻に敷くことを前提に俺と付き合ってくれ」

「――え、えっと……」


 幼馴染は顔を赤くしてまた黙り込んでしまった。今日はよく黙り込む……まあ、全部俺のせいなんだけど。

 沈黙が続く部屋で、時計の秒針の音だけが響いていた。ふとそれを数えだして300回。やっぱり駄目なんだろうかとあきらめかけたそのとき、幼馴染が口を開いた。


「……わ、わかった。よろしく……」

「本当、か!? ――やった! マジか! ああ、思い切ってよかった!!」

「そ、そんなに喜ばなくても……」

「嬉しいんだからしょうがないだろ」


 正直まだ叫び足りなかったが、迷惑そうな様子の幼馴染に俺は何と自分を抑え込んだ。

 そして、俺はさっき差し出したネックレスとしてつけられる指輪を幼馴染に渡した。


「それじゃあこれ。首につけて、大事にしろよ。なんたって俺がお前を予約したって証なんだからな」

「予約の証?」


意味がわからないと言う様子の幼馴染改め恋人に、顔をきりっとさせて言ってやった。


「そう。いつか使う未来の指輪なんだ」


くすぐったかったのか幼馴染の尻が動いた。

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