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アクト・オブ・ヒーロイズム  作者: こま
異世界から来た少女
8/40

戦闘後にねむってしまうのはお約束なの?

戦闘後にねむってしまうのはお約束なの?




 アクタが目を覚ますと目前には天井の木目が広がっていた。

 どうやら自分はベッドの上で寝ているようだ。とりあえず現状を確認しようと上体を起こす。

 

 「んー」


 やけに体が重い。肩もこっている。というより、全身カチコチに固まっている気がする。外から差し込む日差しがやけに目に染みた。汗ばんでいて体が気持ち悪い。ときおり窓からふわりと入る風が心地いい。


 「今、何時だ。ここ、どこだ」


 凝り固まった体を解そうとグっと両腕を上伸ばす、と同時に右肩に痛みが走った。


 「いってててててて。なんだ、包帯? 俺怪我なんていつしたっけ?」


 顔も頭もぼーっとしている。まるで何日間も眠っていたかのようだ。そうこう回らない頭でぼんやりとしていると、扉から誰かが入ってきた。


 「アクタ! 起きた? 体大丈夫??」

 「おー、ヨカおはよう」


 アクタは心配そうにのぞき込んでくるヨカをボケっとした顔で眺める。まだ半分頭が眠っているようだ。


 「もう! アクタほんと寝起き悪い!! しっかりお・き・てー!!」 


 ヨカにむにーっと両頬を引っ張られる。だんだんと強くなってくる両頬の痛みに慌てて涙目まじりに答えた。


 「いてててててて!! 起きた!! 起きたからヨカ! 手! 離してくれー!!!」


 ヨカは手を離すとかぶっていたフードをとりベッドにぽふんっと腰かけた。


 「肩大丈夫? 医者言ってた。包帯取り換える。薬ぬる。3~4週間ですぐ直るって」

 「そうだ! バルトさん達は!? 盗賊は!? 魔術師のあいつらは!? 市場はどうなった!??」

 

 今頃になって覚醒し一気に質問してくるアクタにヨカは呆れを含んだため息を吐く。じとっとした目でアクタを見つめて言った。


 「1つずつ質問! そしたら私答える! いい?」

 「ハイ。 お願いします。 えーっととりあえず今日は俺が寝てから何日目だ?」

 「今日で5日目! アクタぐ~~~っすり寝てた」


 ヨカは再びジトーっとした目でアクタを見やる。


 「い゛っ5日も……!? どうりで体が硬いわけだ。 バルトさん達はあれからどうしたんだ?」

 「あれからバルトさんと一緒に盗賊縛る。車輪壊れた荷馬車、ユンから人呼んで助けてもらった。盗賊、えーと駐屯警備に引き渡す言ってた。誰かが町まで連行する。無事市場開いた。それでバルトさん今日、朝、帰った。ムーハに」

 「なにぃ!? ってことは今回の市場終わっちまったのか!!」

 「うん。市場歩いた。楽しかった。」

 「ヨカ市場に行ったのか! 1人でか!?」


 ヨカが1人で人込みの多い場所に行くことが想像できない! というような心情が顔にもろにでていたためか、ヨカはくすくすと笑う。念願のヨカの笑みが見られたアクタは呆気にとられヨカの顔をまじまじと見つめる。


 「1日目バルトさん達とご飯行った。2日目と3日目は1人。昨日市場終わった。」


 ヨカの顔から笑顔が消えた。さらに市場での食べ歩きや散策、食事を楽しみにしていたアクタは市場終了のお知らせを受けがっくりと肩をおとす。


 あと1日起きるのが早ければ食べれていたのに!! クソう!!


 そんなアクタの様子を気にも留めずヨカはバルトさん達の話を続ける。


 「バルトさん、報酬、預かった。アクタに。 バルトさん私にも報酬くれた」


 ヨカは立ち上がりヨカのカバンをとり中からアクタの分の報酬を取り出した。


 「ハイ! これ、アクタの分!」


 両手に感じるずっしりとした重みの袋に期待が高まる。真っ先に袋の紐を解いた。


 「ひぃ、ふぅ、みぃ……。ひぃ、ふぅ、みぃ、……。そんなまさか!」


 何度も中身を確認し硬貨を数え直すアクタにヨカは首を掲げる。


 「どうした? 足りない?」

 「足りないどころか!! こんな大金もらえるだなんて!! いや! 今回の依頼は危険なものだったからこれが妥当か!!? 今までけちけち商人ばっかり相手に仕事していたから俺の金銭感覚がおかしくなっているんだ……!」

 「何ぶつぶついってる」


 ヨカには言葉の意味をすべては理解できず、ぶつぶつとつぶやいているアクタは不可解であった。


 「1金60銀80銅も入ってやがる!! よぉっしゃ―!!」


 金額をつぶやき嬉しさをかみしめる。今度はベッドの上に立ち上がりガッツポーズを決めた。金貨を手にしたのは、配達の仕事をしていた時にコツコツお金をためていた時以来だった。連日の寝不足との戦い、盗賊団との戦い、頑張ったかいがあった! 


 「アクタ、落ち着いて。バルトさんから伝言預かった。聞いて」

 「おう! なんだ」


 嬉しさがおさえきれずににこにことしたままベッドに座り直した。


 「アクタ君、えーっと、ありがとう! 報酬は町のみんなから。お金集めた。アクタ起きないから、先に帰る。仕事ある。ごめんね。またムーハに寄ると御馳走する!……こんな感じのこと言ってた」


 ちゃんと意味が伝わったか不安そうな顔のヨカを安心させるようにうなずく。


 「あぁ! 伝わったぞ! 別れの挨拶ができなかったのは残念だが、またいつか会えるだろう」


 同調するようにヨカもうなずいた。


 「それとアクタ、大事な話ある。私から。聞いてほしい」


 ヨカの雰囲気が変わる。ただならぬ空気を察してこちらも背筋を整えた。すると自分の腹部からなんとも間抜けな大きな音が響く。

 ぐぅ~~~~~~~。

 アクタの腹の虫がなったのだった。


 「(やっべ。空気読め!! 俺の腹!!)」


 焦りわたわたするも、正直おなかがかなり減っている。腹の虫の声を聞いたらさらに空腹感が強まってしまった。食事をとりたいというのが本音だ。

ヨカはきょとんとしていたが先ほどの音がお腹の空腹の音だとわかると軽く口元に笑を浮かべた。


 「5日ぶり起きた。気なくてごめん。ご飯行こう! ユンの特製彩り丼! 食べたい?」

 「おう! 行くか!」


 なんだか今日はヨカのいろんな表情を見ることができた。腹は減っているが胸は満たされた気分で食事に出かけた。



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