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ずっと、このままじゃいられないことはわかっていた。
だけど、この温かな笑みを失いたくなかった__
✳︎ ✳︎ ✳︎
その時は突然に、衝撃的にやってきた。
__バァンッ!!
近くでつんざくような音が聞こえて何事かと家にいた人と外に出た。
その瞬間目を、覆いたくなった
「き、と……っキト!!」
青い芝生に倒れるキト。
そしてどんどん、どんどんと真っ赤に染まって行くそれ。
ノタもみんなも慌ててキトに駆け寄る。血を止めようとしてるけど意味をなさずにいる。
「医者はっ!」
「診療所まで連れてけない!それにあの爺さんは今日は遠方に出かける日だ!」
「くそっ!キトッ!キトッ!」
ひゅう、ひゅうとキトが弱々しく呼吸を繰り返す。
それが、みていられなくて……
「っ!どいてっ!」
キトの周りにいるみんなをどかして赤く染まってしまった芝生に膝を着く。じわりと生温い感触が伝わって、泣きたくなる。
「キト、もう大丈夫だからね」
そう笑ってやれば、キトは驚いた顔をして一気に歪ませる。目の前で私とキトを見たノタがハッとして、わたしに触れようとした、けど。
「___汝、銀なり。儚くは散るよりさえも月の如き綾浮く。夜が沈むとも朝が照らしてもそれを隠すことなど出来ぬ。
我は、血。我は、天。我は、月。
時を刻むことを遅らせ、身を繋ぎ、事変を亡くし、改める。」
キトを中心に大きなギンの陣を形成して、一気に方をつける。
銀に光るそれは、私の指で舞う。
「月を隠せ霜の、愚かなる夢ばかりよ。我、月のもとに舞いて散る。
__印」
糸を紡ぐようにキトの体に触れてゆく。傷口を、見えなくするように。
だんだん陣が小さく小さくなってキトのあいた腹の上でくるくると回り腹に陣を焼き付ける。
「っくぅ、ぁ」
肉が、皮が、繋がって行く感覚は初めてはとてもじゃないけど辛い。
痛みを伴うわけじゃないけれどやはり辛いものがある。痛覚は感じなくとも気持ち悪いと思う。
「る、……な、」
かは、と空気と音が一緒に外に出て少し苦しげに私の名を呼ぶ。
血に濡れてしまった手を握ってなに、と問いかけると体を起こしたキトに睨まれる。
「……お前は馬鹿かっ!」
「ごめん、でも……っ!」
握っていた手を引かれて、気づければキトの腕の中。
きつい位に抱きしめられて身じろぐ。けれど中々抜け出しはできない。
「ふざけるなよ……、お前、なんで魔法使ったんだ。そんなことしたらっ」
キトの怒りが触れている所から伝わってくる。
あぁ、この人はこんなにも怒ってくれる__
申し訳なく思うけど、でもねキト。
私は、貴方に
「ごめんね、離してくれる?」
ゆっくりと離れる体。キトの顔を見上げれば少し充血していて眉間にシワが寄っている。
暫く見つめてから立ち上がって周りにいるノタたちを見るとみんな泣きそうな顔で、ノタなんか涙が溢れている。
「ごめんね、みんな。今までありがとう」
「おいっ、待て「__白銀の魔法使いがいたぞ!。」
後ろから不躾な呼び名で指をさされて此方に向かってくる者の足音が聞こえる。
くるり、と振り返り彼らとキト達に背を向けて走り出す。
「名を、呼ばせないで」
キト達の周りを風で囲って追ってが何も見えないように静かに簡易詠唱で済ませる。
その後はただ走った。
いずれは捕まる。
それでも少しでもあの場所から遠い場所に__
「キト、ごめん……」
走りながらも頭に浮かぶのは彼らの、キトの顔だった。




