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銀白は儚くも夢現

誘うは流るる燈なり

白き言霊を携えて

重きは時間の黎明

刻む時を停滞し

月を纏し微睡み散りゆく様

定義とともに在れ


✳︎ ✳︎ ✳︎

__鈴の音が鳴り響く


嗚呼、なんと滑稽なのだろう



満月が地を照らしている。

侍女に連れて来られて目の前にあるじ様。視線が気持ち悪い。


「逃げた分はきっちり償ってもらうぞ」


「…はい」


逃げられないのだから、と自らに言い聞かせる。元よりあんな幸せは私にはもったいない__


人工の灯りは一切なく月明かりだけが地を人を物を照らしている。整えられた場に足を進めれば一身に受ける視線。前を見据えればそれなりに高いであろう貴族が並びその後ろには民衆が私を見ていた。

貴族にはあるじ様の権力を誇示するために。

民衆には月に実りある作物を育ててもらうために。

世界には生気チカラを満たすために。


___私は舞う。



月に儚し微睡む

世界を律する空の夢

聖する君を箔して

所縁ける場の深き血よ

花を育て地を育み

揺れ動く風が波打つ

行けば遠く還る魂白銀に

命ずるものこそ滅びゆく

死せるは清き尊なりて

生きゆく様は満ち足る

___月よ、顕現せよ



身体に魔力が満ち循環していくのが手に取るようにわかる。

ひとつの動き、ひとつの辞

揺れることなく考えることなくそれをするのが私が“わたし”足り得る存在だから。


世界に

微睡む

全てのいきものに

月の加護を


どれだけ舞ったのだろうか、呼吸をするように落ちる譜に動く肢体に感覚はない。私の身体は世界に通ずる器、個を優しては全を劣らす。

ただ、それでも一つだけ私の願いが叶うとしたら。

___キト、会いたい


「ルナッ!!」


あの、短期間で聞き慣れた低く優しげな声。幻聴かと少し頭を振るけれどもう一度大きな声で呼ばれて、民衆も暫く狼狽える。貴族なんかは唖然として彼を見ている。

その揺れ動く隙間を縫って彼は前へ、私のいる場所へ飛び乗った__


「キト……」


驚きと怒りと嬉しさが入り交じる。なんと言っていいのかわからない。

キトは私を真っ直ぐに見据えるから後ろめたくて少し目を逸らすとあるじ様が笑いながら歩いてくる。


「__ほう、愚か者が。魔女に魅入られたか」


「っ……!」


駄目、キトをここから出さないとっ!彼を外に出そうと構成を編み始めた私を制して傍に立つキト。


「茶番は終わりだ、叔父上」


「ふっ、最近見かけないと思ったら盗賊などに身を落としていたか」


嘲るように彼を見るあるじ様。

2人は知りあいだったのか、と見当違いの考えしか纏まらない。舞いのおかげでかなり消耗してしまっているから正直立つのが精一杯、というところまでできている。

それでも、ここで倒れる訳にはいかないと必死に立つ。

彼は私を庇い支えながらまっすぐあるじ様に向かって言い放った。


「王弟、フェルナンド。貴殿は国税を横領したのち他国と癒着していたことが発覚したため、この場を持ってセリフィト大国第一皇子キトラス・アルディル・セリフィトの名において連行させていただく。

___捕らえろ」


「なっ!!!」


その言葉と同時にあるじ様の近くにいた衛兵があるじ様の腕をつかむ。捕らえられたあるじ様は顔を真っ赤にしながら喚き散らす。その中に私の名を呼ぶ声が聞こえた。助けろ屑が。と罵られて私の中にあった何かの線が切れた。

ゆっくりとあるじ様に向かって手を翳す


「__命ずる。汝の身体を固定し我が赦し許可するまで自ら動かさずことを」


「ひっ!!………っ」


あるじ様は驚きで目を見開いてそのまま恐怖した顔で固まった。

呼吸はしている。でも声は出ない。生命維持に必要のない機能を全て硬直させる。


「……、連れて行け」


彼は冷淡な声で命じた。

でも私に添えられた手は温かく優しかった。

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