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「では、改めてっ!よろしくっ!ルナちゃん」
優しげな笑みと暖かい掌がそっと私を包みこむ。
無垢な優しさに触れたのは、初めてだろうか__。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「重かった……」
トン、と降ろしてかれた彼の声に多少の疲れは見えてもそこまでへばっているとは思えなかった。
ここまで、連れてきてもらった身で言うことじゃないけど。
「ご、ごめんなさい……」
でも、それでも申し訳なくて縮こまると彼はなにも言わずに頭を叩いてきた。
「なっ!「お前は盗品だ。」
はっきりとした物言いに、声をあげそうになった。けれど、それは彼が正論でどこまで行っても根本は変えられない。
黙りこくった私の腕をとって、彼は真っ直ぐ歩き出した。
数分歩いた場所に、小屋と呼ぶには大きくて不釣り合いな家のような建物があった。
真っ直ぐ向かって行くところを見るとそれが彼の住処なのだろうと察した。
一言で表すなら普通の家。
建っている場所が少しだけ変だけど。外見は泥棒が住んでいるとは思えなかった。
彼は躊躇うことなくドアノブに手をかけ押した。
「あ、おっかえりー!収穫どうよ?」
扉を開け彼が中にはいったのに続いたけれど人の声がして背中に隠れる。
「ん、これだ。」
けれど、すぐにひっつかまれて前に押し出されてしまった。
息を飲むのがわかって恐る恐る顔を上げて見ると部屋には6、7人の男の人が此方を食い入るように見ている。
「……誘拐じゃ「違うから。歴とした収穫だ。」
ぶるりと震える身体に力を入れると肩に手を置かれた。
そして、深く被っていたフードを取られる。
ぱさりと零れ落ちた髪。
露わになる首。
この二つで私は、〝わたし〟と成り得る__。
「銀髪に、首の魔力痕……魔法使いか。てことは、あの糞狸のとこのか。」
「あぁ、大手柄だろ。」
その言葉に張り詰めていた空気は一瞬で溶け周りには人が集まってきた。
「そかそかー!どんな子かと思ってたらこんな可愛い子だったなんてっ!」
「よくあの糞狸から逃げおおせたなっ!」
「それはそうと、ちっせーなー。夕飯温め直すか」
「暫くは僕らといっしょにいるんでしょ?なら仲良くしよーね!」
頭を何人にも撫でられて歓迎の意思を示してくれる。
私は、盗品なのに。
私は、あの下卑た人の所にいたのに。
私は、魔法使いなのに___
深いふかい、意識に囚われそうになった時、隣のあの人にコツンと額を小突かれて見上げば絡み合う視線。
「とって食いはしないんだ。何考えてるかしらねーけど、笑ってやれ。」
そう言うと彼はヒラヒラと手を振って何処かへ消えしまった。
確かに、と納得してしまったのでぺこりと頭をさげる。
「…ありがとう__」
顔を上げて少しだけ頬を緩める。作った笑みなんかじゃない、心からの感謝の意を笑顔で示そう__
「では、改めてっ!よろしくっ!ルナちゃん 」
差し出された手にゆっくりと己のそれを重ねて。




