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心地よい、この居場所を
失くしたくはないの。
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昼下がり、暖かい日差しが優しく照らして。
今日は洗濯物がよく乾きそうだ、と頬が緩む。さわさわと風が吹けばさく、と芝生を踏む音が聞こえた。
「ルナ。」
「お帰りなさい、キト。」
名を呼ばれ振り向くとあの日と同じ真っ黒な姿で此方に歩いてくる彼、キトに向かって笑う。
「ルナ、キトのご飯お願いっ」
一緒に洗濯をしていたノタが私の持っていた洗濯カゴをヒョイっと取って柔らかなピンクの髪を揺らして洗濯場へ歩いていく。
「もう……」
「ルナ」
暫くノタの方をみているとキトに声をかけられる。あぁ、そうだ。ご飯だ。
くるりとキトに向き直るとキトは少し安心したようなでも強張った顔で、少し傍を離れたあと必ずこう聞く。
「何も、無かったか?」
「うん、無かったよ。」
そして必ずこう応える。実際何もないからなんだけれど。
そうか、と笑う彼に笑い返して家の中に一緒に入る。
あれから、2週間がたった。
盗品、として扱われるのかと思ったのに翌日あっさりと否定されてしまった為に仲間として受け入れられていたんだと改めて認識した。一緒に洗濯をしたりご飯を作ったりして少しずつ慣れていった。
1番歳の近いノタとは兄妹のように、短期間でよく来れだけ馴染んだなぁと自分でもしみじみと思う。
そして私がいた屋敷のあるじ様は私がいないことに気付いて、大規模な捜索を始めたらしい。
知らなかったけれどあるじ様はこの国の王弟だったらしい。そのせいか、国家をほぼ総動員して私を探している。
情報集めから戻ったキトの仲間からそう聞いた時は震えが止まらなかった。
でも、幸いこの地区はまだ王の支配が弱く捜索隊は来ていない。
でももし、その時が来たら私は___
「ルナ。余計なことを考えるな」
はっと我に返って、キトを見上げる。優しく穏やかだけど決意を秘めた瞳で私に笑みを向ける。
「大丈夫だ。」
「うん、そうだね」
「そうだよっ!ルナ、僕たちがいるからっ!」
夕食時にぼんやりと考えこむなんて。それでもひとりひとりの顔が驚くほど真剣で、嬉しかった。
「ありがとう、みんな」
大丈夫。
もし、その時が来ても私がここを護る。
道具としてじゃなく。
人形としてじゃなく。
盗品としてじゃなく。
私を、ルナとして認めてくれるこの人たちに絶対に手出しはさせない。




